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ケータイのデザインに新風を吹き込む「INFOBAR」
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この年末商戦に各社から発売される端末の中で、もっとも注目される商品のひとつがauの発売した「INFOBAR」だ。au design projectから生まれた新しいコンセプトのデザイン端末だ。筆者も実機を購入したので、レポートをお送りしよう。
■ 機能性のためだけではないケータイのデザイン
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au『INFOBAR』サイズ:42(W)×138(H)×11(D)mm、87g。NISHIKIGOI(写真)、ICHIMATSU、BUILDINGをラインアップ
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話すための道具として生まれてきたケータイは、その進化のプロセスにおいて、ポータビリティを重視するために小型化が進み、メールやコンテンツ閲覧など、「使うケータイ」のために折りたたみデザインの端末が爆発的に普及した。最近ではカメラ付きケータイを使いやすくするため、あるいはデジタルカメラに近い使い勝手を実現するために、斬新なデザインを採用する端末が増えている。しかし、こうしたケータイのデザインの進化はボディ形状を中心にしたものであり、統合的なデザインやファッション性については、ボディカラーなどに工夫が見られるものの、あまり真剣な論議がなされなかった印象が強い。
今やケータイは、私たちが常に肌身離さず持ち歩く大切な道具のひとつだ。もしかすると、服装以外の持ちもので、もっとも長時間、身近にあるアイテムのひとつと言えるかもしれない。そのため、ケータイを持ち主のアイデンティティを表現するアイテムのひとつとして捉え、さまざまな方法によってパーソナライズ化する人も多い。着信メロディや待受画面などもその一例であり、カメラ付きケータイの流れも元々、待受画面のパーソナライズ化から生まれたものだ。
今回紹介するauの端末「INFOBAR」は、デザインという視点からケータイを考え直すという「au design project」によって生み出された端末だ。au design projectは、2001年にスタートし、何人かのプロダクトデザイナーとのコラボレーションによって、いくつかのコンセプトモデルを制作し、展示会などにも出品されている。INFOBARは2001~2002年発表の「info.bar」をベースに製品化したもので、デザインはプロダクトデザイナーの深澤直人氏が担当している。薄型のストレートボディやタイルのようなキー、独特のカラーリングなど、今までのケータイとはひと味もふた味も違ったテイストの端末として仕上げられている。
ちなみに、製品の生産については、三洋マルチメディア鳥取(旧鳥取三洋)が担当しているが、他の端末と違い、INFOBARではカタログなどでもメーカー名はほとんど謳われていない。おそらく「三洋マルチメディア鳥取製端末」というメーカー名より、「au design project製端末」というデザイン名を前面に打ち出したかったということなのだろう。製品は11月上旬から販売が開始されているが、売れ行きも好調なようで、現在でも品薄が続いているという。今年の冬商戦を代表する人気モデルの実機を見ながら、その出来をチェックしてみよう。
■ 存在感のあるストレートボディ
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本体右側面の外部接続端子側には「INFOBAR」のロゴがプリントされている
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製品のスペックや細かい仕様については、auの製品情報ページ、ケータイ新製品SHOW CASEを参考にしていただくとして、ここでは筆者が購入した端末で得られた印象を中心に紹介しよう。
まず、ボディは薄さ11mmのストレートデザインを採用している。今やケータイのボディデザインはそのほとんどが折りたたみデザインになっており、ごく一部に折りたたみボディを進化させた回転式などがラインアップされるのみ。久しぶりに見るストレートデザインのボディは逆に新鮮な印象だ。ちなみに、ボディの薄型化で強度が気になるところだが、INFOBARは高い剛性を持つマグネシウム合金を採用しており、十分な強度を確保しているという。そのため、手に持ったときの質感も既存の端末とは若干、異なる印象だ。
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本体左側面に[メール]キー、[memo]キー、[EZweb]キーを備える。本来はこちらを本体前面に出すべきだったのでは?
