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スピードセレクターでワイド画面を楽しく使える「D902iS」
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NTTドコモ/三菱電機『D902iS』。サイズ:49×110×19.9mm、124g。サファイア(写真)、プラチナ、ストーン、マゼンタをラインナップ
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D901i以来、スライド式ボディを進化させてきたDシリーズ。その最新モデルとなるのがD902iSだ。昨年末に発売され、好評を得たD902iを継承しながら、操作系にスピードセレクターを搭載するなど、新しい使いやすさを目指して開発されたモデルだ。筆者も実機を購入したので、レポートをお送りしよう。
【この端末のチェックポイント】
- 回転操作対応のスピードセレクター
- ワンプッシュオープンのスライド式ボディ
- 基本機能をチェック
- こんなユーザーにおすすめ
■ 回転操作対応のスピードセレクター
折りたたみデザイン全盛だった数年前に比べ、カメラ付きケータイや音楽再生機能の登場などもあり、少しずつケータイの形状にバリエーションが増えている。なかでもスライド式は採用例が増えてきており、折りたたみデザインの発展形である二軸回転式やストレート型と並んで、ユーザーからの注目度も高い。
今回紹介するD902iSは2005年1月に登場したD901i以来、FOMA Dシリーズではおなじみとなったスライド式ボディを採用した端末だ。FOMA DシリーズとしてはMUSIC PORTER Xも含め、5機種目のスライド式ということになるが、モデルが進むごとに、少しずつ完成度を高めてきており、昨年末に発売されたD902iではスライド式ながら、19.5mmというスリムボディにまとめることで、市場でもかなり注目を集めた。今回のD902iSは基本的に昨年末のD902iをベースにしたもので、ボディの厚みが19.9mmに増したものの、ハードウェア的な変更点はそれほど多くない。
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回転機構を備えた方向キー「スピードセレクター」を採用。中央の決定ボタン部分は操作時などに光る
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待受画面で[終了]キーを押すと、スピードセレクターの上下左右方向の操作ガイドを表示される
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外見上、もっとも特徴的な変更点と言えるのは、液晶ディスプレイ下に装備された「スピードセレクター」だ。スピードセレクターは回転機構を備えた方向キーで、方向キー部分をクルクルと回すことにより、画面上のカーソルを移動したり、スクロールさせることができる。こうした回転機構のデバイスとしては、SO506iCに搭載されたディスクジョグがあるが、ディスクジョグは方向操作をする部分と回転動作部分が物理的に分かれていたのに対し、スピードセレクターは方向キー部分がそのまま回転する構造になっており、スピードセレクターの上下左右を押したり、回転させることで、カーソル移動やスクロールなどの操作ができる。サイズ的にもコンパクトで、液晶ディスプレイ下の狭いスペースに収められている。
実際の操作感についてはある程度、慣れと使い分けが必要だ。たとえば、コンテンツや長文メールの画面など、眺めるようにスクロールさせたいときには回転操作を使い、細かいカーソルの移動は上下左右を押すといった具合いだ。筆者も当初はスムーズに操作できなかったが、無理にスピードセレクターを回転させて操作するのではなく、必要に応じて、使うようにすることで、少しずつ慣れることができた。ちなみに、スピードセレクター回転時のカーソルなどの移動方向は、時計回りと反時計回りから選ぶことができ、回転操作そのものをOFFに設定することも可能だ。
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D902iに引き続き、ワンプッシュオープンのスライド式ボディを採用。ボタン部とディスプレイ部の段差はD902iとほぼ同じ
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スピードセレクターの動作は設定が可能。移動方向だけでなく、待受画面時に回して、電話帳やメニュー画面を呼び出すことも可能
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また、スピードセレクターは待受画面で回転操作をしたとき、機能の呼び出しや待受画面のランダム表示が可能だ。機能呼び出しについては、MENU画面、電話帳、スケジュール帳のいずれかを呼び出すことができる。D902iSは従来同様、左側面のボタンを押すことで、スライドボディを開くことができるワンプッシュオープン機構を採用しており、スライドオープン時の連動操作が可能だが、スピードセレクターの待受起動をスケジュールに設定し、スライド編集設定のスケジュールをONに設定しておけば、待受画面でスピードセレクターを回転させて、スケジュール帳を起動し、ワンプッシュオープンでボディを開くことで、スケジュールの入力画面に移行といった使い方もできる。ユーザーの好みにもよるだろうが、ただ回すだけのデバイスではなく、他の機能との連動も考えられている点は評価できる。欲を言えば、他の機能でも連動操作ができるようにして欲しいところだ。
