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BeatCarrotとSDAIRでモバイルオーディオ
法林岳之 法林岳之
1963年神奈川県出身。パソコンから携帯電話、メール端末、PDAまで、幅広い製品の試用レポートや解説記事を執筆。特に、通信関連を得意とする。「できるWindows XP基本編」「できるADSL フレッツ・ADSL対応」「できるZaurus」「できるVAIO Windows XP版」など、著書も多数。ホームページはPC用の他、各ケータイに対応。iモード用EZweb用J-スカイ用、H"LINK用(//www.hourin.com/H/index.txt)を提供。「ケータイならオレに聞け!」(impress TV)も配信中。


PHSを活かした音楽配信サービス

 昨年秋にデビューしたDDIポケットの「feel H"」と言えば、鮮明な着信メロディが印象的だが、もうひとつの特長として、いち早くPHSの特性を活かした「音楽配信サービス」を開始したことが挙げられる。4月には新方式「SDAIR」に対応した端末が発売され、新サービスも開始されている。端末とモバイルオーディオプレーヤを触ることができたので、そのレポートをお送りしよう。


音楽配信サービスへの期待

 東芝『Beat Carrot DL-B01』。サイズ:41(W)×127(H)×19.8(D)mm、81g。ブラック(写真)、ピンクをラインアップ。
 「いつでも好きなときに音楽が聴ける」そんなコンセプトで開発されたソニーのウォークマンが発売され、すでに20年以上が経過する。おそらく30代半ば以上の読者は、ウォークマンが登場したばかりの頃のインパクトを覚えているはずだ。その後、メディアはカセットテープからCD、MDへと進化し、ここ1~2年はCDの音楽データをMP3形式などに圧縮し、メモリに保存して再生する「シリコンオーディオ」が普及してきている。MP3形式の音楽データをCD-RやHDDなどに記録して再生する楽しみ方も人気が高い。

 こうしたモバイルオーディオ環境は、いずれも音楽CDから何らかの加工を経て、実現できるものだが、インターネット上のサーバなどから直接、音楽データをダウンロードして再生しようというのが「音楽配信サービス」だ。音楽の入手手段そのものを変えてしまおうという考えだ。音楽配信サービスにはいろいろなスタイルのものがあるが、いわゆる「ケータイ関連」ではPHSの高速通信を活かしたサービスに注目が集まっている。DDIポケットがfeel H"と同時にスタートさせた「Sound Market」、NTTドコモが提供する「M-stage music」の2つだ。

 今回紹介する東芝製「Beat Carrot DL-B01」は、DDIポケットが提供するSound Marketに対応するPHSだ。ただ、コンテンツの提供方式は三洋電機製「RZ-J90」や「RZ-J91」などで採用されていた「ケータイ de ミュージック」ではなく、SDメモリーカードにマルチメディアコンテンツを配信する「SDAIR」という新しい方式を採用している。また、DL-B01の発売、SDAIRによるSound Marketでの配信と同時に、東芝製のコンパクトなモバイルオーディオプレーヤ「MEA212AS」「MEA211AS」も発売されている。今回はこの2製品を組み合わせることにより、PHSによる音楽配信サービスの可能性について考えてみよう。


大容量メモリを搭載した東芝端末

 液晶ディスプレイは1.6インチのカラー液晶を採用。ホワイトバックライトで視認性は良好。
 DL-B01の細かいスペックについては、DDIポケットや東芝の製品情報ページ、すでに掲載されている「ケータイ新製品SHOW CASE」などを参考にしていただきたい。ここでは実機を触った印象などについて紹介しよう。

 まず、本体は従来の東芝製PHS同様、ストレートタイプのボディを採用している。東芝はすでにfeelH"に対応した「Mega Carrot DL-M10」という機種を販売しているが、基本的なデザインなどはこれを継承しており、ボタン配列などもほぼ同等だ。液晶ディスプレイは1.6インチの半透過型カラー液晶だが、ホワイトバックライトを採用しているため、feel H"端末の中では比較的明るく、色味もハッキリしている。コントラストも17段階に調整できるため、自分の見やすい状態に設定することもできる。サイズは実測値で15×33.5mmとなっており、RZ-J90などに比べると狭い。

