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快適にアプリケーションが使えるBREW対応端末「A5304T」
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■ 初のBREW本格対応端末
ムービーケータイが好調なauからクアルコムが開発したBREWプラットフォームに対応した端末「A5304T」が登場した。ケータイにおけるアプリケーションを従来のezplus対応端末とは違ったアプローチで実現するBREWは、業界的にも非常に注目度が高い技術だ。筆者も実機を購入したので、BREWファーストモデルのレポートをお送りしよう。
■ 高速かつ高機能なBREWプラットフォーム
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au/東芝『A5304T』。サイズ:49×98×24mm、110g。カプリグリーン(写真)、ベネツィアンレッド、アルピナホワイトをラインアップ
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今やメールやコンテンツ閲覧はケータイに欠かせない機能だが、ここ数年で定着したニーズもある。たとえば、現在、大ブレイク中のカメラ付きケータイもそのひとつだが、それと変わらないくらいに普及しているのがアプリケーションだ。本来、ケータイはメーカーが開発し、事業者が出荷をした段階で、その端末でできることが限定されているが、アプリケーションを追加できる機能を搭載することにより、ユーザーのニーズに応じて、自由に機能を追加することが可能だ。その代表格と言えるのが「Java」だ。ケータイのJava環境はNTTドコモの「iアプリ」、auの「ezplus」、J-フォンの「Javaアプリ」といった具合いに、主要事業者がすべて環境を提供しており、海外でもJavaアプリの動作する端末が出荷されている。
Javaはケータイだけでなく、パソコンでも利用されているものだが、簡単に言ってしまえば、ハードウェア上に仮想的なコンピュータを構築し、その仮想的なコンピュータに対応したアプリケーションを動作させている。そのため、基本的にはどのJava環境でも同じアプリケーションが動作することになっているが、ケータイにおいては各社が独自仕様のAPIなどを追加しているため、各社ごとの互換性はない。ちなみに、NTTドコモのiアプリは各開発メーカーごとに微妙に仕様が異なるのに対し、auのezplusやJ-フォンのJavaアプリはそれぞれのプラットフォーム内であれば、基本的に同一のアプリケーションが動作することになっている。
国内だけでなく、海外メーカーや事業者の動向などを見てもJavaはこれからケータイに欠かせない機能のひとつになっているが、仮想的なコンピュータ上でアプリケーションを動作させているため、処理速度が遅かったり、APIが用意されない限り、ハードウェアに直接アクセスするようなアプリケーションを開発できないというデメリットもある。
これに対し、端末のチップセットに直接、アクセスするようなアプリケーションを開発できるようにしたのがクアルコムの「BREW(Binary Runtime Eviroment for Wireless)」だ。BREWはcdmaOneファミリー向けに提供されるアプリケーションプラットフォームで、Javaに比べ、高速かつ高機能なアプリケーションを開発することが可能とされている。現在、CDMA2000 1x端末にはクアルコム製チップが搭載されているが、このチップにBREWアプリケーションの実行環境を組み込むことにより、BREWの環境を実現しているわけだ。
今回紹介する東芝製CDMA2000 1x端末「A5304T」は、au初のBREW搭載端末として登場したものだ。auは以前からBREW搭載をアナウンスしていたが、今年に入り、ようやく正式に搭載端末をリリースしたことになる。敢えて「公式に」と書いているのは、過去に一部の機能をBREWで実現していると言われているcdmaOne端末が存在したが、サーバーからのダウンロード機能を持っていなかった。今回のA5304Tはダウンロード機能も含めて搭載されており、本当の意味での「BREW搭載端末のファーストモデル」ということになる。
また、東芝はすでにムービーメールに対応したA5301Tを開発し、au向けに提供しており、2台目のムービーメール対応モデルということになる。BREWという方向性の異なる端末ではあるものの、auのラインアップでは比較的近い時期に同じメーカーから複数の端末がリリースされることが少なく、今回のA5304Tはちょっと珍しいケースと言えそうだ。
■ 2.3インチTFTカラー液晶を搭載
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背面にはサブディスプレイ、31万画素CCDカメラ、モバイルライトを搭載
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メインディスプレイは従来のA5301Tよりもひと回り大きい約2.3インチのものを採用
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製品のスペックや細かい仕様については、auや東芝の製品情報ページ、「ケータイ新製品SHOW CASE」を参考にしていただくとして、ここでは筆者が購入した端末で得られた印象を中心に紹介しよう。
まず、ボディは従来のA5301Tのコンセプトを踏襲した折りたたみボディを採用している。ただ、従来モデルと違い、SDカードスロットが搭載されていないため、スマートになった印象だ。3色用意されているボディカラーのうち、カプリグリーンとベネツィアンレッドはかなり個性的な印象だ。背面には31万画素のCCDカメラを搭載し、その隣にはモバイルライトを備える。着信LEDはヒンジ側に独立したものが装備されている。
ディスプレイはメインディスプレイに144×176ドット/26万色相当の表示が可能な約2.3インチのTFTカラー液晶、背面のサブディスプレイに80×60ドット/65,536色相当の表示が可能な1.1インチDSTNカラー液晶を採用する。「スーパーダイナミック液晶」と呼ばれるメインディスプレイは東芝製端末でおなじみのシリコン液晶を採用しており、発色も良好で、視認性に優れる。メインディスプレイの解像度(表示ドット数)は従来のA5301Tと同じだが、物理的なサイズが20%大きくなっている。背面ディスプレイもサイズは共通だが、表示色数が増えている。
