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幅広いモバイル環境に対応する「AirH" Card petit」
法林岳之 法林岳之
1963年神奈川県出身。パソコンから携帯電話、メール端末、PDAまで、幅広い製品の試用レポートや解説記事を執筆。特に、通信関連を得意とする。「できるWindows XP基本編」「できるADSL フレッツ・ADSL対応」「できるZaurus」「できるVAIO Windows XP版」など、著書も多数。ホームページはPC用の他、各ケータイに対応。iモード用EZweb用J-スカイ用、H"LINK用(//www.hourin.com/H/index.txt)を提供。「ケータイならオレに聞け!」(impress TV)も配信中。


いよいよ販売が開始されたAirH" Card petit

 今年のビジネスシヨウで展示され、販売開始が待たれていたTDKのデータ通信カード一体型PHS「AirH" Card petit」(RH2000P)の販売がいよいよ開始された。DDIポケットが提供している定額及び準定額料金サービス「AirH"」に対応しており、ノートPCからPDAまで幅広い環境で利用することができる。「ネット25」契約の端末を試用することができたので、早速、レポートをお送りしよう。


AirH"に対応したデータ通信カード一体型PHS第2弾

AirH" Card petit

 TDK/DDIポケット「AirH" Card petit」(RH2000P)。サイズ:42.8(W)×3.3(H)×73.0(D)mm(突出部の厚さは7.0mm)、19g。
 最大64kbpsのデータ通信が可能なPHSは、ノートPCやPDAなどを利用するモバイルユーザーを中心に高い支持を集めている。なかでもデータ通信カード一体型PHSは、ノートPCやPDAなどに挿しっぱなしで利用でき、必要に応じて、他の機器にも接続できるため、非常に人気が高い。

 そんなデータ通信カード一体型製品の市場において、今年最大のトピックと言えば、やはり、DDIポケットがサービスを開始した「AirH"」だろう。データ通信を定額及び準定額で利用できるAirH"はパーソナルユーザーだけでなく、リモートアクセスや定期的なデータ通信を行なう企業ユーザーにも高い注目を集めている。AirH"の「つなぎ放題コース」のサービスが開始され、すでに1カ月近くが経過するが、これまで販売されてきたのはセイコーインスツルメンツ製「MC-P300」のみだった。MC-P300はベストセラーを記録した「C@rdH"64」(MC-P200)の流れを汲む製品だが、PCMCIA Type2準拠のPCカードであるため、主にノートPCでしか利用できないという制約がある。

 今回発売されたTDKの「AirH" Card petit」(以下、RH2000P)はCF Type1準拠のデータ通信カード一体型PHSであり、最近、製品ラインアップが充実してきたPocket PCやザウルス、ハンドヘルドPCなどのPDAでも利用できるというメリットを持つ。今年6月に開催されたビジネスシヨウで参考出品され、来場者に高い注目を集め、発売が待たれていた。RH2000Pを販売するTDKはPCカードモデムやデータ通信ケーブルなどのモバイル製品を数多く販売してきたことでも知られているが、回線契約を伴うPHS市場には初参入であり、今回の商品の出来映えが気になるところだ。


はみ出し部はやや大きめ

 RH2000Pの製品スペックなどについては、TDKやDDIポケットの製品情報ページを参照していただくとして、ここでは筆者が実際にいろいろな機器に接続した印象などを中心に製品を紹介しよう。

 まず、外見から見てみよう。DDIポケット向けのデータ通信カード一体型PHSとしては、すでにNECインフロンティアから「C@rdH"64 petit」(CFE-01)が販売されており、NTTドコモからも先日、このコラムで紹介した「P-in m@ster」や「P-in Comp@ct」が販売されている。これらの3製品はいずれもCF Type2インターフェイスに対応しているが、RH2000Pはそれよりも薄いCF Type1インターフェイスに準拠している。インターフェイスが薄くなった半面、CFスロットに収まる部分からはみ出す部分はやや大きめになっており、その外側に可動アンテナを備えている。はみ出し部分には2つのLEDを備えており、電波状態やデータ通信モードを確認することができる。ちなみに、後述するユーティリティを使い、省電力のためにLED点灯をOFFに設定することも可能だ。

 実際に、ノートPCやPDAに装着してみたのが以下の写真だが、はみ出し部分のサイズは他のCFサイズのデータ通信カード一体型PHSに比べ、確実に大きい。ただ、これが実際に使うときに邪魔になるかというと、見た目ほどは気にならないというのが正直な感想だ。もちろん、小さいに越したことはないのだが、多くのデータ通信カード一体型端末の場合、はみ出し部分に無線ユニットやアンテナが格納されており、あまり本体に近づきすぎると、ノートPCやPDAからノイズの影響を受けてしまう可能性がある。また、ノートPCなどの場合、PCカードスロットがやや奥まっていることがあるため、はみ出し部分がCFインターフェイス部分に近すぎると、PCカードアダプタを装着しても内蔵できない可能性がある。これらの点を考慮すれば、RH2000Pのはみ出し部分は多少気になるものの、各機器で確実に利用できる形状を意識したものであり、実用レベルのものと言えるだろう。


