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第990回:部屋の照明でデータのやり取りができる? 次世代通信技術「Li-Fi」とは

光を使いWi-Fiのように手軽に通信を……「Li-Fi」

 “Li-Fi”とは、LEDの照明などを活用する光無線通信技術のひとつです。“LiFi”と表記されることもあり、読みは「ライファイ」です。

pureLiFiのWebサイトより

 光無線通信自体は、たとえばその一種である可視光通信(VLC)などが以前から研究・製品化が行われてきました。Li-Fiは、可視光と赤外線を使った光無線通信の一種です。

 Li-Fiの原理は、電波の無線通信とそれほど変わりません。電波の無線通信では、電波を変調させながら発信させることでデジタルデータを符号化して送信しますが、Li-Fiでも、電波と同じようにLEDを変調させながら光らせます。受信側は、送信されたこの光を検出器によって光強度の変化をデータとして受信するわけです。

 Wi-Fiとよく似た名前の“Li-Fi”ですが、公式には“Light Fidelity”からの略語であるとされています。その名前の由来の通りLight、つまり「照明」を使う光無線通信です。それでいて使い勝手はWi-Fiのように手軽に、という意味も名称には込められているそうです。

Li-Fiの特長

 Li-Fiは、これまでの無線通信のように電波を必要としません。すでに照明として利用しているライトを活用するため、帯域の問題や無線装置の電力などエネルギー問題も抑制できるといったメリットがあります。

 また、無線周波数よりも多くの情報をやりとりできる帯域を持つほか、通信エリアが光が照らされている範囲に限られ、盗聴される危険性が低いというのも特長です。これにより、位置情報サービスの精度の向上が見込めるほか、電波を使用しないためほかの機器と電波干渉を起こす危険性がありません。

 一方でWi-Fiのように、さまざまな場所に到達することは難しいとも言えます。Wi-FiをLi-Fiで置き換えるということは現実的ではないでしょう。そのため、将来的にはWi-FiとLi-Fiを適材適所で使い分けるかたちが考えられます。

現行のスマートフォンに対応機種はないが……

 Li-Fiは、現行のスマートフォンには採用機種はありません。

 しかし、エディンバラ大学教授であるハラルド・ハース氏が立ち上げた企業「pureLiFi」が、スマートフォンをはじめとした小型デバイス向けのライトアンテナモジュールを発売するなど、モジュール単位では対応品がないわけではありません。また、パソコン用にはUSB接続式の受光器ドングルなども存在します。

 いつの日か、よりリッチな通信が必要になったとき、たとえば、AI、VR/AR、エッジコンピューティングといった分野の端末としてスマートフォンが使われるようになったときにその姿をみせてくれるかもしれません。

大和 哲

1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)