石川温の「スマホ業界 Watch」

サムスンが「Galaxy Unpacked」を1月23日開催、AIスマホの今後が問われる2025年

 2025年1月7日、サムスン電子はラスベガスで開催されているCESでのプレスカンファレンスにおいて、1月23日にサンノゼで「Galaxy Unpacked」を開催すると発表した。昨年同様、CESから2週間後にフラグシップモデルをアメリカで披露することとなる。

 製品名はおそらく「Galaxy S25シリーズ」になりそうだが、やはり注目は「Galaxy AI」がどれくらい進化するかに尽きるだろう。昨年のスマホ業界はクアルコム「Snapdragon 8 Gen3」やアップル「A18 Pro」など、チップでAIを処理する「オンデバイスAI」が注目されていた。Galaxy AIもクラウドとSnapdragon 8 Gen3を併用したAIであったが、音声通話における通訳機能、文書の要約など、AIを活用できるシーンは限定的であった。また、アップルの「Apple Intelligence」も、日本語対応が2025年からということで、日本市場では盛り上がりに欠けてしまっていた。メディアとしては「AIスマホの到来」を期待していたが、オンデバイスAIによって「ユーザーの利便性が劇的に快適になるか」といえば、かなり微妙な感じでしかなかった。

Apple Intelligenceは今年、日本語対応予定

 画像のなかで人物や不用な被写体を消せる「消しゴムマジック」は確かに便利だが、頻繁に活用するかと言えば、決してそんなことはないだろう。最初の頃は面白がって、いろいろと消しゴムしてみるが、そのうち、飽きてしまうという人が大半ではないだろうか。

 iPhoneを英語表示にしてApple Intelligenceを試したりもしたが、画像を組み合わせて新しい画像を作れる「Image Playground」も最初は「すごい」と思って使ってみるが、継続的に使い続けると言えば、正直、首をかしげたくもなってしまうのだ。

 グーグル、アップル、サムスン電子、さらに他のAndroidメーカーもこぞってAIで新しい機能を盛り込もうとしているが、やはり、どのメーカーも「手探り」な感は否めず、まだまだユーザーのニーズに合致したAI機能を提供できていないような気がしている。各スマホメーカーによる「AIスマホ」における戦いは始まったばかりであり、どのメーカーにも勝てるチャンスはまだ転がっているのは間違いない。

 そんななか、ひとつ「AIスマホでユーザーに支持されるためのカギ」となりそうなのが、ユーザーインターフェイスだ。どんなに便利なAIサービスを提供されても「独立したアプリ」として配布されてしまっては、結局、アプリを起動する手間がかかってしまい、利用頻度が上がることはない。しかし、OSに組み込む形で、スムーズにAI関連の機能が使えるようになっていれば、ユーザーはわざわざAIを使うという認識がないなかで、AI関連機能を自然と使っていくことになるだろう。

 その点、昨年登場したGalaxy AIは、他社よりも先駆けて投入したにもかかわらず、結構、OSに溶け込ましてAI機能を提供していた。文書の要約や提案など、メールの画面からすんなりと確認できたりして、使い勝手はかなりよかったといえるのだ。

Galaxy AI

 一方で、グーグル「Pixel」はGeminiアプリを提供するだけで満足してしまったのか、あまりOSに深くしみこんでいる感じがせずに、なんだかもったいない印象があった。せっかく、Androidを提供している垂直統合のメーカーなのだから、もうちょっとやりようはあったはずだ。

 そんななか、「Apple Intelligence」は2025年、早くも正念場を迎えるだろう。AI関連機能をiPhone向けのiOSだけでなく、iPadのiPadOS、さらにはMac向けのMacOSなど、横展開も行っている。ユーザーとすれば、iPhone、iPad、Macが完璧に連携して、ユーザーのデータに対してApple Intelligenceが賢く、振る舞ってくれないことには失望につながる。iPhoneで提案してきたことは別のデバイスでは「提案済み」としてスルーすべきだし、iPhoneで途中だった件はApple Intelligenceがきちんと理解し、iPadやMacで続きを提案するぐらいはしてほしいものだ。

 Apple Intelligenceはオンデバイスで動いているため、なかなかデバイス間の連携は困難だと思われる。しかし、ユーザーとしては期待値が上がっているだけに、それぐらいのことは「やって当然」と思ってしまいがちだ。

 かつて「OK、Google」や「Hey Siri」などの音声アシスタントが登場したときも、期待外れに終わり、いつしか誰も使わなくなってしまった。今回のオンデバイスAIブームは、ユーザーの期待を超えて、快適な操作性を提供してくれるのか。それとも、またも落胆して終わるのか。期待値が爆上がりしているだけに、グーグルやアップル、さらに他のAndroidメーカーにとっても、今年の新製品は真価が問われそうだ。

石川 温

スマホ/ケータイジャーナリスト。月刊誌「日経TRENDY」編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。携帯電話を中心に国内外のモバイル業界を取材し、一般誌や専門誌、女性誌などで幅広く執筆。