待受画面のランダム表示はD902iでも15秒、1分、15分、1時間、日替り、スライドオープンのタイミングで切り替えられるように設定できたが、D902iSではスピードセレクターを回す度に切り替える設定も可能だ。ただ、このランダムイメージ設定で対象となるファイルは待受画面として表示できるサイズのGIF及びJPEG形式に限られており、フォルダ単位で設定しなければならないため、今ひとつ使いにくい印象も残った。
ちなみに、従来のD902iでは方向キーの上下左右部分に[データフォルダ]や[iモード]、発着信履歴を表わす印刷があったが、スピードセレクターになったことで、印刷は消えている。その代わり、待受画面で[終了]ボタンを押すと、画面上にガイドが表示されるしくみとなっている。
■ ワンプッシュオープン&スライド式ボディ
D902iSのスペック面でもっとも特徴的なのは、D902iに続いて採用された2.8インチのワイドQVGA液晶ディスプレイだろう。通常デザインの端末ではここ数年、QVGAサイズが主流だったが、一昨年末、昨年あたりからQVGAサイズの長辺を広くしたワイドQVGAを搭載する端末がいくつか登場し、今年のハイエンドモデルではオーバーQVGAが主流になりつつある。D902iSの液晶ディスプレイは240×400ドット表示が可能なワイドQVGAだが、解像度だけでなく、物理的なサイズも大きい。
D902iSではワイドQVGAディスプレイを活かすため、いくつかの新しい試みが採用されている。まず、他の90Xiシリーズに続き、フルブラウザが搭載された。他キャリアの例だが、W41CAやW41Hなどを見てもわかるように、フルブラウザは液晶ディスプレイが物理的に大きく、解像度も高い方が有利であり、D902iSは他の902iSシリーズのフルブラウザよりもアドバンテージがあると言えるだろう。また、D902iSの縦長の画面を活かすため、画面をスクロールするときに、ページ全体のどのあたりを表示しているのがわかる「ビューポジション表示」も採用している。スピードセレクターを回しながらページをブラウズするのも快適なのだが、如何せん、iモードのフルブラウザはパケット通信料定額制のパケ・ホーダイの対象外なので、利用には十分に注意する必要がある。
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Motion Smoothy2の変換画面。本来は左右上の黒い部分に映像が表示されるが、キャプチャソフトの関係で写っていない
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Motion Smoothy2で変換した動画をD902iSで再生。縦長表示では再生画面が狭いが、再生時間、音量、操作ガイドなどが表示される
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端末を横向きにして再生する「横再生」。画面の左右に背景やボタンのガイドが表示されているが、切れている部分はない
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全画面で再生ができる「ワイド再生」。元の映像がQVGAサイズのため、上下が切れてしまっている。もう少し上手に拡大できないだろうか
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また、ワイドQVGAサイズで映像を楽しむため、Windows XPで動作する動画変換ソフト「Motion Smoothy2」が提供されている。Motion Smoothy2はAVI、WMV、MPEG-1、MPEG-2、QuickTime(mov)形式の動画ファイルを読み込み、D902iSで再生可能なMP4形式に変換できるアプリケーションだ。D902iSのUSB接続を「miniSDモード」に切り替えれば、ファイル変換、ファイル名変更、miniSDカードへの書き込みを一括で実行できる。初心者にもある程度、使いやすい環境が用意されているのはうれしいが、実際に動画を再生してみると、ワイド画面であるがゆえの不満も残った。たとえば、生成されるファイルは縦240×横320ドットのため、横表示で再生すると、画面の左右(端末を縦に持ったときの上下)に背景が表示され、ワイド表示では動画の上下が切れるような表示になってしまう。切り替えは[*]キーで、「通常再生」「横再生」「ワイド再生」の順に切り替えられるが、画面やメニュー内にはガイドやヘルプが表示されないため、取扱説明書を読まなければ、わからない。手軽さを狙ったのが理解できるが、アプリケーション側も端末側もわかりやすくするための工夫が欲しいところだ。
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右側面に装備されたシャッターボタンの長押しで、オンリービューのON/OFFを切り替えられる
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同じメールで、オンリービューをONした画面(左半分)とOFFにした画面(右半分)を合成してみた。これくらいコントラストが抑えられるため、隣からは見えなくなるというわけだ
