ココセコムEZにも対応したGPSケータイ「C3001H」
もうひとつの次世代サービスの注目株
auは昨年末から「オモシロイほうの次世代ケータイ」と題し、次世代サービスを展開している。なかでも各方面から期待されているのがgpsOneを利用した「GPSケータイ」だ。GPSケータイのサービスはC300xシリーズとC500xシリーズで利用できるが、この機能をフルに活かしているのが「C3001H」だ。筆者も機種変更で購入することができたので、レポートをお送りしよう。
唯一のココセコムEZ対応端末
au/日立製作所『C3001H』。サイズ:44(W)×130(H)×19(D)mm、86g。スカーレット(写真)、ブラック、シルバーをラインアップ。
昨年、さまざまな夢が描かれてきた「次世代携帯電話」がついに現実のものとなり、今年はいよいよ本格的に次世代携帯電話のサービス競争が始まると言われている。次世代携帯電話で実現されるサービスの中でも常に高い注目を集めているのが位置情報サービス、つまり、カーナビならぬ「人間ナビ」だ。自分の現在位置を特定し、その場所に合った情報(コンテンツ)を閲覧したり、次なる目的地への道案内をしてくれるなど、幅広い活用が期待されている。昨年末からauが開始した次世代サービスでもこの位置情報サービスが「GPSケータイ」というネーミングで提供されている。
今回紹介する日立製端末「C3001H」ももちろん、GPSケータイのサービスを利用できるわけだが、GPSケータイのサービスが利用できる他のC300x/C500xシリーズと違い、C3001Hは基本技術の「gpsOne」をフルに活用した「ココセコムEZ」も利用できるようにしているのが特長だ。音声通話も可能な通常端末としては唯一のココセコムEZ対応端末であり、そういう意味ではGPSケータイの主力モデルという位置付けにもなっている。
また、日立は過去に発売されたcdmaOne端末のラインアップの中で、新技術や新サービスの展開時に先行してきた印象が残る。代表的なものとしては、初のWAP対応端末「C201H」、初のカラー液晶搭載端末「C309H」、初のezplus対応端末「C451H」などがあり、PacketOneサービス開始当初も東芝製C301Tとともに、「C302H」をリリースしている。これらを見てもわかるように、cdmaOneのラインアップにおいて、日立製端末は常にスタンダードな位置付けをキープし続けているわけだ。
しかし、最近では着せ替えケータイ「C406S」「C1002S」、国産初のBluetooth搭載端末「C413S」のような新機軸を打ち出せなかったり、次世代サービス対応モデルの最上位シリーズであるC500xシリーズに端末を提供しないなど、従来のようなアドバンテージが失われつつあるのも事実だ。今回のC3001Hでは次世代ケータイのサービスで最も注目されている「GPSケータイ」に対応することで、どれだけ過去のアドバンテージを取り戻せるのかも注目したいところだ。そんなことも考え合わせながら、端末の出来を見てみよう。
GPS専用アンテナを内蔵
側面には日立製端末でおなじみの「気くばりスイッチ」を装備。ポケットの中に入れておいてもすぐにサイレント(マナー)モードに切り替えられる。
製品の細かい仕様などについては、auや日立の製品情報ページ、ケータイ新製品SHOW CASEを参考にしていただきたい。また、GPSケータイのしくみについては本誌連載の「ケータイ用語の基礎知識」の 「第71回: eznavigation とは」 「第42回: gpsOne とは」を、GPSケータイの使用感については 「au次世代サービス とことんレビュー」も参考にしていただきたい。ここでは筆者が購入した端末を試用感を中心にお伝えしよう。
まず、ボディは今や少数派になりつつあるストレートデザインを採用する。基本的なデザインはC451Hと共通だが、C451Hでかなり目立っていた背面のスピーカーがボディと一体化されたため、かなりスッキリまとめられた印象だ。本体側面には日立製端末でおなじみのスライド式「気くばりスイッチ」を備え、スイッチ部もボディと同系色になっている。気くばりスイッチは通常の状態から「セーフティモード(運転中)」や「サイレントモード(マナー)」に瞬時に切り替えられるもので、筆者も過去に日立製端末を利用していたとき、非常に便利に使っていた。できることなら、もう少し小さくまとめてほしいところだが……。受話部の横には小さなLEDの窓のようなものが見えるが、これは「気くばりセンサー」と呼ばれるもので、光センサーを応用することにより、カバンの中などの暗いところから取り出したとき、着信音を小さくしたり、止めたりできるものだ。