 ボディはストレートタイプで、スリムで細長い印象を受ける。ボタンは中央に方向キーをレイアウトし、奥方向がH"キー、右方向が[F]キーという割り当てになっている。液晶ディスプレイ下には3つのソフトキーがレイアウトされており、場面ごとに割り当てられる機能が変更される。方向キーの操作性はやや軽めだが、上下左右方向の操作は比較的やりやすい。逆に、奥方向への操作は若干の慣れが必要だ。H" LINKのコンテンツを閲覧しているときなど、頻繁にH"キーを操作するが、最初の内は一発で押せないこともある。親指で方向キー全体押さえるような感覚で操作すると確実なようだ。

 機能面では大容量メモリが特徴的だ。DDIポケット向けの東芝端末は、代々、メモリ容量が多いことをセールスポイントのひとつとしてきたが、DL-B01も従来のDL-M10同様、EメールやDXメールを最大1000件まで保存することができる(1通あたり120文字の場合)。ダウンロードした着信メロディや壁紙、小型カメラ「Treva」で撮影した画像もプライベートBOXと呼ばれるエリアに保存できる。ただ、実際に着信メロディとして割り当てられるのは10件に限られているため、標準の着信メロディに上書きすることになる。メールの自動受信には対応している。

 また、東芝ではH" LINK対応の専用サイトを開設しており、壁紙や着信メロディ、準動画なども配信している。


SDメモリーカードに対応したモバイルオーディオプレーヤ

 東芝『モバイルオーディオプレーヤ MEA212AS』。サイズ:52(W)×53(H)×13.5(D)mm、41g(単4乾電池を含む)。32MBメモリを内蔵。
 DL-B01と同時に発売されたのがモバイルオーディオプレーヤ「MEA212AS」「MEA211AS」だ。ちなみに、MEA212ASとMEA211ASの違いは、MEA212ASにfeel H"と接続するインターフェイスケーブルが付属している点だ。

 モバイルオーディオプレーヤはZippoのライター程度のサイズしかないコンパクトなもので、本体内に32MBのメモリを搭載し、単4アルカリ乾電池で連続4時間の再生が可能だ。SDメモリーカードも装着することができるため、64MBのSDメモリーカードを装着すれば96MB、間もなく発売される128MBのSDメモリーカードを装着すれば160MBのエリアにダウンロードした音楽データを保存できる。データ圧縮方式はBSデジタル放送などにも利用されているAAC(MPEG 2 Advanced Audio Coding)、PCなどで広く利用されているMP3の2方式に対応する。

 モバイルオーディオプレーヤ本体にはイヤホンマイク端子、SDカードスロット、その他のスイッチ類が埋め込まれており、液晶ディスプレイも備える。液晶ディスプレイには再生中の曲情報やモバイルオーディオプレーヤの設定などが表示される。


 SDメモリーカードスロットを備える。近日発売の128MBのSDメモリーカードを挿せば、内蔵メモリと合わせて160MBになる。  DL-B01を専用ケーブルでMEA212ASに接続。ケーブルは比較的短め。

 このモバイルオーディオプレーヤをDL-B01に接続し、DDIポケットのSoundMarketに接続すると、SDAIR方式の音楽をダウンロードすることができる。ちなみに、SoundMarketで提供される音楽のビットレートは128kbpsのため、本体メモリのみで約25分までの音楽データを保存することができる。SoundMarketへの接続はH" LINKを使っているときと同じ感覚で、非常にわかりやすい。SDAIR方式に対応した音楽データはまだ少ないが、今後は「ケータイ de ミュージック」と両方式の音楽データが同じように配信される予定だ。

 SoundMarketからのダウンロード時間は曲の長さにもよって異なるが、およそ10分程度を必要とする。ただし、ダウンロード中はその他の作業をすることができない。途中で切断された場合でも「再接続」のメニューを選んで、ダウンロードを再開することもできる。

 モバイルオーディオプレーヤのもうひとつの特長は、PCのUSBインターフェイスに接続することにより、Windows 98/Me/2000が動作するPCの外付けSDメモリーカードリーダとして使える点だ。今回の試用では試すことができなかったが、モバイルオーディオプレーヤに標準で付属する「オーディオマネージャV2.1」を使うことにより、ダウンロードした音楽をPCにバックアップ(移動)したり、音楽CDからAAC形式に取り込んで、モバイルオーディオプレーヤに転送するといったこともできる。