ボタン類は方向キーと決定ボタンを組み合わせた「ワープファンクションキー」を中央にレイアウトし、真上に[EZ]キー、右上に[カメラ]キー、左上に[メール]キー、左下に[アドレス帳]キー、右下に[機能]キーを配している。従来のA5301Tでは貝殻のような楕円形のワープファンクションキーを採用していたが、今回は一般的な円形に変更されている。左右の[アドレス帳]キーと[機能]キーも形状が変更され、[発話]キーや[終話]キーと混同しにくくなっている。また、テンキー部の左下にはBREWアプリケーションを起動するための[アプリ]キーが装備されており、A5304TのセールスポイントであるBREWアプリケーションをすぐに起動できるようにしている。
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ボタン類はワープファンクションキーのデザインを変更。操作性はA5301Tよりも改善されている
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側面のサイドキーはカメラの起動やモバイルライトの点灯、着信時の伝言メモ起動などの機能が割り当てられている
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機能面について、見てみよう。基本的にはA5301Tとコンセプトで開発されているようだが、細かいリファインが加えられ、使い勝手を向上させている。
まず、機能を呼び出すためのメニュー画面は、[機能]キーで表示される[M機能]画面、[ワープファンクションキー]の中央ボタンで表示される[ランチャーメニュー]画面の2種類が用意されている。[M機能]画面は左右に操作することで、端末の設定などを呼び出すことができる。[ランチャーメニュー]はカメラやデータフォルダ、アプリなど、端末の各機能を呼び出すアイコン画面になっており、ユーザーが自由にカスタマイズすることが可能だ。カスタマイズは割り当てる機能を選ぶだけでなく、アイコンも変更することができる。
メールはフォルダ管理に対応しており、フォルダ名も自由に変更可能だ。各フォルダへの自動振り分けや再振り分けにも対応しているが、振り分け時のキーワードはメールアドレスに限られており、タイトルなどで振り分けることはできない。日本語入力の「モバイルRupo」は従来のA5301Tよりも強化され、辞書も約14万5,000語まで拡張された。「AI変換」が搭載され、従来モデルで好評を得た「英数カナ変換機能」も継承されている。さらに、TOSHIBA User Club Siteから人名や地名などの辞書をダウンロードすることも可能だ。
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各機能を呼び出すための[M機能]メニュー。左右で項目が切り替えられる。画面下部にガイドが表示される機能は便利
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ワープファンクションキーの決定ボタンで呼び出すメニュー画面。アイコンや項目はカスタマイズが可能
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カメラは31万画素CCDを採用し、[カメラ]キーの短押しで[ムービーモード]、長押しで[フォトモード]が起動する。一度、カメラモードを起動すると、[ワープファンクションキー]左上の[メール]キーで両モードを随時、切り替えることが可能だ。撮影サイズはVGAサイズ(640×480ドット)の[PCモード]、120×160ドットの[PCモード]から選ぶことができるが、VGAサイズで撮影してしまうと、PCモードに変換できないため、撮影前に注意する必要がありそうだ。撮影した画像は一覧表示で見ることができ、フレームやスタンプも追加できる。A5301Tで指摘していたVGA画像表示は若干、改善されたように見えるが、それでもまだ遅い印象が残る。ちなみに、VGA画像の表示は端末の画面サイズを活かすためか、縦長の画面で構えて撮影した場合でもプレビュー時は90度回転した横長表示に切り替わる仕様となっている。
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ムービーのサンプル(amc形式)。背面側にマイクはないが、音声もきちんと記録できている
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フレーム付き画像でこんな遊び方もできる
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VGAで撮影した画像をJPEG回転させたサンプル。リンク先画像は、無加工のVGAサイズ(モデル:篠崎ゆき)
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さて、A5304Tで最も注目されるBREWだが、出荷時に地図アプリケーション「NAVITIME」、コミュニケーションツールの「Team Factory」、文字アートやアニメーションなどの多彩なメールが作成できる「ハートメール」がプリインストールされている。これら以外のアプリケーションについては[アプリ]キーを押したときに表示されるメニュー内の「BREWアプリカタログ」から選び、ダウンロードすることができる。BREWはJavaよりもハードウェアをコントロールするようなアプリケーションも開発できるため、一般ユーザーが作成するアプリケーションはダウンロードできない仕組みになっており、結果的にBREWアプリカタログが一般ユーザーにとってのアプリケーションダウンロードの入り口ということになる。
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アプリキーから呼び出せる[BREWアプリケーションカタログ]。便利な手法だが、将来的にアプリケーションの種類が増えてきたときに、どのように見せるのかが気になるところ
