ケータイ用語の基礎知識

第873回:bokeh とは

日本語の「ボケ表現」から世界の"bokeh"に

 今回紹介する「bokeh」とは、写真において構図の中心になる被写体にピントが合いつつ、それ以外は焦点が合わずにぼんやりした状態を表現するワードです。写真・映像用語として英語圏を中心に世界各国で、使われています。「ボケ」と発音します。

 ここで重要なのは、bokehは、構図としてメインの部分はクッキリと描かれているのに対して、メインの部分とは違う意図を持たせる部分をぼかしているということです。中国語では「背景虚化」と表現するそうですが、確かにこれなら意味が通じそうです。

 ポートレートなど、表現したい人物にピントが合い、それ以外の部分はぼやけているのはbokehになります。

 ただ単に絵全体の焦点がずれている、いわゆる「ピンボケ」(英語ではOut of focus)や、レンズの球面収差(ピントは合っているが、その後に起きるにじみ)によっておきる「ソフトフォーカス」(Soft focus)は、bokehとは言われません。

 以前から、日本語の写真用語などで「ボケ表現」「ボケ効果」という用語がありました。被写体に注目させたい、また、写真に柔らかい効果を与えたいといったときに使われていましたが、それが同じ意味で英語になり、そして世界のさまざまな国で取り入れられたようです。

bokehの仕組み

 一般的にカメラの内部には、イメージセンサーとレンズ、そして絞りの各ユニットがあります。絞りとレンズを調整し、センサーと被写体の間とのピントを合わせて撮影します。

 このとき絞りの大きさによって、ピントを合わせた部分の前後のピントが変化します。これを「被写界深度」と言います。

 被写界深度を浅くする、つまり絞り値を小さくすると、焦点は一点に集中します。つまりそれ以外の部分はぼやけます。これはシャローフォーカスとも呼ばれる状態です。これによってピントの合う部分とボケのある部分のある絵が作れるのです。

デュアルセンサーで深度情報を取得、AIでボケを加工

 日本から発信されたボケは、グローバルでもカメラ関連のワード「bokeh」として用いられてきました。そして、カメラ機能が主役の1つであるスマートフォンでも、内蔵カメラのエフェクトとして取り入れられ、使われるようになっているのです。

 たとえば、2018年9月に発表されたiPhone XS/XS Maxのカメラでは「ポートレートモード」として、bokeh効果と深度コントロールが使用できるようになりました。つまり撮影する写真の被写界深度を、擬似的に変えることができます。

 スマートフォンのカメラでは、ボケ実現のための方法は、純粋に光学的な手法を使うとは限りません。

 たとえば、あるスマートフォンではカメラユニットをデュアルで搭載し、1台のユニットでカラー画像を撮影、1台の画像で深度を測定し、測定した深度に合わせて適切なボケをかけるという方法でbokehを実現しています。そのため撮影時に、あるいは撮影後からでもぼかしの度合いを調整できます。

 デジタル撮像技術、イメージセンサーの廉価化と高級化、そしてAIの普及と高度化によって、スマートフォンのイメージ技術もどんどん進化してきているのです。

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大和 哲

1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)