ケータイ用語の基礎知識

第925回:Apple Business Chatとは

 「Apple Business Chat」は、Apple(アップル)が提供するサービスのひとつです。iOS 11.3以降に標準機能として組み込まれています。

 この機能を使うと、iPhone・iPadを使って企業のサポートセンターや店舗に問い合わせをしたり、予約を取ったりといったことを、テキストでのチャットで行えます。

 Business Chatを導入した企業・店舗は、Webブラウザ「Safari」や地図アプリ「Apple Maps」、検索機能「Spotlight」、音声アシスタント「Siri」などの検索結果に企業・店舗名とともにメッセージアイコンが表示されます。ユーザーは、このアイコンをタップすることで、メッセージを送ることが可能になります。

 メッセージのやりとりを始められるのは、ユーザー側からだけで、企業側から行うことはできませんので、宣伝目的などで使うことはできません。また、チャットが始まっても、ユーザーが明示的に明かさない限り、企業はユーザーの名前や電話番号などの個人情報をこのチャットのシステムから知ることはできません。

 何らかの連絡方法を伝えておかない限り一連のチャットが終了すると、ユーザーがまたチャットを開始するまで、企業側からユーザーに連絡する手段はありません。ユーザーのプライバシーに配慮された仕組みだと言えるでしょう。

 ただし、Appleとチャットする場合はユーザーのAppleIDに関連付けられた「ビジネスチャットID」が使用され、ユーザーとアップルとの交信を支援する目的で使用される場合があるとされています。

 セキュリティの面でも、Apple Business ChatではiPhoneとサーバー間、またサーバーから企業間でデータが暗号化されており、情報漏洩に対して、一定の堅牢さを保っています。

 また、Apple Business Chatではチャット中に支払いが必要になった場合は「Apple Pay」で、支払うことも可能です。

 さらに言えば、ほかの多くのメッセージングアプリと違って、Apple Business ChatはOSの機能の一部ですから、わざわざアプリをインストールする必要もなく、iPhoneやiPadユーザーであれば誰でも使えるというのも利点のひとつです。

日本ではauがサポートに採用

 WWDC 2017で発表されながら未だベータ版という扱いのこの機能ですが、商用として既にいくつかの企業で使われています。たとえば日本でも、携帯電話のau(KDDI・沖縄セルラー)が、2018年からiPhone・iPad向けWebサイトで使用しています。

 具体的には、(2019年10月現在)iPhoneでauのWebサイトを開いたときに表示される「メッセージで質問」で使用されており、このタブをタップするとApple Business Chatが使用されます。

iPhoneでauのWebサイトを開くと「メッセージで質問」というタグが表示されます。これをタップするとApple Business Chatでサポートに質問できます。Apple Business Chatを使ったユーザーのテキストは、背景が灰色で表示されます
Apple Business Chatの画面は、「メッセージApp」画面でSMS、iMessageと同じですが、Apple Business Chatを使用しているときは、ユーザーのトークの背景が灰色に変わるため、iMessageやSMSを使用しているときと区別できます(ちなみにiMessageでは青、SMS、MMSでは緑になる)

 携帯電話会社のサポート電話というと「順番が来るまで待たされることが多い」という印象がありますが、メッセージでのサポートはその解決手段にもなります。

 実際に使用してみると、電話でのサポートと同様、回答が返ってくるまで待たされるのですが、電話をかけて保留状態で待たされるよりも、メッセージで質問を入れておき、いつのまにか回答が返ってきているチャットでのサポートの方が、待っている間に他のことができる分、気分的にかなり楽になります。

 なお、Apple Business Chatは、日本以外では、米国、オーストラリア、カナダ、フランス、ドイツ、香港、イタリア、シンガポール、スイス、イギリスなどで利用が始まっており、いくつかのホテルや銀行、クレジットカードの発行元などが対応しています。

大和 哲

1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)