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P-in m@sterでモバイルのマスターを目指す
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P-inシリーズの最新モデル
サブノートPCやPDAに最適なデータ通信カード一体型PHSとして、高い人気を得ているNTTドコモの「P-in」シリーズ。その最新モデル「P-in m@ster」が発売された。従来の「P-in Comp@ct」の機能に加え、PDCデジタル携帯電話及びDoPa対応のデータ通信カードの機能も搭載されている。筆者も早速、機種変更で入手できたので、レポートをお送りしよう。
同じP-inの名前は冠せられているが……
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NTTドコモ『P-in m@ster』。サイズ:42.8(W)×6(H)×51.2(D)mm、17g
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モバイルコンピューティングに適した通信インフラストラクチャとして、定着しつつあるPHS。次世代携帯電話のサービスも控えているが、通信コストやエリアといった実質的な面を見ると、PHSに対する高い支持はまだまだ続きそうな気配だ。
そんなPHS市場において、昨年来、単一機種ではおそらくトップを快走していると言われているのがNTTドコモのデータ通信カード一体型PHS「P-in Comp@ct」だ。CF Type2準拠というサイズにPHSの機能を凝縮し、PDAからサブノートPCなどに幅広く利用されている。なかでも昨年末に登場した「ザウルス MI-E1」や「GFORT」、今春発売された「iPAQ」などと組み合わせて利用するユーザーが急増している。
今回紹介する「P-in m@ster」は、P-in Comp@ctの機能をさらに拡張したデータ通信カード一体型PHSで、上位モデル的な位置付けになる。P-in Comp@ctの開発元が松下通信工業であるのに対し、P-in m@sterの開発はシャープが担当している。シャープはP-inシリーズの初代モデルである「Mobile Card P-in」を開発しており、今回のP-in m@sterはその設計思想を受け継いだ機能構成となっている。同じ「P-in」の名は冠せられているが、P-in m@sterとP-in Comp@ctは内部的なものも含め、異なる系統の製品と見た方がいいだろう。
サイズや重量はほぼ同等
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コンパックのiPAQのモバイルジャケットに装着。CF Type2準拠なので、各Pocket PCに装着が可能
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P-in Comp@ctに「続く」、もしくは「代わる」データ通信カード一体型PHSとして登場したP-in m@sterだが、製品の細かいスペックなどについてはいつものように、NTTドコモやシャープの製品情報ページを参考にしていただきたい。P-in Comp@ctとの違いを中心にレポートしてみよう。
まず、データ通信モードだが、NTTドコモの従来のPHS同様、PIAFS 2.0対応64kbpsをサポートする。もちろん、PIAFS 1.0/32kbpsでの接続も可能だ。PIAFS 2.0/64kbpsはDDIポケットが採用するPIAFS 2.1/64kbpsと違い、常に64kbpsで接続するように発信する。基地局に空きがなければ、32kbpsで再接続を試みる。ハンドオーバー時に、次の基地局で空きがないときは切断されるが、常に64kbpsで接続したいというユーザーに適している。
従来のP-in Comp@ctはこのPIAFS 2.0/64kbpsのみをサポートしていたが、P-in m@sterはPDCデジタル携帯電話の回線交換及びパケット通信(DoPa)のデータ通信カード機能も搭載しており、これがP-in m@sterの特長のひとつとなっている。つまり、普段はP-in m@sterに内蔵されたPHSで発信しておき、PHSが使えないエリアに移動したときは専用ケーブルで携帯電話と接続し、プロバイダなどに接続できるというわけだ。ちなみに、携帯電話での接続は、回線交換なら9.6kbps、DoPa対応なら最大28.8kbpsでの接続が可能だ。ただし、DoPaについては、28,8kbps接続ができるのは3xxシリーズに限られており、209i/210iシリーズと接続したときは最大9.6kbpsでの接続になる。
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アンテナ格納部の内側には、携帯電話接続ケーブルやVOICEアダプタを接続するためのコネクタが備えられている。