側面に青く光るGPSイルミネーションを装備。伸縮式アンテナの根元にあるゴム状の部分にGPS専用アンテナを内蔵。
また、C3001Hのアンテナ部の根元には、GPSアンテナが埋め込まれており、すぐ近くの側面には着信時や測位時に青く光るGPSイルミネーションを備える。他機種をすべて確認したわけではないので、確定的なことは言えないが、どうもGPSケータイの機能をサポートする端末のうち、C3001HのみがGPSの専用アンテナを備えているようだ。GPSイルミネーションは面白いアイデアだが、GPS専用アンテナを装備しているのであれば、そのアンテナ部を光らせた方がより「イバリ」が効いたかもしれない。
液晶ディスプレイは4096色表示が可能なTFDカラー液晶を採用する。ストレートデザインのボディとしては、かなり大画面の部類に入るだろう。発色も比較的良好で、屋外での視認性もまず問題ない。十分に及第点を付けられるレベルだ。
ボタン類はC451Hから基本デザインを受け継いだものの、若干レイアウトが変更されている。中央にスティック型のマルチセンターキーを備え、左右にソフトキー、左右したにメールキーとEZキーを配している。マルチセンターキーは従来のものに比べ、縦長の楕円になったためか、操作性が改善され、動きも軽快になっている。ちなみに、マルチセンターキーを奥方向に押せば、簡易ロックが掛けられる。
気になるのはマルチセンターキーの周囲にあるキーだ。周囲に似たような形状のキーが並んでいるため、どうも操作を間違えるケースが多く、今ひとつ使い勝手は良くない。特に、終話したいのにEZキーを押したり、発信したいのにメールキーを押してしまうといったケースがよく見受けられる。キーの形状などでもう少し工夫すべきではないだろうか。
液晶ディスプレイはTFDカラー液晶を採用。明るさや発色に不満はないが、なぜか標準の待受画面がモノクロのように地味。
ボタン類はC451Hから基本デザインを継承。EZキーと終話キー、メールキーと発話キーはよく押し間違える。
新しいコンセプトのメニューデザイン
C3001Hは従来モデルのC451Hに比べ、機能面でもいくつか改良が図られている。たとえば、各機能を呼び出すためのメニューもそのひとつだ。
最近の端末は機能が豊富になってきたため、メニュー構造を工夫することが多い。その最も典型的な例がアイコン化だが、携帯電話の狭い画面はアイコンをいくつも並べることが難しい上、アイコンだけではユーザーに何の機能なのかが分かってもらえない。そこで、C3001Hではトップのメニューに5つのアイコンを並べ、この5つの機能アイコンの名称を表示するようにしている。さらに、カーソルを上下左右方向に動かすと、そのメニューに関連する機能アイコンが左右、または上下に表示されるようになっており、狭い画面を上手に活用している。たとえば、メインのフロントメニューでは右側にEZアイコンが見えるが、カーソルを右方向に移動すると、上に「eznavigation」、中央に「EZweb」、下に「お気に入り」のアイコンが表示される。そして、その左側には機能名が表示される。細かいところだが、使い勝手に影響する工夫や配慮と言えるだろう。
また、このフロントメニューの発想に近いのがメールやアドレス帳画面で表示される「デュアルウィンドウ」だ。たとえば、メールの一覧画面でカーソルを合わせると、ワンテンポ遅れてウィンドウが開き、そのメールの日付や差出人、タイトルなどが表示される。部分的に内容がウィンドウで表示されることにより、目的のメールやアドレスも探しやすくなるわけだ。
C3001Hのフロントメニュー。合計5つのアイコンの周りにはタイトルが表示されるので、機能アイコンの意味を理解しやすい。
フロントメニューから右方向にカーソルを移動すると、メニューがアニメーションして、このようになる。メインメニューと同じようにタイトルが表示される。
ところで、メールについてはひとつ気になる点がある。NTTドコモほど大量ではないものの、auにもときどき迷惑メールが送られてくる。ユーザーはその対策として、迷惑メールの発信者アドレスを登録し、受信拒否するわけだが、C3001Hではメールの発信者アドレスを端末上でコピーする機能がなく、登録に若干の手間が掛かるのだ。この発信者アドレスをコピーする機能がない点はC5001Tでも共通しており(工夫すれば、目的は達成できるのだが)、ぜひ今後の改善を望みたい。もちろん、迷惑メールがなかったとしても役立つ機能であるはずだ。
