石川温の「スマホ業界 Watch」

Apple Watchは「watchOS 9」でどう進化するのか

 Apple Watchが発売されて7年半になろうとしている。当時、「これからはウェアラブル時代だ」なんて言われ、様々なウェアラブルデバイスが登場した。そんななか、アップルはシンプルな時計型にこだわったことで、iPhoneユーザーに市民権を得るとともに、時計メーカーとしてナンバーワンのポジションを築いた。

 Apple Watch向けのOSであるwatchOSがこの秋、「watchOS 9」としてバージョンアップする。すでにパブリックベータ版が公開されているので、あれこれ試してみた。

 「watchOS 9」の新機能を試そうと、久々にジョギングをしてみた。炎天下のなか、汗を大量に流しながらApple Watchをみると、これまで以上にワークアウト中に様々な情報を確認できるようになっている。特に「心拍数範囲」としてワークアウトの強度レベルを確認できるのが面白い。ジョギングをしていても、ついつい歩いてサボりがちになってしまうが、これであれば、なんとかレベルをキープしようと走り続けたくなってくる(暑すぎて断念せざるを得なかったが)。

 また、ランニングなどは前回の走りと比較できるようになり、前よりも速く走ろうという気にさせてくれるのだった。

 過去のワークアウトに関する情報も、地図だけでなく、坂の上り下りも把握できる。また、上下動や設置時間、歩幅の長さなどのランニングフォーム指標もチェックできるように進化している。今回のバージョンアップでワークアウトの結果がより可視化されている感がある。

 また、地味に便利なのが服薬のリマインダーだ。

 iOS 16では、ヘルスケアアプリで、自分が日頃、飲んでいる薬を登録することができるようになった。1日に1回なのか、食後なのか、それぞれ服用するタイミングが異なるだろうが、それらも記録しておくことで、時間になったら、服用するように教えてくれるようになる。

 Apple Watchがあれば、その時間になれば、すぐに通知してくれるし、服用したら、「すべて服用で記録」というボタンを押せば、きちんと記録をとっておいてくれる。

 最近、毎日、薬を飲むようになった自分としては、とてもありがたい機能でもあるし、できれば、遠く離れて住む、年老いた両親にもApple Watchを装着して、きちんと薬の管理をして、長生きをしてもらいたいと思ったほどだ。

 もうひとつ、進化しているのが睡眠の深さを測定できるようになった点だ。

 睡眠時にApple Watchを装着していると、レム睡眠、コア睡眠、深い睡眠、覚醒といったようにレベルを測定してくれるようになった。

 また、iPhoneのヘルスケアアプリでは睡眠時の心拍数や呼吸数なども確認することが可能だ。しっかりと睡眠がとれているかが可視化されるので「今晩はしっかり寝よう」という気にさせてくれる。

 個人的には睡眠時無呼吸症候群も把握できると嬉しいが、それは次の進化を待つ必要があるかも知れない。

 ただ、睡眠時も自分の身体の状態をチェックできるとなると、気になるのが「いつ、Apple Watchを充電すればいいのか」という問題だ。これまでは就寝時にApple Watchを充電していたが、就寝中も身体のデータを取得できるとなると、別の時間帯に充電しなくてはならない。

 Apple Watchは普段、装着していると朝から晩まで、1時間1回、立ち上がることを12回求めてくるため、日中も充電するタイミングが難しかったりする。

 watchOSが進化し、多機能となり、様々な身体のデータを記録し続けることができるようになると、いつ充電したらいいのかわからなくなる。この秋に発売されるであろう新製品は、バッテリー寿命が劇的に伸び、充電する回数が少なくて済むような進化をしてもらいたいものだ。

 また、「watchOS 9」ではApple Watch単体で、スケジュールの入力が可能となった。さらに日本語の文字入力キーボードも表示される。ただ、Apple Watchの小さなディスプレイで、日本語の文字入力、変換をするのはかなり大変で、実際に入力しようとすると、iPhone側が反応し、iPhoneで文字入力できるような連携プレーが行われる。

 「それならば、はじめからiPhoneで文字入力すればいいのではないか」という気にもなってくるが、とりあえず、「Apple Watchで日本語入力ができる」というのは、どのシチュエーションで便利かはさておき「着実な進化」といえるだろう。

 個人的には、Apple Watchは「子どもやシニアの見守り」としても、ちょうどいいデバイスなのではないかと思っている。

 KDDIなどが「ウォッチナンバー」というサービスで、iPhoneを持っていなくてもApple Watchにセルラーの番号を書き込み、データ通信ができるようになっている。

 子どもやシニアと電話する、メッセージを送り合うといったことが可能だし、音楽やポッドキャストを聞くこともできる。

 見守りデバイスというと首から提げたり、カバンにつけたりというのが一般的だが、Apple Watchであれば、そもそも格好いいし、子どもやシニアに向けた機能が充実している。

 Apple Watch単体での文字入力も、iPhoneを持たない子どもが使うと言うのであれば、納得がいく。

 Apple Watchは「watchOS 9」にアップデートされることで、さらに子どもとシニアに最適なデバイスに進化することになりそうだ。

石川 温

スマホ/ケータイジャーナリスト。月刊誌「日経TRENDY」編集記者を経て、2003年にジャーナリストとして独立。携帯電話を中心に国内外のモバイル業界を取材し、一般誌や専門誌、女性誌などで幅広く執筆。