RH2000P(ノートPCに装着) MC-P200(ノートPCに装着)
 RH2000PをノートPCに装着したところ。  MC-P200に比べると、約1cm強ほど、はみ出し部分が長い。

RH2000P(ザウルスに装着) CFE-01(ザウルスに装着)
 RH2000Pをザウルスに装着したところ。ザウルスには今のところ非対応。  C@rdH"64 petit(CFE-01)と比べると、はみ出し部分はかなり大きい。

RH2000P(iPAQに装着) CFE-01(iPAQに装着)
 RH2000PをiPAQに装着。はみ出し部分は大きいが、縦型ボディで使ってみると、それほど気にならない。  C@rdH"64 petit(CFE-01)をiPAQに装着したところ。

P-in Comp@ct(iPAQに装着) P-in m@ster(iPAQに装着)
 P-in Comp@ctをiPAQに装着したところ。  P-in m@sterをiPAQに装着したところ。

 データ通信モードは最大64kbps(実効速度58.4kbps)でのデータ通信が可能なPIAFS 2.2、AirH"のつなぎ放題コース及びフレックスチェンジ方式で利用できる32kbpsパケット通信、PTEを介してアナログ回線(V.32bis/14.4kbps)やISDN回線(64kbps同期通信モード)に接続が可能なαDATA64などに準拠している。自営標準3版にも準拠しており、オフィスステーション(OS)モードを利用し、ワイヤレスTAなどの子機として登録することも可能だ(登録方法はマニュアルに記載)。ちなみに、P-in m@sterのような音声通話機能は備えていない。


Windowsはもちろん、Pocket PCやMac OSにも対応

PCカードアダプタ

 パッケージには専用PCカードアダプタが付属する。ノートPCなどで利用するときに必要になる。
 製品内容はどうだろうか。RH2000PのパッケージにはPCカードスロットに装着するためのアダプタ、ユーティリティなどを収録したCD-ROMが同梱されている。

 対応OSはWindows 95/98/98SE/Me/2000、Windows CE 2.11/3.0、Mac OS 8.5/8.6/9.0/9.1となっており、各OSで利用可能な設定ファイルとユーティリティが提供されている。ちなみに、筆者が試した限り、Windows XPでもWindows 2000用ドライバを利用することで動作させることができた。RH2000Pがこれらの幅広いOSに対応した点は高く評価できるもので、同じCFサイズの他のデータ通信カード一体型PHSと一線を画している。同じDDIポケット向けに販売されているC@rdH"64 petit CFE-01と比べた場合、Pocket PCやハンドヘルドPC、Mac OSに正式に対応し、それぞれの環境で動作するユーティリティが提供されているのは非常に大きなメリットと言えるだろう。


Windows用ユーティリティ 通信モード、待受モードの設定
 Windows用ユーティリティの画面。電波状態なども確認できる。  通信モードや待受モードも設定ができる。

Pocket PC用ユーティリティ PRINへの接続
 Pocket PC用ユーティリティはWindows用とまったく同じデザイン。  ユーティリティ画面の「PRIN」のアイコンをクリックすると、通信方式を選択する画面が表示される。選択すれば、接続の設定は自動作成される。

 また、ユーティリティもなかなかのデキで、通信モードの切り替えや待受の設定などができる他、ライトメールの送受信もできるようにしている。さらに、DDIポケットが提供しているインターネット接続サービス「PRIN」へのダイヤルアップ接続の設定も簡単にできるようにしている。Windows 95/98/98SE/Me/2000はもちろんのこと、Pocket PCでも簡単にできてしまったのには少々驚かされた。

 ザウルスについては、今のところ、正式な対応がアナウンスされていないが、ザウルスのラインアップにはMI-C1やMI-P1、MI-P10のようにCF Type1スロットを持つモデルが存在するため、対応する可能性は十分に考えられる。筆者が試した限り、MI-P10でアナログモデム用設定をカスタマイズすることで動作は確認できている。ただ、これはあくまでもイリーガルな利用法でしかないので、シャープとTDKには正式な対応を強く期待したい。

 一方、データ通信のパフォーマンスだが、今回試用したRH2000Pはネット25契約であるため、最大64kbpsでのデータ通信が可能だ。そこで、Windows 2000が動作するノートPCにRH2000Pを装着し、FTPでファイル転送速度を計測してみた。ネット25契約で採用されているフレックスチェンジ方式はPIAFS 2.1/64kbpsと32kbpsパケット通信をデータ転送量に応じて切り替えるものだが、できるだけ64kbps接続になるように連続的にデータを転送して計測を行なった。その結果、RH2000PではPIAFS 2.1/64kbpsのフルパフォーマンスを引き出すことができ、同じAirH"対応のMC-P300や通常契約(データパック)のC@rdH"64(MC-P200)と比べてもまったく遜色のない結果が得られている。以前、NECインフロンティアのC@rdH"64 petitのパフォーマンスを計測したとき、測る度に転送時間が異なるという不安定さを指摘したが、RH2000Pではそういった症状は見られず、非常に通信状態が安定していた。TDKはRH2000PでPHS市場にはじめて参入することになるが、十分なパフォーマンスを引き出し、安定した通信状態を実現したことは高く評価できるものだ。