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外見についてはアンテナとLED部分を除き、ほとんど違いがない。サイズも奥行でわずか2mm程度の違いで、手に持った感触やPDAなどに装着した状態もほとんど変わりない。P-in m@sterがP-in Comp@ctと外見上で最も異なるのはアンテナ部分の処理だ。P-in Comp@ctはアンテナ部分の根元が斜めに取り付けられていたため、回転させるとアンテナが垂直に立つようになっていたが、P-in m@sterはアンテナ部分の根元が球体の先に取り付けられているため、どの向きでも自由に立てることが可能だ。
また、アンテナを格納する部分の内側には、前述の携帯電話用データ通信ケーブルを接続するためのコネクタが備えられている。ちなみに、このコネクタにはオプションで提供される「VOICEアダプタ」と「イヤホンマイク」を接続することにより、通話をすることも可能だ。ただ、筆者が出向いた数軒のドコモショップでは携帯電話と接続する「カード接続ケーブルS3 for 携帯電話/ドッチーモ」の在庫はあるものの、「VOICEアダプタS6001」と「NTT DoCoMoイヤホンマイクセット」の在庫がなく、入手することはできなかった。
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「PCカードアダプタS6002」と「カード接続ケーブルS3 for 携帯電話/ドッチーモ」で携帯電話用データ通信カードに早変わり
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こうしたオプション類については、以前、sigmarionのPC接続ケーブルを購入するときにも随分、苦労した記憶があるが、どうもNTTドコモはモバイル製品のオプション品の品揃えが今ひとつ良くない。販売店が在庫を抱えてしまうというリスクはあるだろうが、せめて事業者系列の販売店では揃えるようにしてもらいたいところだ。
また、同じオプション品として、ノートPCのPCカードスロットなどに装着するための「PCカードアダプタS6002」も販売されている。同様のアダプタはP-in Comp@ctにも用意されていたが、P-in m@ster用のものはP-in m@sterが3.3/5V両対応となっているため、アダプタのエッジ部分の形状が両対応のものに変更されている。
幅広い環境に対応したユーティリティをいち早く提供
一方、ソフトウェアについては、Windows 95/98/Me/2000対応のダイヤラーソフトとモデム定義ファイルを収録したフロッピーディスクが同梱され、Windows CE対応のダイヤラーソフトも収録されている。ダイヤラーソフトはMobile Card P-in用に似たデザインのもので、音声通話にも利用できるようにダイヤルボタンが並んでいる。きゃらトークやきゃらメールの設定、ホームアンテナへの登録などもできるようになっている。
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Windows用ダイヤラーソフト。基本デザインはMobile Card P-inのものとよく似ている
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Windows用ダイヤラーソフトの環境設定画面。基本的にできることは他のOS用ダイヤラーと同じ
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Pocket PC用ダイヤラーソフト。音声通話のためのダイヤルだけでなく、きゃらトークやきゃらメールの送信も可能
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ザウルスMI-E1/L1にも装着が可能。アンテナ部分は360度回転する
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ただ、フロッピーディスクで提供されるというスタイルには、少々疑問が残らなくもない。P-in m@sterは商品の性格上、ミニ/サブノートPCやPDAでの利用が中心になるが、ノートPC全般で見てもFDDを内蔵、もしくは外付けドライブを同梱する製品は少なくなっており、ユーザーによってはFDDを持っていないケースも十分考えられる。そのため、P-in m@sterを購入したのはいいが、ダイヤラーソフトやモデム定義ファイルをコピーするために、FDDを借りてくるなどの手順を踏まなければならないケースも考えられる。もちろん、NTTドコモのホームページからダウンロードすればいいのだろうが、そろそろこうした製品にFDDでユーティリティ類を提供するのは再考しなければならない時期ではないだろうか。