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さらに、大画面で視認性の良い液晶ディスプレイを搭載しているということもあり、プライバシー保護のために、のぞき見防止機能「オンリービュー」が搭載されている。ディスプレイのプライバシー保護機能としては、SH902iSやSH902i、DOLCEに搭載されたベールビュー液晶が知られているが、D902iSのオンリービューは液晶ディスプレイのコントラストを下げることで、文字の視野角を狭くしている。そのため、真正面から見ている自分自身も多少見えにくくなるというデメリットはあるが、特殊な液晶ディスプレイを投資しなくていいため、コストダウンにはなるようだ。オンリービューは本体右側面の[シャッター]ボタンの長押しで切り替えられる。ただ、オンリービューが利用できるのはメール/SMSの作成画面や詳細表示、署名編集、メールテンプレートなどに限られており、iモードコンテンツ閲覧などでは利用できない。
■ 基本機能もチェック
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メニュー画面はFlashのものが標準で設定されている。見た目は面白いが、今ひとつレスポンスが良くない
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続いて、基本機能もチェックしてみよう。基本的なユーザーインターフェイスはD902iまでのものを継承しており、メニュー画面などは同じSymbian OSを採用しているF902iSなどと似ている。メニュー画面はFlashによるアイコン表示が標準となっており、各ボディカラーに合わせた背景やメニュー画面が選べるトータルコーディネイト設定が利用できる。ただ、Flashのアニメーションの影響もあるのだろうが、今ひとつレスポンスが良くないのは気になる。大きな文字で表示するシンプルメニューも選ぶことができ、ノーマルのメニュー画面で[メール]ボタンを押すことで切り替えられる。
メールはフォルダによる管理、メールアドレスや題名、メモリ番号、グループなどによる自動振り分けにも対応する。ただ、振り分け条件の設定は送受信メールの画面でメールアドレスや題名をコピーし、振り分け条件設定画面に移行して、コピーした内容を貼り付けて設定するという手順を踏まなければならない。このあたりの使い勝手がほとんど進歩していないのは残念な点だ。
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文字を大きく表示したシンプルメニュー。通常メニューからワンタッチで切り替えられるのも便利だ
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メールはメールアドレスや題名などによる自動振り分けに対応。ただし、メールアドレスは直接入力か、電話帳からの入力のみ
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ICカードロックの生体認証はボイス認証を採用。暗証番号と組み合わせて利用するが、暗証番号のみの利用も可能
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おサイフケータイについては、ICカードロックが搭載されており、今回はすでにモバイルSuicaへの対応も確認されている。FOMA new9シリーズが対応となった生体認証についてだが、D902iSは音声による「ボイス認証」を採用している。実際の利用では暗証番号を単独で利用するか、ボイス認証と暗証番号の両方を組み合わせて利用する仕様になっている。おサイフケータイを使うときに声を出して認証するというのは気恥ずかしいが、通話をする振りで認証をすれば、気にならないという見方もできる。ちなみに、ICカードロックはスピードセレクターの右方向を長押しすることで、ON/OFFを切り替えることができ、一定時間が経過すると、自動的にICカードロックの状態に切り替える「ICカードオートロック」の設定も可能だ。
日本語入力も若干、改良が加えられ、ATOKのダウンロード辞書、カナ英数のワンタッチ変換、[絵・記号]キーからの絵文字入力などの機能が新たに追加されている。ダウンロード辞書については、三菱電機のiモード公式サイト「My D-style」で配布されており、最大10件までの辞書を端末に保存し、5件までの辞書を利用することができる。また、電子辞典機能として、国語辞典、英和辞典、和英辞典が搭載されている。
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カメラは背面側に装備。レンズカバーを開ければ、すぐにカメラが起動する。オートフォーカスに対応し、手ブレ補正機能も搭載
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4Mサイズ(1728×2304ドット)で撮影したサンプル画像。リンク先は無加工。(モデル:篠崎ゆき/スーパーウイング所属)
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夜間にDCMX Cafeのマークを撮影。こちらは手ブレ補正なし
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ほぼ同じ位置で、手ブレ補正ありで撮影。DCMXの文字部分が少しハッキリ写っている
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カメラは従来同様、有効200万画素(記録400万画素)のスーパーCCDハニカムを採用し、オートフォーカス、静止画・動画の手ブレ補正も搭載する。背面側のレンズカバーの開閉によって、カメラの起動と終了が可能で、24種類の撮影モード(シーン別撮影)も用意されている。ただ、静止画の手ブレ補正は撮影サイズがUXGA(1200×1600ドット)、4M(1728×2304ドット)のときにOFFになるなど、一部制限がある。