コンテンツとコストがカギ

 PHSや次世代携帯電話のように、高速な通信が可能な環境では、こうした音楽配信サービスの普及が期待されている。今回紹介したDL-B01とモバイルオーディオプレーヤという組み合わせもそのひとつだが、やはり、「買い」かどうかのカギを握るのはコンテンツとコストだろう。

 コンテンツについてはSoundMarket、M-stage musicともに、少しずつ増えているという印象で、なかなかキラーとなるコンテンツ(というより曲)が登場しない。今回紹介したSDAIRには対応していないが、SoundMarketではエイベックス所属のアーティストの楽曲の配信が開始されており、人気を集めているそうだ。こうしたメジャーなコンテンツが登場することは非常に楽しみだが、それでもまだ普及の第一歩のレベルでしかない。音楽業界は素人なので詳しいことはわからないが、メジャーなアーティストが音楽配信サービスのみで特定の楽曲を提供するといったことでも起きない限り、なかなか爆発的な普及は難しいのではないだろうか。ただ、世の中にある音楽がすべてCD化されているわけでもないので、CD化できないような楽曲を音楽配信サービスでダウンロードできるというのは面白いかもしれない。あるいは、音楽配信サービスでしか手に入れられない付加価値も欲しいところだ。

 一方、コストについてだが、SoundMarketでは1曲あたり、100~300円程度で楽曲を販売している。これに通信費を加算したものが1曲あたりのコストということになるのだが、概算では1曲あたり500円以下で購入できることになる。CDシングルに比べれば安価だが、CDシングルにはカップリングされた曲やカラオケなどが収録されているため、実質的には音楽配信サービスの方が割高になってしまうという見方もできる。

 また、音楽配信サービスはCDという現物を購入するわけではなく、手元に「ブツ」が残らない不安感がある。将来的に、購入した曲を他の機器に持っていけないとなると、購入を躊躇してしまいそうだが、モバイルオーディオプレーヤはSDメモリーカードリーダとしても使えるため、ダウンロードした楽曲をPCに保存しておき、他のSDオーディオフォーマットに対応した機器で再生することもできる。つまり、購入した曲を捨てなければならない可能性は他の環境に比べ、多少は低いことになる。

 使い勝手については、まだ改良の余地が残されるだろう。筆者はRZ-J90とRZ-RM1(リモコンタイププレーヤー)を所有しているが、RZ-RM1のセキュアMMCに保存したデータはRZ-J90に接続しなければ再生できないため、ヘッドホンを持ち歩くケースはかなり少なくなっている。auのC404Sのヘッドホンも同様の理由で利用するケースが少ない。その点、DL-B01とモバイルオーディオプレーヤという組み合わせは、それぞれを切り離して利用できるため、多少なりとも実用性は高い。外出先でSoundMarketからダウンロードするには専用インターフェイスケーブルを持ち歩かなければならないが、これがBluetoothなどによって無線化されれば、もう少し使い勝手も良くなるだろう。


 ただ、兎にも角にも、こうしたわずらわしさを乗り越えてでもダウンロードしたくなるようなコンテンツが必須というのが現時点での素直な感想だ。次世代携帯電話も含め、今後、音楽や画像の配信サービスがどのように進化していくのかを注目していきたい。



・ 「SDAIR対応音楽配信サービス」ニュースリリース(DDIポケット)
  http://www.ddipocket.co.jp/news/h130326.html
・ 「DL-B01及びモバイルオーディオプレーヤ」ニュースリリース(東芝)
  http://www.toshiba.co.jp/about/press/2001_03/pr_j2601.htm
・ DL-B01商品情報(DDIポケット)
  http://www.ddipocket.co.jp/syohin/dl-b01.html
・ DL-B01商品情報(TOSHIBA User Club Site)
  http://www2.t-ucs.co.jp/h/b01/
・ 「モバイルオーディオプレーヤ」商品情報(東芝)
  http://www2.toshiba.co.jp/mobileav/products/audio_212as/

DL-B01(東芝)
東芝、新しい音楽配信サービスに対応したfeel H"端末
DDIポケットの音楽配信サービスが新方式「SDAIR」に対応
東芝、DDIポケットの音楽配信対応のSDポータブルオーディオ


(法林岳之)
2001/04/25 00:00

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