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feel H"対応端末第1弾「RZ-J90」は何を感じさせてくれるのか
法林岳之 法林岳之
1963年神奈川県出身。パソコンから携帯電話、メール端末、PDAまで、幅広い製品の試用レポートや解説記事を執筆。特に、通信関連を得意とする。「できるWindows XP基本編」「できるADSL フレッツ・ADSL対応」「できるZaurus」「できるVAIO Windows XP版」など、著書も多数。ホームページはPC用の他、各ケータイに対応。iモード用EZweb用J-スカイ用、H"LINK用(//www.hourin.com/H/index.txt)を提供。「ケータイならオレに聞け!」(impress TV)も配信中。


DDIポケットのfeel H"対応第1弾

 昨年に登場した「H"(エッジ)」により、PHSのマイナスイメージを見事に払拭したDDIポケット。今年は従来のH"をさらに進化させた「feel H"」という新しい企画を打ち出してきた。そのfeel H"対応端末第1弾となる三洋電機製「RZ-J90」が発売された。筆者もようやく機種変更で端末を入手することができたので、レポートをお送りしよう。


発表、延期、発売、端末不足……

 三洋電機/DDIポケット『Leje RZ-J90』。サイズ:49(W)×94(H)×22.5(D)mm(折りたたみ時)、94g。ルミナスブルー(写真)とピュアシルバーをラインナップ。
 屋外に持ち出せるコードレスホンとして生まれたPHS。サービス開始当初こそ、その手軽さが人気を集めたが、携帯電話の低価格化やPHSの機能不足により、昨年あたりまでは急速にユーザーの支持を失っていた。この劣勢を見事に挽回したのが1999年7月に発売されたDDIポケットのH"だ。H"はそれまでのPHSで実現できていなかった高速ハンドオーバーをはじめ、64kbpsデータ通信、PメールDX(現在のH"LINK)によるメール/コンテンツサービスなどにより、PHSのイメージを大きく変えることに成功した。地域によって、若干の温度差はあるが、都市圏ではH"を支持するユーザーが多く、現に筆者の回りでもH"を愛用している人が増えている。

 そのDDIポケットがこの年末に投入してきたのが新規格「feel H"」だ。feel H"は従来のH"の機能に加え、「画像の利用」「着信音」「メディアミックス」という3つのポイントを強化している。画像の利用はオプションで提供される超小型デジタルカメラユニットを利用し、画像コンテンツや待受画面の作成を容易にしている。画像を連続再生する機能も搭載しており、最速2画面/秒での再生が可能だ。着信音はPCM音源を採用したリアルなもので、「気付かせる音」から「聴かせる音」への進化を目指している。feel H"のテレビCMなどでショパンの「幻想即興曲」が流れているが、あのテレビCMに使われているのはRZ-J90の音をそのまま利用しているそうだ。3つ目のメディアミックスは、画像の利用と着信音を組み合わせることにより、音楽を流しながら画像やテキストを表示するコンテンツの実現を目指している。連続映像と音楽、テキストの同時再生もできるため、ちょっとした映画情報やCMなども実現することが可能だ。


 折りたたみ式ボディを採用。トップ面にはH"ロゴが光るLEDを装備。折りたたみ式の中でもスリムな印象だ。
 昨年登場したH"が「PHSの名誉挽回」を果たしたものであるとするなら、今回の「feel H"」は「PHSの逆襲」を狙った企画とも言えるもので、事業者やメーカー、代理店、関連会社などもかなり熱い期待を寄せていた。しかし、残念ながら、feel H"はあまり華々しいデビューを飾ることができなかった。feel H"は9月に発表され、11月に各社から対応端末が登場する予定だったが、開発などの遅れから数社が同時発売を断念し、サービス開始に間に合うのは三洋電機のみという状況になってしまった。その三洋電機も当初の11月5日発売を11月25日まで延期することになった。

 そして、運命の発売日。大手家電量販店の店頭には、feel H"を買い求める人が並んだが、肝心の端末が十分に入荷せず、当日販売で購入できた人はごくわずか。各店では予約も受け付けていたが、予約数相当の商品を確保できず、かなりの人が「予約したのに買えない」という事態を招いてしまった。かく言う筆者も予約をしたが、発売日には購入できず、端末を手にするまで2週間以上を要した。ちなみに、RZ-J90の予約については、新宿や渋谷などの大手家電量販店に集中した傾向があるようで、郊外の家電店や携帯電話ショップなどでは無事に買えたという声も聞かれている。また、端末不足は現在でも続いており、DDIポケットが異例の謝罪リリースを発表するに至っている。おそらく1月半ばあたりまでは、このような状態が続くのではないかと見られる。