開発元がシャープということもあり、ザウルスMI-E1/L1に対応したユーティリティとドライバソフトもSharp Space Townでいち早く公開されている。ドライバをインストールすると、接続機器の項目として「P-in m@ster 64K」「P-in m@ster 32K」「P-in m@ster PDC」「P-in m@ster DoPa」が追加され、「P-inカード設定」もP-in m@sterに対応したものがインストールされる。ちなみに、「P-inカード設定」はこのバージョンからホームアンテナの登録と削除に対応している。
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ザウルスMI-E1/L1用「P-in設定」は新たにホームアンテナの登録機能が追加されている。音声通話も対応して欲しいなぁ(笑)
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ザウルスMI-E1/L1にドライバソフトをインストールすると、接続機器にP-in m@ster用のものが追加される
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NTTドコモユーザーのための進化
さて、最後に「買い」の診断をしてみよう。昨年の発売以来、PHSとしては異例の大ヒットとなったP-in Comp@ctだが、P-in m@sterはこれを上回る機能を搭載している。携帯電話のデータ通信カード機能、音声通話機能を追加したことが最大のセールスポイントだが、これはNTTドコモの携帯電話を持つユーザーがより買いやすい環境が提供したことを意味する。NTTドコモではファミリー割引を併用することにより、料金面でPHSを買いやすくしているが、P-in m@sterでは併用する携帯電話との接続が考慮されている上、携帯電話がエリア外のときにPHS機能で通話ができるという隠されたメリットもある。ただ、インターネットのコンテンツが充実し、メールなども添付ファイルが増えてきた現状において、携帯電話でのインターネット接続がどれだけアドバンテージがあるのかは冷静に判断する必要がありそうだ。
まず、新規にデータ通信カード一体型PHSを購入するユーザーについてだが、これは非常に判断が難しい。以前にも触れたように、PHSの64kbpsデータ通信は一般的にDDIポケットの方がエリア的なアドバンテージがあるとされており、PIAFS 2.1の方がハンドオーバーなどでも継続して通信ができるというメリットもある。実効速度に大きな差がないということを考えれば、P-in m@sterでなければならない理由はあまり多くないだろう。もし、すでに携帯電話を所有し、それがNTTドコモのもので、ファミリー割引を利用できるというのであれば、P-in m@sterを「買い」と言えるだろうが、NTTドコモ以外の携帯電話を所有するユーザーやデータ通信のみが目的であれば、DDIポケットのC@rdH"64petitや間もなく登場する予定のTDKのAirH"端末などと比較してからでも遅くはない。
一方、P-in Comp@ctからの買い換えについては、値段次第というのが正直なところだ。P-in m@sterは携帯電話のデータ通信カード機能と音声通話機能をサポートしているが、データ通信のパフォーマンスそのものに差はなく、すぐに買い換えなければならない明確なメリットはそれほど大きくない。P-in Comp@ctの購入から一定期間が経過し、手頃な価格で購入できるというのであれば「買い」だが、それ以外のユーザーは一定期間の経過を待つか、携帯電話のデータ通信カード機能や音声通話機能をどれだけ利用するかで判断するしかないだろう。
今後、P-in m@sterはNTTドコモのPHS主力商品になることは間違いないだろうが、より幅広いモバイルユーザーに受け入れられるようにするには、NTTドコモのPHS網やサービス面での強化もさらに必要になるだろう。
・ P-in m@sterニュースリリース(NTTドコモ)
http://www.nttdocomo.co.jp/new/contents/01/whatnew0724.html
・ P-in m@ster商品情報(NTTドコモ)
http://www.nttdocomo.co.jp/products/phs/lineup/p-in_master/
・ P-in m@ster用「ダイヤラーソフト」ダウンロードページ(NTTドコモ)
http://www.nttdocomo.co.jp/products/phs/mobile/a-pinmaster.html
・ 「ザウルスMI-E1/L1用ドライバ」ダウンロードページ(シャープ)
http://zaurus.spacetown.ne.jp/kyotsu/update/p-in_master/pmas.asp
・ ドコモ、携帯電話接続・音声通話可能なCFカード型PHS
・ 「AirH" Card」か「C@rdH"64 petit」か、それが問題だ
・ サブノート買ったら『P-in Comp@ct』でモバイル
(法林岳之)
2001/08/09 00:00
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