日本語入力は従来同様、ジャストシステムの「ATOK for au」を採用しているが、新たに推測変換機能を搭載している。たとえば、過去に「ほうりん→法林」と変換したことがあれば、「ほ」と入力して右方向を押すと、右方向の矢印が表示され、さらにもう一度、右方向を押すと、「法林」という変換候補が表示されるわけだ。文章にするとややこしいが、実際に触ってみると、1文字入力した後に右方向のトントンッという操作するだけで、目的の文字が表示されるようになり、かなり快適になる。使い込んでいくほどに、ユーザーになじむ機能と言えそうだ。また、辞書も流行語や口語などを中心に大幅に強化されており、メール作成はかなりラクになっている。
位置情報をサーバに送信するときは必ず確認画面が表示される。この状態から数十秒で位置を計測することが可能。早ければ30秒以内だ。
さて、気になるGPSケータイとしての機能についてだが、C5001Tと比べて計測したところ、精度や計測までの時間に大きな違いは見られなかった。ただ、これは数回の計測による印象でしかなく、受信する場所の立地条件によってはGPS専用アンテナの効果を発揮するシーンが出てくる可能性もある。また、C3001Hは唯一のココセコムEZに対応端末だが、新聞などでも報じられているように、すでに窃盗などの犯罪検挙などにも役立っており、GPSケータイの活躍の場を拡げている。
ただ、注目の人間ナビ的な活用については、データ通信の速度やezplusの起動時間などが十分ではないため、カーナビのような感覚で使うレベルではない。とは言うものの、移動を始める前など、時間的に余裕を持って計測しておけば、人間ナビに近い使い方も不可能ではない。eznavigationについてはまだ一般向けにコンテンツの仕様が公開されておらず、いわゆる勝手サイトでの活用ができない。これができるようになれば、もっと面白いコンテンツが登場するようになるかもしれない。
GPSケータイのスタンダードはコレ
さて、最後に「買い」の診断をしてみよう。C3001Hは従来の日立製端末同様、ストレートデザインを採用しながら、従来モデルよりもデザイン的に洗練され、ボディカラーによる自己主張も見えてきている。GPSケータイのサービスに対応したC300x/C500xシリーズ端末の中で、唯一、ココセコムEZに対応するなど、GPSケータイの持つ可能性を十分に活かそうとしている。日本語入力やメニューなどにも細かい工夫が施されており、使い込んでいくほどに納得できる実力派の端末として仕上げられている。
まず、C3001Hを「買い」と言えるのは、当然のことながら、ココセコムEZを利用したいユーザーだろう。ココセコムEZは居場所の確認などがメインと考えられがちだが、貴重品の入ったカバンに入れておいたり、体の調子が悪いときに緊急信号をセコムに送信できるなど、いろいろな意味でセキュリティを考えたサービスだ。子供や老人に持たせるだけでなく、仕事でクルマを運転する人や身体に不安のある人にも有効だろう。このサービスを利用したければ、現時点での選択肢はC3001Hしかない。
もちろん、GPSケータイで提供されるさまざまなサービスを楽しんでみたいというユーザーにもおすすめできる端末だ。ただし、ボディデザインがストレートであること、他にもGPSケータイ対応端末が数機種、販売されていることは十分に考慮すべきだ。個人的には、今後、登場が予定されている電子コンパス付きのGPSケータイ端末を見てから判断したいところだ。
また、次世代ケータイのサービスには興味があるが、それよりもメールやコンテンツ閲覧などの基本的なサービスが気になるというユーザーも検討に加えたい端末だ。ATOK for auの推測変換機能やメール画面のデュアルウィンドウ表示など、C3001Hには使い勝手を考慮した便利な機能が数多くあり、十分満足のいく仕上りになっているからだ。
非常に注目度が高いGPSケータイだが、この機能を単純に「位置を測定する」だけでなく、いかに位置情報を利用したコンテンツなどに昇華し、内容を充実させていくのかが成否のカギを握っている。そういう意味からもココセコムEZに唯一、対応したC3001Hの存在意義は大きいと言えそうだ。
・ ニュースリリース(au)
http://www.kddi.com/release/2001/1112/index.html
・ 商品情報(au)
http://www.au.kddi.com/phone/cdmaone/c3001/c3001.html
・ 製品情報(日立製作所)
http://www.hitachi.co.jp/Prod/vims/mobilephone/index2.html
・ ココセコムEZ(セコム)
http://www.855756.com/info/f_naiyo_ez.html
・ au、GPS対応の「C3001H」「C3002K」と動画再生の「C5001T」
・ auの次世代サービスとは??KDDIの保戸田氏に聞く
・ オモシロイほうの次世代のフラッグシップモデル「C5001T」
(法林岳之)
2002/01/29 15:54