ケータイ用語の基礎知識

第964回:RTK-GNSSとは

 RTK-GNSSのRTKとは「リアルタイム動的」を意味する英語“Real Time Kinematic”の略です。また、GNSSとは「汎地球測位航法衛星システム」のことで、GPSなど、衛星を用いた測位システムの総称です。

 つまり、RTK-GNSSとは、GPSなど衛星を用いた測位と、地上に設置した「基準局」からの位置情報データを組み合わせることによて、高い精度の測位を実現する技術のことです。

 通常、GPS(GNSS)のみの場合、位置情報データは2m前後の誤差となりますが、このRTKを組み合わせることで、数cm内の誤差に抑えることが可能になります。そのため、これまでGPS(GNSS)のみでは難しいとされていた、さまざまな産業分野での利用が期待されています。

 2020年8月現在、この分野では、ソフトバンクの子会社で位置補正情報の生成・配信事業を行うALESが個人客向けに、誤差数センチメートルの測位をするための補正情報をリアルタイムで配信する「センチメートル級測位サービス」の提供を行っています。

 このサービスのユースケースとしては、農業用トラクターをはじめとする農業機械の自動運転や運転アシスト、農薬散布のためのドローンの自動航行などで活用されることが想定されています。

 また、ドコモも、法人向けではありますが、測位衛星の情報と地上の固定局の補正情報を組み合わせ、誤差数cmという高精度で測位できる技術を実用化し、「GNSS位置補正情報配信基盤」として、誤差が数cmの位置情報を提供できるサービスを提供しています。

基準局があってこそ正確に計測できる「RTK」

 センチメートル級での測位を行うには、数kmの圏内に地上の「基準局」が存在している必要があります。

 ソフトバンクの場合、国土地理院の電子基準点約1300カ所に加え、ソフトバンクの独自の基準点が全国3300箇所以上、全国のLTEエリアで提供されています。考えてみれば携帯電話の基地局がそこかしこに点在している携帯電話事業者なのですから、この基準局を用意するのは他の業者に比べれば格段に有利であることがわかるでしょう。

 たとえば、ソフトバンクの提供するRTK-GNSS対応の端末は、GNSSからの電波受信、LTE通信の両方に対応しており、これで基準局からの位置を測位することができるのです。

 それから、ソフトバンクでは、RTKの計算をその位置にいるデバイス側で演算するのではなく、クラウド上で行い結果のみデバイスに伝える新方式も開発を進めるとしています。これは、今後、省電力・小型化が求められるインフラ監視用センサーやウェアラブルデバイスなどでも、誤差数センチメートルの位置情報を活用できるようにするためのものなのだそうです。

大和 哲

1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)