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本体左側面のアンテナ側には、誤動作を防止するためのロックスイッチを備える。ストレート端末ならではのものだ
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ディスプレイはストレートデザインを採用しながら、2インチTFTカラー液晶パネルを搭載
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キーはタイル状を採用。慣れていないと、[1]キーや[3]キーと[発信]キーや[終了/電源]キーを押し間違えてしまうことがある
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本体背面の上部には31万画素CCDカメラ、ライトが備えられ、そのすぐ下にはスピーカーが装備されている。左側面には[メール]キーや[memo]キー、[EZweb]キーを備えられているが、アンテナ側にはストレートデザインの端末に必須とも言える「ロックスイッチ」が装備されている。ロックスイッチを底面側([メール]ボタン側)にスライドさせておけば、ボタン類を操作しても誤動作を防ぐことができる。右側面にはちょうど液晶ディスプレイの真横あたりにストラップ用の穴と平型コネクタのイヤホンマイク端子が備えられ、底面側にはINFOBARのロゴがプリントされている。
ディスプレイは132×176ドット/65,536色表示が可能な2.0インチTFTカラー液晶パネルを採用する。サイズ的な制約が多いストレートデザインの端末で、現在の端末の主流である2インチクラスのカラー液晶ディスプレイが搭載されているのは、ユーザーとしてもうれしいところだ。
ボタン類は、コンセプトモデルのデザインを継承し、タイル状のキーでレイアウトされている。中央に十字型のカーソルキーと決定操作などを行なうメニューキー、左上に[カメラ]キー、右上にEZアプリ(BREW)を利用するための[アプリ]キーを備える。カーソルキーの左右下に[発信]キーと[終了/電源]キーがあり、その間に[クリア/マナー]キーをレイアウトしている。タイル状のキーはさすがにキートップの面積が広いため、操作性は良好だ。前述のように、[メール]キーと[EZweb]キーは側面に装備されているが、一般的な使用頻度から考えれば、[カメラ]キーや[アプリ]キーと逆にレイアウトするという手もあったのではないだろうか。
また、端末本体そのものには直接、関係ないが、INFOBARは端末を寝かせるように置く「ベッドスタイル」の卓上ホルダを採用している。これはデザイン的な配慮もあるだろうが、cdmaOne以降、続いている共通仕様も関係しているかもしれない。auではcdmaOne、CDMA2000 1x、CDMA 1X WINの端末で、卓上ホルダに端末を置いた状態でも外部接続端子にケーブルを接続し、充電しながらデータ通信(パソコンやPDAなどによる通信)をできるようにしている。おそらく、この仕様を満たすための配慮なのだろうが、個人的にはこの仕様もそろそろ見直してもいいのではないかと見ている。ちなみに、INFOBARでは卓上ホルダの設置スペースを考慮し、ACアダプタのケーブルを卓上ホルダの真下で接続するようにしている。
さらに、これも端末に直接、関係することではないが、INFOBARではNISHIKIGOI、ICHIMATSU、BUILDINGのそれぞれに合わせたパッケージデザインを採用しており、一部の店舗ではお持ち帰り用の袋にもINFOBAR専用のものを用意している。こうした部分にもデザイン的なこだわりを見せているのは、au design projectならではといったところだろうか。ちなみに、各色のパッケージを見たいときは、impressTVのの11月11日放送分でも少し紹介しているので、そちらをご参照いただきたい。
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卓上ホルダは端末を寝かして置く「ベッドスタイル」を採用
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ACアダプタは卓上ホルダの底面に接続する
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■ 壁紙やランチャー画面にもこだわり
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メールはフォルダによる管理に対応。自動振り分けにも対応するが、振り分けのキーワードはメールアドレスのみ
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次に、機能面について見てみよう。デザイン面ばかりが強調されるINFOBARだが、「ケータイは使ってナンボ」のもの。中身がしっかり作られていなければ、ユーザーとしても安易に手を出せないだろう。