 かくして登場したfeel H"対応端末第1弾「RZ-J90」。購入できてから、まだ日が浅いため、十分に触り込んだとは言えないが、はたしてfeel H"は何を感じ(feel)させてくれるのだろうか。


コンパクトな折りたたみ式ボディを採用

 液晶ディスプレイはフロントライト式のカラー液晶を採用。フロントライト式のため、画面がやや奥にあるように見えるが、発色は比較的良好。
 基本スペックやサービス内容などについては、すでに掲載されている「ケータイ新製品SHOW CASE」やDDIポケット及び三洋電機の製品情報のページなどを参照していただきたい。ここでは筆者が実機を試用した印象を中心に紹介しよう。

 まず、ボディは流行りの折りたたみ式を採用している。同じ三洋電機が製造するauの「C401SA」とほぼ同じデザインで、蝶つがいの部分の構造なども共通だ。しかし、ボディ全体を上手に削り取ることにより、C401SAよりもスリムな印象に仕上げている。C401SAで採用されている「おしらせディスプレイ」はないが、その部分にはワイドレンジのスピーカーとH"のロゴをあしらったLEDが内蔵されている。H"ロゴにLEDは掛けてきた相手や通信の種類などによって、7色に光らせることができる。本体左側面には超小型カメラユニットも接続できるイヤホンマイク端子、右側面にはデータ通信カードやリモコンタイププレーヤーなどが接続できるデータ通信端子などが備えられている。

フォント1 フォント2 フォント3
 コンテンツ閲覧画面やメール画面は表示フォントサイズを三段階に変更可能。最大サイズはさすがに非実用的なので、最小サイズのもうひとつ小さいものが欲しい。


 [F]キー、[H"]キー、[S(確定)]キーに囲まれたトライアングルゾーンで操作が可能。
 液晶ディスプレイはフロントライト式のカラー液晶ディスプレイを採用している。サイズは2インチと発表されているが、実測値では29×39mmとなっている。フロントライト式のため、液晶画面とガラス面に少し間隔があり、最初は違和感があるが、慣れてしまえば、あまり気にならない。ただ、フロントライトをワンタッチで点灯/消灯する機能がないのは省電力の点からも気になるところだ。メールやコンテンツ閲覧画面の表示は、全角で10×8行、7×6行、5×4行の3段階に変更することができる。

 ボタンデザインは中央にマルチファンクションキー、右上に[F]キー、左上に[H"]キー、下に[S(確定)]キーというレイアウトになっている。コンテンツ閲覧などは、基本的にこれらの4つのキーと[POWER/切]キーで操作することが可能だ。


■feelsoundは面白い!!

Treva
 外付けタイプのカメラユニット「Treva」を装着。外したときはキャップを付けて、ストラップに引っかけておくことが可能。Trevaはfeel H"の共通オプション。

 さて、feel H"のセールスポイントのひとつである着信メロディだが、これはやはり「一見」ならぬ「一聞の価値」がある。古くからPCに慣れ親しんできた人には当たり前だが、FM音源とPCM音源ではかなりの差がある。現在、携帯電話ではauのC40xシリーズなどに登載されている16和音が最強だが、feel H"の着信音の前ではかすんでしまうほどだ。ただ、この音源にはピアノ音の再現性がいいという傾向があるようで、クラシック以外の曲では今ひとつ「幻想即興曲」のようなインパクトが感じられないこともある。

 また、feelsooundでぜひ試してもらいたいのがPCで利用するMIDIデータからコンバートだ。筆者も手持ちのMIDIデータをいくつかコンバートしてみたが、これがなかなかの出来で、時間があれば、もっといろいろなMIDIデータのコンバートしてみたいくらいだ。もし、feel H"端末を持ち、PCを使っているのなら、ぜひDDIポケットが公開している「feelsound converter」やオンラインソフトとして公開されている「PS-PLAYER」などで遊んでみて欲しい。