自分に合った契約プランを考えて「買い」

データ通信カード一体型PHS4種類

 コンパクトフラッシュサイズのデータ通信カード一体型PHS4種類。並べてみると、RH2000Pのはみ出し部分はかなり目立つ。
 さて、いつものように「買い」の診断をしてみよう。定額及び準定額で利用できるAirH"に対応したデータ通信カード一体型PHS第2弾として登場したRH2000Pは、CF Type1という最もシンプルなインターフェイスを採用し、ノートPCからPDAまで幅広い環境で利用できるように設定ファイルやユーティリティなどの環境もしっかり整えている。パフォーマンスもPCカードタイプのものと比べても遜色がなく、通信状態も安定している。これらの点を考慮すれば、現在、最も「買い」と言えるデータ通信カード一体型PHSと言えるだろう。

 RH2000Pは幅広いモバイルユーザーにおすすめできる製品だが、なかでも特におすすめしたいのは複数のモバイル機器を持つユーザーだ。たとえば、普段はノートPCを持ち歩いているが、荷物を減らしたいときや週末はPDAだけで済ませるといったニーズを考えた場合、CF Type1というインターフェイスは付属のPCカードアダプタを使うことにより、どちらでにも対応できるからだ。

 もちろん、ノートPCやPDAを購入し、モバイル環境で利用したいという一般的なユーザーにもおすすめできる。これらのモバイル機器を1台しか持っていないユーザーでも将来的にPDAやノートPCを追加購入したときにすぐに利用できる可能性が高いからだ。また、「C@rdH"64 petit」(CFE-01)及び「MC-P300」のレビューでも解説したように、DDIポケットのエリアは現時点でPHSのネットワークとして最も充実しており、携帯電話と比べても遜色がないほど拡大していることもプラス要因だ。


 ただ、ここで注意したのがRH2000Pをどの契約で利用するかという点だ。AirH"には「つなぎ放題コース」「ネット25」の2つのコースが用意されており、月額料金は5800円となっている。月額5800円が高いか安いかは読者のみなさんの判断に任せるが、通常契約の2倍近い金額であることは確かだ。また、つなぎ放題コースは今のところ、最大32kbpsパケット通信での接続になっており、ノートPCで通常のホームページを閲覧するには少々、我慢が必要になる。しかし、RH2000PはAirH"対応製品であるものの、データパックなどの通常契約をすることも可能だ。

 これらの点を考慮すれば、利用頻度に合わせて、料金コースを随時、変更するのが最も賢い使い方ということになる。たとえば、どれだけ使うのかがわからないユーザーは、とりあえずデータパックやデータパックminiで契約しておき、接続時間が増えた段階でネット25などに移行するわけだ。あらかじめ利用頻度が見込めるユーザーはつなぎ放題とネット25の分岐点である「月に25時間」を超えるか否かで判断する。ただし、パフォーマンスを重視するのであれば、最大64kbpsでのデータ通信が可能なネット25がおすすめだ。

 RH2000Pは対応するハードウェアやOSが非常に幅広く、DDIポケットの料金コースもユーザーのニーズに合わせ、きめ細かく設定されている。これをどう活かすかはユーザー次第ということでもある。上手に使えば、今までと違った快適なモバイル環境を実現できることは間違いない。

 最後に、RH2000Pから見える発展性について、少し触れておきたい。RH2000PをはじめとするCFサイズのデータ通信カード一体型PHSは非常にコンパクトだが、ノートPCやPDA以外にも応用できないものだろうか。たとえば、定点観測用カメラなどに組み込み、ビルの屋上や託児所などから画像を随時、サーバにアップロードして閲覧するといったことに使えそうだ。もちろん、画像だけでなく、音声やデータなどを定期的に送受信するといった用途にも使えるだろう。つまり、RH2000PなどのCFサイズのデータ通信カード一体型PHSをひとつの通信デバイスとして捉え、それを核にしたハードウェアを実現するわけだ。NTTドコモもeggyとP-in m@ster、P-in Comp@ctという組み合わせでも実現しているが、RH2000PならAirH"の料金コースが使えるため、こうしたソリューションも開発しやすい。もしかしたら、RH2000Pは我々のようなパーソナルユーザーだけでなく、専用機器を開発するメーカーにとっても大きな可能性を製品と言えるのかもしれない。


・ RH2000Pニュースリリース(TDK)
  http://www.tdk.co.jp/tjaah01/aah27200.htm
・ RH2000P製品情報(TDK)
  http://www.tdk.co.jp/tjbda01/bda12100.htm
・ RH2000P製品情報(DDIポケット)
  http://www.ddipocket.co.jp/syohin/i_rh2000p.html

AirH"対応のCFカード型PHS「AirH" Card petit」、10月4日発売
DDIポケットのAirH"、つなぎ放題コースの基本料が月額5800円に
DDIポケット、パケット通信「AirH"」で定額料金プラン
「AirH" Card」か「C@rdH"64 petit」か、それが問題だ


(法林岳之)
2001/10/04 15:40

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