まず、基本的な仕様についてだが、INFOBARはauのラインアップの内、A5300シリーズ相当のスペックを持っている。たとえば、EZムービーの録画は96×80ドットの「Sサイズ」まで、アプリはEZアプリ(BREW)対応、位置情報サービスはEZナビ(旧eznavigation)対応といった具合いだ。勘のいい読者なら、すでにおわかりかだろうが、実はINFOBARの中身は今年6月に発売された「A5306ST」に準拠しており、使い勝手の面は非常によく似ている。
メールはフォルダによる管理や自動振り分けに対応しているが、振り分けは各フォルダにメールアドレスを個別に設定するのみで、題名などの振り分けには対応していない。日本語入力は「ATOK for au V2」を採用し、以前に入力した語句などを入力しやすくする推測変換にも対応する。文字を途中までに入力した段階で、[アプリ]キーを押すと、推測候補を選択することが可能だ。ただし、ダウンロード辞書には対応していない。入力モードの切替は[カメラ]キーを押して表示されるメニューから各モードを選ぶため、やや操作が煩雑だが、絵文字一覧を[*]キーで呼び出したり、[#]キーで改行できるなど、なかなか使い勝手の良い部分もある。
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ランチャー画面もINFOBARのデザインコンセプトを意識したものを採用する。[アプリ]キーでデザインの切替が可能
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ランチャー画面から項目を選ぶと、通常の一覧画面。できれば、この階層の表示にもこだわりを見せて欲しかった
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各機能を呼び出すためのメニュー(ランチャー画面)はカーソルキー中央の[メニュー]キーを押すと表示できるが、こうした画面デザインにもau design projectのセンスが生きている。たとえば、メニュー画面のデザインを[アプリ]キーで瞬時に切り替えたり、時計の表示、壁紙、起動/終了アニメーション、スクリーンセーバーなどもINFOBARのデザインセンスを意識したものが用意されている。ただ、こうした独自のグラフィックが採用されているのはメニュー画面までで、機能一覧画面のデザインや各機能の表示フォントなどは変わらない。できることなら、もう一歩、踏み込んだところまで、中身のデザインを凝って欲しかったところだ。
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EZアプリ(BREW)のカタログ画面。[アプリ]キーから呼び出すことができるので、すぐにEZアプリをダウンロードできる
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よく使う機能を登録しておくことができる「マイメニュー」画面
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EZアプリ(BREW)については、[アプリ]キーを押すことで呼び出すことができる。出荷時にインストールされているのは「EZ@NAVI」と「Team Factory」のみなので、ちょっとさみしい感もあるが、データフォルダ容量が3MBとあまり大きくないので、しかたのないところだろうか。とは言え、端末上に表示されるEZアプリのメニュー画面からアプリケーションを選んだり、ダウンロードできるのはユーザーとしても便利であり、Javaアプリなどの環境にはない特長と言えそうだ。
その他の機能としては、カメラで撮影後、特定の人にすぐにメールが送信できる「あのひとメール」、ダイヤルキー(テンキー)の長押しで各行を呼び出せる「アドレス帳」、毎正時アニメーションを表示しながら、メロディを鳴らすことができる「からくり時計」、よく利用する機能を登録しておくことができる「マイメニュー」などが搭載されている。ちなみに、からくり時計はアラームとは別のもので、指定した時刻内やあらかじめ設定した時刻にもメロディを鳴らすことができる。たとえば、クスリを飲む時間や赤ん坊にミルクをあげる時間に鳴らしたり、定期的に株価をチェックするときなど、ユーザーの工夫次第でいろいろと活用できそうだ。
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背面に約31万画素CCDカメラを内蔵
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PCモードで撮影したサンプル画像。東京モーターショーのGMブースで撮影(リンク先の画像は無加工)
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カメラについては約31万画素CCDを採用し、静止画及びムービーを撮影することができる。背面に装備されたカメラの横にはフラッシュが内蔵されており、周囲の明るさに応じて、自動的に光らせたり、発光する色を変更することもできる。