 リモコンタイププレーヤー「RZ-RM1」をオプションで提供。セキュアマルチメディアカードを装着可能。RZ-J90を満充電後、約7時間の再生が可能。
 また、RZ-J90ではオプションとして販売されているリモコンタイププレーヤー「RZ-RM1」を装着することにより、「Sound Market」というデータ配信サービスを利用することができる。ダウンロードしたデータはリモコンタイププレーヤーのセキュアマルチメディアカードに保存することができる。Sound Marketで配信されるデータは、音楽、英会話、ニュースなどがある。音楽は着信メロディのようなものではなく、著作権保護技術仕様に対応したMP3形式のものが配信される。今回は実際に「feel H"」のテレビCMソングをダウンロードしてみたが、必要最小限の操作でダウンロードでき、自動的にセキュアマルチメディアカードに保存されるため、非常に手軽で扱いやすかった。ただ、1曲のダウンロードに11分4秒を要した上、1曲350円という価格設定はあまり手軽とは言えない。むしろ、英会話やニュースなどの方が便利なサービスと言えるのかもしれない。

 非常に盛りだくさんの機能を搭載したRZ-J90だが、実際に操作している上で気になる点もいくつかある。たとえば、多くの携帯電話では[F]キーを押して表示されるメニューから機能を選択するのだが、RZ-J90には[F]キーからのメニューの他に、[H"]キーから表示されるメニューもある。使い始めたばかりの頃は、どちらのメニューに機能があるのかがわかりにくかった。また、メニューはともにテキスト表示となっているのも少々さみしい気がする。やはり、これからの端末はアイコン表示なども選べるようにすべきだろう。


新機能は魅力だが、feelsoundは他機種でも……

 発売に際し、いろいろとトラブルのあったfeel H"対応端末第1弾「RZ-J90」だが、端末そのものの完成度はなかなか高く、楽しく遊べる端末に仕上がっている。最後に「買い」の診断をしてみよう。

 まず、feel H"に興味を持ち、これから購入してみようというユーザーだが、Sound Marketが楽しめるなど、機能的にも充実しているRZ-J90は買いの筆頭候補といえるだろう。Sound Marketを重視するなら、1月下旬に発売が延期された「RZ-J91」を狙ってみるのも手だ。ただ、feel H"の機能のうち、feelsoundに最も興味を持ったというのであれば、第2弾以降の東芝製「DL-M10」や九州松下電機製「KX-HS100」「KX-HF300」などを見てからでも遅くはない。feelsoundは共通の音源チップを採用しており、基本的にどの機種を選んでも同じ着信メロディが楽しめるからだ。違いがあるとすれば、スピーカー部分くらいだ。

 また、H"対応端末をはじめとするDDIポケットのPHS端末をすでに持っているユーザーの買い換えだが、これは「待ち」、もしくは「見送り」としたい。確かに、Sound Marketなどの機能は魅力だが、すでにH"端末を所有するユーザーはおそらくコンテンツ/メールなどを使っているはずで、その扱いにも慣れているはずだ。feel H"では当然、いろいろなコンテンツを見たり、添付メールなども頻繁に利用することが考えられる。しかし、RZ-J90はfeelsoundが5曲、Trevaで撮影した画像も10枚しか保存できないため、すぐに限界が来てしまう。リモコンタイププレーヤーのセキュアマルチメディアカードに転送ができるとは言え、手間と価格を考えると、割に合わない気もする。データ保存量を重視するなら、東芝製「DL-M10」などを選んだ方が賢明だろう。

 やや厳しい意見も書いてしまったが、RZ-J90は折りたたみ式ボディを採用したデザインやSound Marketなどの新機能など、バランス良くまとめられている端末だ。コンテンツなども含め、まだまだ発展途上中の部分も多いが、PHSの新しい可能性を感じさせてくれた製品であることは間違いない。


■URL
・feel H"ニュースリリース(DDIポケット)
http://www.ddipocket.co.jp/news/h120922.html
・RZ-J90商品情報(DDIポケット)
http://www.ddipocket.co.jp/syohin/rz-j90.html
・RZ-J90商品情報(三洋電機)
http://www.sanyo.co.jp/AV/H/J90/



(法林岳之)
2000/12/19 00:00

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