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音楽管理ソフト「BeatJam 2006 for D902iS」が付属
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音楽再生については、パッケージに「BeatJam 2006 for D902iS」が付属しており、FOMA USB接続ケーブルとminiSDカードを用意すれば、すぐに音楽再生を楽しむことが可能だ。miniSDカードについては最大2GBまでのものに対応する。音楽再生はバックグラウンド再生にも対応しており、スライドボディを閉じたままでの利用も可能だ。ただ、連続再生時間は最大5時間なので、SH902iSのように本格的に活用するにはやや不安が残る。
D902iSは従来のD902iSに引き続き、ワンプッシュオープン対応のスライド式ボディを採用しているため、左側面にはワンプッシュオープンのボタンに加え、誤操作を防ぐためのプロテクトキーロックが装備されている。音楽再生時にキーロックをすれば、音楽再生の中断を防ぐだけでなく、メール作成などの途中でロックを掛け、手が空いたら、メール作成を再開といった使い方もできる。
ただ、D902iSではスライド式ボディを閉じた状態でプロテクトキーロックを掛けると、液晶ディスプレイのバックライトがOFFになり、[終了]ボタンを押さないと、バックライトが点灯しないという仕様になっている(D902iは一定時間経過後にバックライトOFF)。省電力を考えれば、納得できる仕様なのだが、本来、ディスプレイが常に前面にあるスライド式ボディは、サブディスプレイのない折りたたみデザインのように、端末を開かなくても時刻や着信状態などがわかるというメリットがあったはずだ。今回の仕様ではスライド式ボディを開くか、ややサイズの小さい[終了]ボタンを押す、あるいは通常時の照明設定を[常時]に設定しなければならず、やや本末転倒になってしまった印象も残った。慣れてしまえば、気にならなくなるだろうが、もう少し工夫が欲しかったところだ。
この他には、従来からカスタマイズ好きのユーザーに好評を得ている「カレンダー/待受カスタマイズ」、他人に電話帳やメール、カメラ画像などを見られなくする「プライバシーモード」なども継承されており、Dシリーズのユーザーには満足できる構成になっていると言えそうだ。
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左側面に装備されたワンプッシュオープンボタンとスライド式のプロテクトキー
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待受画面のカレンダー表示などをカスタマイズできる「カレンダー/待受カスタマイズ」。Dシリーズのファンからの支持する声も多いようだ
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■ スライド式ボディで遊びたければ「買い」
さて、最後にD902iSの買いのポイントについて考えてみよう。D901i以降、スライド式ボディを進化させてきたFOMA Dシリーズ。70Xiシリーズでは折りたたみデザインなども採用されているが、昨年末に登場したD902iが好調だったこともあり、Dシリーズのスライド式ボディはひとつのスタイルを打ち立てた印象だ。今回のD902iSはその流れをくむ正常進化版と言えるが、スピードセレクターと付属アプリケーションを除けば、D902iに比べ、機能及びスペック面であまり大きな差がない。そのため、スピードセレクターの操作性、付属アプリケーション「Motion Smoothy2」「BeatJam 2006 for D902iS」で実現される動画及び音楽再生機能をどう評価するかが判断のポイントということになる。
これらのことを総合すると、スライド式ボディの端末が欲しいユーザー、エンターテインメント機能で遊んでみたいユーザーにオススメということになる。逆に、スピードセレクターの操作性や新機能に興味がないということであれば、従来のD902iもまだ併売されているので、それを検討するのも手だ。ただし、今年は番号ポータビリティを控えていることもあり、各社とも新モデルの展開が早くなっているため、少しでも新しいモデルを使っておきたいという考えもアリだろう。他のFOMA new9シリーズとの比較については、スライド式ボディ、2.8インチ液晶ディスプレイをどう評価するかが判断のポイントだ。ただ、Symbian OSを搭載するFOMA端末の内、D902iSは必ずしも操作レスポンスがいい部類に入れにくい印象なので、できるだけ、実際に動作する端末を触ってみることを強くおすすめしたい。
■ URL
ニュースリリース(NTTドコモ)
http://www.nttdocomo.co.jp/info/news_release/page/20060511a.html
製品情報(NTTドコモ)
http://www.nttdocomo.co.jp/product/foma/902i/d902is/
製品情報(三菱電機)
http://www.mitsubishielectric.co.jp/mobile/foma/d902is/
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(法林岳之)
2006/07/26 14:23
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ケータイWatch編集部 k-tai@impress.co.jp
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