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新しいケータイコンテンツの可能性が見える「RZ-J700」
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ベストセラーPHSの後継モデル
一昨年に登場した三洋電機製feelH"端末「RZ-J90」。発売から数カ月、品切れを起こすほどの大ヒットを記録したのは記憶に新しいところだ。今回紹介する「RZ-J700」はそのベストセラーモデルの後継モデルに位置付けられた製品だ。個人的にも注目している端末のひとつだが、実機を入手することができたので、その試用感などをレポートしよう。
ベストセラーに続く難しさ
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三洋テレコミュニケーションズ/DDIポケット『RZ-J700』。サイズ:48×94.5×22.5mm(折りたたみ時)、90g。インテリジェントシルバー(写真)、クリスタルバイオレット、マニッシュレッドをラインアップ。
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どんなジャンルの商品にも言えることだが、ベストセラーを記録した製品の後継商品ほど難しいモノはない。たとえば、クルマの世界ではフルモデルチェンジが受け入れられず、旧型車の方が中古市場で人気を保ち続けているといったこともある。移り変わりの激しいケータイの世界では、常に新しいサービスに対応した端末が登場するため、クルマの世界のようなことは少ないが、それでも従来モデルからのコンセプト継承や新機能の搭載など、開発者は常に頭を悩ませている。
ここ数年、厳しいと言わ続けているPHS。今年に入り、東京電話アステルの事業譲渡、NTTドコモのPHS事業見直し発言などのニュースが伝えられているが、その一方でDDIポケットは1999年に登場したH"以降、安定した人気を確保し、昨年は定額制を実現したAirH"をスタートさせるなど、幅広いユーザー層で着実な支持を固めつつある。なかでも一昨年に登場したfeelH"は、それまでPHSに懐疑的、あるいはマイナス視していたユーザー層を振り向かせることに成功した。
そんなfeelH"対応端末の中でもひときわ高い支持を得ていたのが『feelH"対応端末第1弾』として登場した三洋電機製「RZ-J90」だ。近年のPHS端末ではまず間違いなく、最も支持された端末のひとつであり、携帯電話を含めた端末ラインアップの中でも際立つヒット作だったと言えるだろう。
今回紹介する三洋テレコミュニケーションズ製端末「RZ-J700」は、そのベストセラーモデルの後継機種に位置付けられるものだ。従来のRZ-J90は名機と呼んでも差し支えのない端末だったが、発売から約1年半近くが経過したことにより、最新の端末に比べ、液晶ディスプレイや日本語入力、メニュー構成などの面で、若干の見劣りがするようになった感は否めない。RZ-J700ではこうした最新トレンドをどのように取り入れていくのか、ベストセラーとなったRZ-J90の何を受け継ぎ、何を追加するのかが重要なポイントになる。機能とトレンドのさじ加減次第ではRZ-J90を上回るヒット作になるかもしれないし、逆もあり得るというわけだ。従来モデルとの比較なども交えながら、実機の出来をチェックしてみよう。
H"最大の2.12インチ6万5536色表示が可能なカラー液晶を搭載
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背面にはイルミネーションLEDを装備。全体的にスッキリしたデザインにまとめられている。
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製品の細かいスペックなどについては、三洋テレコミュニケーションズやDDIポケットの製品情報ページ、「ケータイ新製品SHOW CASE」を参考にしていただくとして、ここでは筆者が実機を試用して得られた印象を中心に紹介しよう。
ボディは従来モデルを踏襲した折りたたみデザインを採用しているが、液晶ディスプレイ背面側の処理が変更され、ややスマートな印象を受ける。液晶ディスプレイ背面側にはH"ロゴが光るイルミネーションランプを備え、着信相手などによって光り方を設定できるようにしている。右側面には外部接続端子、左側面にはイヤホンマイク端子とサイドキーが備えられている。外部接続端子には後述するサウンドプレーヤーが接続できるが、従来モデル同様、コネクタの曲がった向きと外れたキャップの向きが同じであるため、接続部分の『しっかり感』が今ひとつだ。
従来モデルと最も大きく変わったのは液晶ディスプレイだ。RZ-J90はいち早くカラー液晶を搭載したが、全体的に暗く、カラー液晶らしさが今ひとつだった。これに対し、RZ-J700では6万5536色表示が可能なTFTカラー液晶を採用しており、視認性や発色を大幅に改善している。サイズもH"端末としては最大の2.12インチとなっており、従来モデルのような「奥まった場所にセットされている」という感覚はほとんどなくなっている。ただ、液晶パネルが若干、左にオフセットされているため、気になる人は気になるかもしれない。