撮影できるサイズは静止画が132×176ドットの「携帯用」と640×480ドットの「PC用」の2種類で、ムービーは前述のように、96×80ドットの「Sサイズ」のみに対応する。一度に8枚の撮影が可能な「携帯用連写」を設定することもできる。
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カメラのファインダー画面。「PCモード」は横長の画面で撮影する
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カメラの各機能はサブメニューから設定。一部、階層が深い機能もあるので、やや手間がかかる印象
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撮影時の機能としては、15段階4倍デジタルズーム、11段階の「明るさ」調整、「フレーム」の追加、セピアやエンボスが選べる「特殊効果」、「セルフタイマー」、「GPS情報付加」などが用意されている。ムービーでも同様の機能が利用できるが、ムービーにタイトルやエンディングのフレームを追加できる「シネマモード」という機能も用意されている。シネマモードではタイトルムービーなども追加できるので、ちょっとムービーで遊んでみたい人にはおすすめだ。
画像編集は基本的に携帯用で撮影した場合のみで、PC用や携帯用連写で撮影した画像は編集することができない。特に、PC用は画像が90度、回転した状態で保存されているため、パソコンに転送したときしか利用できない。31万画素のカメラとは言え、VGAサイズを回転させ、壁紙に登録する機能ぐらいは用意すべきだろう。
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ムービーにタイトルやエンディングのフレームを追加できる「シネマモード」。工夫次第でもっと楽しめそう
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撮影した画像はサムネイルで表示が可能。ただし、PC用で撮影した画像は回転されたままの表示
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■ 端末のファッション性重視なら「買い」
さて、最後にINFOBARの「買い」について考えてみよう。au design project第1弾の端末として登場したINFOBARは、機能のためのデザインではなく、統合的なデザインを強く意識して開発された「デザイナーズケータイ」とも呼べる端末だ。折りたたみボディ全盛のこの時期に、敢えてストレートデザインを採用し、インパクトのあるデザインを実現した。見た目だけでなく、持ったときの質感や塗装の仕上げなど、高級感のある端末として仕上げられている。こうしたデザイン性を重視した製品は、ともすると機能面が貧弱になってしまうことがあるのだが、INFOBARはカメラを搭載し、BREWを採用するなど、現在のケータイに求められる機能もひと通りサポートしている。
これらのことを総合すると、INFOBARを「買い」と言えるのは、端末のファッション性を重視するユーザー向けということになるだろう。特に、既存の折りたたみデザインの端末に飽きてしまったユーザー、他人との違いを明確に打ち出したいユーザーなら、十分に検討する価値のある端末だ。
ただ、欲を言えば、機能面でももう一歩、頑張って欲しかった印象も残る。数年前、テレビCMで『ワタシ、脱いでもスゴいんです』というキャッチコピーがあったが、INFOBARは外見だけでなく、中身もしっかりしている。しかし、『スゴいんです』というレベルには達していない。たとえば、メール機能の使い勝手や画像編集などは不足を感じる部分もあり、長く使うには少々、不満が残りそうだ。また、この年末商戦に登場するauの新端末は、いずれもしっかりとした個性を持っており、機能的にも注目すべき点が多い。そのため、機能面で比較してしまうと、INFOBARはやや不利に感じられる面がある。できることなら、デザイン以外に何かひとつ「スゴい」機能を搭載することを考えるべきではなかっただろうか。確かに、INFOBARはケータイのデザインに一石を投じるだけのインパクトがあるが、ユーザーはデザインだけで買うわけではないのだ。
■ URL
ニュースリリース(au)
http://www.kddi.com/corporate/news_release/2003/1006a/
製品情報(au)
http://www.au.kddi.com/seihin/kinobetsu/seihin/infobar/
au design project
http://www.au.kddi.com/au_design_project/
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(法林岳之)
2003/12/02 15:53
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