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筆者もお気に入りの「NAVITIME」による地図表示。画面のスクロールや切り替えが非常に高速
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アプリケーションの起動や処理速度については、アプリケーションの仕様やサイズなどによって異なるため、一概に言えないが、ezplusやEZwebでも提供されている「NAVITIME」の地図表示を見る限り、かなり高速という印象を受けた。EZwebに限らず、一般的に地図サイトの表示は非常に重く、スクロールもままならないことが多いが、BREWのNAVITIMEはまさに「サクサク」とスクロールしてくれる。読み込んだ領域外にスクロールしたときもすぐにデータがダウンロードされ、数秒後には次の画面が表示される。元々、NAVITIMEは地図データをベクターデータとして持っているため、他の地図ASPサービスに比べ、処理が軽い方だったが、BREW版についてはそれを上回る快適性が得られている。また、アプリケーションのダウンロードも試してみたが、ダウンロードに要する時間はezplusのときとあまり変わらないようで、サイズ的にもほぼ同等だろうという印象だ。
ただ、現時点でBREWを「楽しい」「便利」と言い切れるかというと、必ずしもそうではない。発売から1カ月半ほど、様子を見ていたが、肝心のBREWアプリカタログにはアプリケーションがほとんど増えておらず、アプリケーションの選択肢が非常に少ないからだ。筆者はたまたま以前からNAVITIMEを頻繁に利用していたため、BREWの良さを実感することができたが、ユーザーが「使いたい」と思うアプリケーションが登場しなければ、わざわざBREWのために端末を購入することはそれほど多くないだろう。「BREWはJavaなどに取って代わるものなのか」という論議についても同じことだ。要するに、ユーザーにとっては「何ができるのか」「どのように便利なのか」が重要なのであって、JavaやBREWといった技術が重要ではないからだ。
BREWの環境は一般ユーザーにとってはまだ未知数のものでしかないが、法人向けではかなり可能性を感じさせてくれる。BREWの発表会でも紹介されたように、企業ユーザー向けにカスタマイズした業務用端末を作りやすいからだ。たとえば、BREWアプリで毎朝、アドレス帳やスケジュール帳のデータを更新したり、ユーザーが入力した顧客情報を自動的にサーバにアップロードするといった使い方も実現可能だ。位置情報やカメラと連携することで、今までPDAやパソコン、専用端末が必要とされた業務を携帯電話のみで実現することも可能だろう。比喩としてはあまり適切ではないかもしれないが、パソコンの世界でも数年前に、同じWindowsでも個人向けはWindows 98/Me、企業向けはシステム管理者がコントロールできるWindows 2000 Professionalというセグメント分けがされたのとよく似ている。
■ BREWアプリケーションの充実に期待
さて、最後にA5304Tの「買い」について診断してみよう。au初のBREW対応端末として登場したA5304Tは、A5301Tの機能を継承しながら、細かいリファインを加えることで完成度を高めた端末だ。カメラは現時点でのハイエンドクラスである31万画素CCDを搭載することにより、動画、静止画ともに一定のレベルを確保している。しかし、肝心のBREW環境については、まだアプリケーションが充実しておらず、BREWのみで「買い」と言える状況にはない。その半面、業務用端末的な活用については可能性があり、au/KDDIのソリューションビジネスにとっては大きな武器になりそうだ。もっとも、その場合に現在のA5304Tのボディカラーが適切かどうかは一考の余地がありそうだが……。
これらのことを総合すると、A5304Tを「買い」と言えるのは、BREWの可能性を明確に認識できるユーザーが中心ということになりそうだ。もし、BREWアプリケーションに自分の利用したいアプリケーションが含まれ、具体的な活用が決まっているのであれば、素直に「買い」といって差し支えない。特に、筆者のようにNAVITIMEの地図サービスをヘビーに活用したいユーザーにはなかなか面白い端末と言えるだろう。逆に、「BREWってどうなんだろう?」というレベルの印象なら、他のA5300シリーズと比較した上で選んだ方が良さそうだ。ムービーメール対応ケータイとしての魅力も十分、及第点に達しているため、あとはボディカラーなども含めた端末の総合的な魅力次第ということになる。
いずれにせよ、A5304Tのアイデンティティはau端末に初搭載されたBREWであり、これをどう評価するのかで、最終的な「買い」の診断は決まることになる。その判断をよりわかりやすくするためにもauや各アプリケーションプロバイダーには、ぜひともBREWアプリケーションをもっと充実させてもらいたい。できることなら、期間限定ではない無料で楽しめる手軽なアプリケーションの提供を期待したい。
■ URL
A5304T ニュースリリース(au/KDDI)
http://www.kddi.com/corporate/news_release/kako/2003/0129/index.html
A5304T 製品情報(au)
http://www.au.kddi.com/seihin/kinobetsu/seihin/a5304t/index.html
A5304T 製品情報(東芝)
http://www.toshiba.co.jp/product/etsg/cmt/au/a5304t.htm
User Club Site(東芝)
http://www2.t-ucs.com/index_j3.htm
TOSHIBA Photo Site(東芝)
http://www2.t-ucs.com/photosite.htm
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(法林岳之)
2003/04/01 17:19
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