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液晶ディスプレイは6万5536色表示が可能なTFTカラー液晶を搭載。明るく見やすい。
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こうしたメニューの呼び出しに、側面のサイドキーを利用する。
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比較的キーの多いレイアウトだが、それでもサイドキーでも操作しなければならないのは……。
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キーレイアウトも大幅に変更されている。中央に方向操作ボタンと決定ボタンを一体化したマルチファンクションキーを備え、左上にカスタムファンクションキー、右上に[F]キー、左右に[文字]キーと[クリア]キーをレイアウトしている。マルチファンクションキー周囲のボタンはややサイズが小さく、カスタムファンクションキーにコンテンツ閲覧時の[戻る]操作が割り当てられていることが多く、操作に若干の慣れを必要とする。また、左側面のサイドキーは長押しでマナーモードに切り替えることができるのだが、コンテンツやメールBOX閲覧などの画面ではメニュー呼び出し(返信など)の機能が割り当てられている。端末の持ち方にもよるのだが、これもやや違和感を覚える。もしかすると、慣れれば、使いやすいのかもしれないが……。
音声テキスト同期再生は面白いかも?
機能面についても約1年半の経過を踏まえ、かなり多方面に渡って強化されている。まず、以前紹介した九州松下電器の「KX-HV200」に続き、AirH"に対応している。ただし、KX-HV200が32kbpsパケット通信とフレックスチェンジ方式の両方に対応しているのに対し、RZ-J700は32kbpsパケット通信のみに対応(通常のPIAFS 2.2/64kbps接続などはRZ-J90と同様)しているため、AirH"対応料金コースとしては「つなぎ放題コース」しか選ぶことができない。どのAirH"対応料金コースに魅力を感じるのかはユーザーによって違うだろうが、おそらく最も幅広いユーザー層に受け入れられるであろう「ネット25コース」が利用できないのは残念だ。
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アイコンを使ったメニューを採用。
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[メインメニュー]と[H"メニュー]のデザインが似ているため、混乱しやすい。
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NHKラジオ講座をベースにした「NHK出版ラジオ英会話」。起動時には画像も表示される。
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feelH"最大の特徴のひとつと言われた着信メロディは、32和音(PCM音源175音色)に対応することにより、一段と美しいサウンドを楽しませてくれる。従来のfeelsoundとして作成したデータも再生してみたが、まったく異なる印象のメロディが再生される。作成したデータによって、印象は異なるが、RZ-J90からの乗り換えユーザーには「オオッ」と感じさせる部分でもある。ちなみに、イヤホンマイク端子はステレオヘッドホンに再生しているため、ステレオ対応コンテンツをダウンロードすれば、端末のみで音楽を楽しむことも可能だ。
この他にもライトEメール対応やメールテロップ機能などが新たに搭載されているが、意外に面白いのがサウンドプレーヤー「RZ-RM1」と組み合わせて利用できる「音声テキスト同期再生機能」だ。音声テキスト同期再生機能は、ダウンロードしたコンテンツなどを再生するとき、画面に何かを表示させながら、映像と同期させた音声を再生できる機能のことで、FM放送の『見えるラジオ』などにも近い感覚のものだ。
この機能を利用したコンテンツとして、NHKラジオ講座「英会話レッツスピーク」をベースにした「NHK出版ラジオ英会話」がSoundMarketで配信されている。実際に、コンテンツをダウンロードしてみたのだが、画面を見ながらレッスンを聞ける上、端末を操作して演習問題と解答を切り替えながら表示することもできるため、従来のラジオとはひと味違った番組を楽しむ(勉強する)ことができた。また、レッスンの内容に合わせたメールマガジンも発行されており、両方を上手に活用しながら、レッスンを進めることができる。
