ケータイ用語の基礎知識

第862回:Project Trebleとは

 2017年5月、米グーグルは、端末メーカーが、Androidのアップデートを迅速かつ簡単にできる仕組みを用意しました。それが今回紹介する「Project Treble(プロジェクト・トレブル)」です。

 Android端末には、いわゆる「フラグメンテーション(断片化)」と呼ばれる問題があります。世に出回るAndroid端末において、そのバージョンがバラバラになってしまうことを指した言葉です。

 これは、Androidを搭載するスマートフォンやタブレットでは、バージョンアップする端末数が限られてしまうこと、バージョンアップが提供されるとしても端末の発売時期から時間がかかってしまうことが背景にあります。Androidの最新バージョンは2018年6月時点で「8.1」
ですが、現在稼働しているAndroid端末のバージョンが皆全て最新版になっているかと言えば、そうではありません。Android 7.0のものもあれば、Android 5.0、あるいは4.4が使われているといったケースもあります。

 一方、iOS端末(iPhone、iPad)では、最新バージョンが登場すると、1カ月~3カ月ほどで、過半数が最新バージョンになるとされています。

 フラグメンテーションの問題は、たとえばアプリ制作者にとっては大きなコストアップに繋がります。特にテストする工程で、多くの機種を揃えて試す必要が出てきます。

 この問題を解決するのが「Project Treble」です。Project Trebleは、Androidの再設計の成果であると言えるでしょう。Project Trebleは、Android 8.0以降に含まれており、今後のバージョンアップに活用できるようになっています。

メーカーごとの実装を切り離す

 メーカーがAndroid端末を開発する際には、たとえばチップセット(CPU)や、Wi-Fiのチップセットなどに対応するパッチやドライバーソフトが必要です。それらを適用した上で、各端末メーカーは、ハードウェアにあわせてAndroidを修正します。

 これまでは、最新版のAndroidが公開されれば、チップセットメーカーから、カスタマイズされた「Board Support Package(BSP)」というコードが提供されていました。端末メーカーは、BSPをもとに自社製品のスペックや設計に合わせてさらに手を加えます。場合によっては携帯電話事業者からのニーズも反映させます。

 Project Trebleの基本的な設計は、簡単に言うと「メーカーごとの実装部分」と「OSシステム部分」の切り離しにあります。つまりAndroidからフレームワークを切り離すことで、端末メーカーがアップデートしやすくしているわけです。

 Project Treble以降、グーグルは、クアルコムやMediaTek、サムスンエレクトロニクスといったチップセットメーカーと、BSPを共同開発し、ソニーやシャープ、ファーウェイなどのメーカーへ最新版のAndroidを提供、ユーザーへバージョンアップを促したいとしています。

大和 哲

1968年生まれ東京都出身。88年8月、Oh!X(日本ソフトバンク)にて「我ら電脳遊戯民」を執筆。以来、パソコン誌にて初歩のプログラミング、HTML、CGI、インターネットプロトコルなどの解説記事、インターネット関連のQ&A、ゲーム分析記事などを書く。兼業テクニカルライター。ホームページはこちら
(イラスト : 高橋哲史)