音声とコンテンツの同期再生については、インターネットが普及し始めた頃のインターネットラジオ(僚誌「PC Watch」でもやってましたね)でも実現されていたが、RZ-J700は個人が所有する端末上で実現されているため、ユーザーの好みに応じて、いつでもどこでも自分のスタイルに合わせて利用できるというメリットがある。アレンジ次第ではケータイコンテンツの新しいトレンドを生み出すかもしれない。
最近、ケータイコンテンツが思ったほど利用されていないという分析が報じられているが、音声とコンテンツの同期再生のように、コンテンツにはまだまだ数多くのアレンジが考えられる。もちろん、いいコンテンツを開発すること、事業者やコンテンツプロバイダが積極的に情報発信や告知をすることも大切だが、パソコン向けコンテンツの縮小版ではない「ケータイならではのコンテンツ」を生み出すことも重要なポイントであり、RZ-J700の音声テキスト同期再生はそのひとつのヒントと言えるかもしれない。
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レッスン画面(英語)。
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マルチファンクションキーの「H"」キーを押すことで、レッスン中に英語と日本の切り替えが可能。
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RZ-J90からは素直に「買い」
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RZ-J90(左)からの乗り換えユーザーにもおすすめできる。
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さて、最後にRZ-J700の「買い」について見てみよう。ベストセラーを記録したRZ-J90の後継機種として登場したRZ-J700は、従来モデルで不満の多かった液晶ディスプレイを最新レベルのものに変更したり、着信メロディをさらに強化するなど、正常な進化を遂げた端末だ。音声テキスト同期再生のように、新しい試みを実現する機能も搭載されている。AirH"部分についてはKX-HV200に一歩譲るが、ネット25コースを契約するつもりがないのなら、特に気になる点はない。
RZ-J700をおすすめできるのは、まずRZ-J90ユーザーだろう。大ヒットしたRZ-J90も1年半の経過により、最新端末にやや見劣りがするような印象になってしまったが、RZ-J700はさまざまな面で進化を遂げており、最新端末にも引けを取らないレベルに仕上がっている。特に、最も目にすることが多い液晶ディスプレイが大幅に改善されたことにより、壁紙なども楽しみやすくなっており、コンテンツなども利用してみようという気も起きてくるはずだ。利用期間によるが、一定期間以上、利用したユーザー向けの機種変更価格は1万円前後に設定されており、お買い得感も高い。
もちろん、これからPHSを契約したいというユーザーにもおすすめできる端末のひとつだが、NHKラジオ講座を聴いているリスナーの人たちには音声テキスト同期再生機能を一度、体験してみてもらいたい。「うぉ~、すげぇ」というほどではないが、ちょっとした空き時間にこうした使い方ができるのはなかなか便利だ。できれば、NHKラジオ講座に限らず、もっと他のコンテンツも楽しめるようになることを期待したい。
また、同じintelligentH"端末のKX-HV200と悩むユーザーについては、SDメモリカードスロットの有無、ネット25コース契約の必要性、液晶ディスプレイ、ワンタッチオープン機構などが判断基準になる。筆者の勝手な解釈から言えば、ビジネスマンのように実用性重視のユーザーならKX-HV200、デザインやボディカラー重視ならRZ-J700という選択になるだろうか。ただ、個人的には6月出荷予定のRZ-J700のマニュッシュレッドが「グッ」と来ているのだが……(笑)。
・ RZ-J700 ニュースリリース(三洋電機)
http://www.sanyo.co.jp/koho/hypertext4/0203news-j/0322-1.html
・ 製品情報(DDIポケット)
http://www.ddipocket.co.jp/syohin/i_rz-j700.html
・ 製品情報(三洋テレコミュニケーションズ)
http://www.stel-web.com/H/j700/
・ 「NHK出版ラジオ英会話」(DDIポケット)
http://www.ddipocket.co.jp/news/h140401.html
・ RZ-J700(インテリジェントシルバー)
・ 三洋、AirH"対応の折りたたみ型H"端末「RZ-J700」
・ 三洋製AirH"対応音声端末「RZ-J700」が4月19日に発売延期
・ SoundMarketで音声とテキストを同時再生する英会話コンテンツ
・ feel H"対応端末第1弾「RZ-J90」は何を感じさせてくれるのか
(法林岳之)
2002/05/15 12:16
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