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「これぞ次世代携帯電話!」が体験できるFOMA SH2101V
法林岳之 法林岳之
1963年神奈川県出身。パソコンから携帯電話、メール端末、PDAまで、幅広い製品の試用レポートや解説記事を執筆。特に、通信関連を得意とする。「できるWindows XP基本編」「できるADSL フレッツ・ADSL対応」「できるZaurus」「できるVAIO Windows XP版」など、著書も多数。ホームページはPC用の他、各ケータイに対応。iモード用EZweb用J-スカイ用、H"LINK用(//www.hourin.com/H/index.txt)を提供。「ケータイならオレに聞け!」(impress TV)も配信中。


FOMA初のPDAタイプ端末

 昨年10月のサービス開始以来、苦戦が伝えられているNTTドコモの次世代携帯電話サービス「FOMA」。現在までにスタンダードタイプやビジュアルタイプなどが発売されているが、FOMA初のPDAタイプ「SH2101V」が発売された。筆者も購入することができたので、レポートをお送りしよう。


ケータイとPDAのビミョーな距離感

SH2101V

 NTTドコモ/シャープ『FOMA SH2101V』。サイズ:137×25×98mm(折りたたみ時)、280g。レジェンドシルバー(写真)をラインアップ。
 私たちの身の回りには、ケータイをはじめ、さまざまなデジタルデバイスがあるが、カメラ付きケータイの普及を見てもわかるように、ケータイはさまざまな機能を取り込みながら、進化を続けている。しかし、取り込めるそうでなかなか取り込むことができず、かと言って融合することもなかなかできないでいるのが「PDA」だ。

 PDAはその昔、「電子手帳」と呼ばれていたが、そのネーミングからもわかるように、個人が持ち歩く手帳を電子化した製品だった。アドレス帳やスケジュールといったデータをデジタルデータとして管理することにより、閲覧や検索のしやすいビジネスツールとして進化してきた。その後、ケータイやPHSを接続できる通信機能、パソコンとの連携などが搭載され、呼び名も電子手帳からPDAへと変化してきたが、CFサイズのデータ通信カード一体型端末が登場したあたりから「通信をするためのデバイス」としても注目されるようになり、コンシューマだけでなく、ビジネスユースにも幅広く活用されている。

 これに対し、ケータイからPDAへのアプローチは、あまり芳しいものではなかった。iモード登場以前からPDA機能を搭載したケータイは何度となくトライされてきたが、そのいずれもが「大きすぎる」「電池が持たない」「使いにくい」などの理由から、ほとんど市場に受け入れられることがなかった。ただ、最近の端末ではパソコンで利用されるスケジュールやアドレス帳のデータをvCard/vCalendar形式で扱えるものが登場し、部分的にPDA機能をケータイに取り込む動きが見え始めている。


 今回紹介するNTTドコモのシャープ製端末「FOMA SH2101V」は、FOMA初のPDAタイプ端末だ。FOMAはサービス開始以来、間もなく1年を迎えようとしているが、これまでに登場した端末は試験サービス時に提供されていたものや内蔵ソフトウェアなどがやや古く、今ひとつ「最新端末」という印象が薄かったように感じられる。しかし、今回のSH2101Vは今までにないスタイルのFOMA端末であり、現在はPDC端末にもないジャンルの製品ということになる(エクシーレIIがやや近い存在ではあるが)。ちなみに、SH2101Vのモックアップは1999年にスイスで開催された「Telecom ’99」ではじめてモックアップが公開されている。

 また、Bluetooth対応ハンドセットを採用するなど、技術的にも新しい取り組みが見られ、今までのFOMA端末とはひと味もふた味も違った製品という印象だ。ケータイからPDAへのアプローチは今までに何度もチャレンジされ、結果的に十分な成果を挙げられなかったが、SH2101Vはマイナスイメージを払拭できるか、それとも再び歴史は繰り返すのか、今後のケータイの進化を占う意味でも非常に重要な端末であることは間違いない。こうした背景を踏まえながら、SH2101Vの「買い」を診断してみよう。


パソコンライクなPDAスタイルを採用

背面

 スッキリとまとめられた背面のデザイン。内蔵カメラはキーボード側から背面側まで回転する。ただし、本体を閉じているときには動作しない。
 製品のスペックや細かい仕様については、NTTドコモやシャープの製品情報ページ、「ケータイ新製品SHOW CASE」を参考にしていただくとして、ここでは筆者が購入した端末で得られた印象を中心に紹介しよう。

 まず、本体から見てみよう。現在のPDAはPocket PCやCLIEなどに代表されるように、縦型デザインのものが主流になっているが、SH2101VはハンドヘルドPCや従来のメール端末に近い横型のノートパソコンライクなデザインを採用している。右側面にSDカードスロットと電源端子、左側面にFOMA専用USB接続端子、背面にタッチペン格納部、底面に電池パック装着口とFOMAカードスロットを備える。ディスプレイ部は左にマイク、右にスピーカーを内蔵し、ハンズフリー通話も可能にしている。ヒンジ部中央にはテレビ電話などに利用できるカメラを内蔵しており、カメラ部は背面側にも回転する構造になっている。ただし、カメラが利用できるのは本体を開いた状態に限られる。


FOMAカードスロット SDカードスロット
 FOMAカードスロットは底面に装備。スロット横のスイッチを解除側にしなければ、カバーを外せない仕様になっている。  右側面にはSDカードスロットと充電器と接続する電源端子を装備。左側面のFOMA専用USBポートからは充電できないため、市販のUSB充電ケーブルは使用できない。

キーボード

 標準的なQWERTY配列のキーボードを採用。上部のアプリケーションキーやナビゲーションキーも使いやすい。

ディスプレイ

 液晶ディスプレイはフロントライト式のTFTカラー液晶を採用。フロントライト式特有の色味の薄さは感じられるが、屋外での視認性はかなり良好。
 キーボードは標準的なQWERTY配列を採用しているが、[SHIFT]キーや「.」(ピリオド)キー、[TAB]キーなど、一部のキーはパソコンのキーボードとレイアウトが異なる。キーピッチは実測で13mmほどあり、比較的タイプはしやすいが、縦方向はややキーピッチが狭いため、筆者のような手の大きいユーザーは少し慣れが必要だ。ちなみに、キーボード部を左右から両手で挟むように持つ親指打ち(昔の「HP200LX打ち」、最近ではVAIO Uでおなじみの「モバイルグリップスタイル」)も十分可能だ。

 キーボード部の上には8つの[アプリケーションキー]、左上に方向キーと決定キーを組み合わせた[ナビゲーションキー]があり、[Esc]キー、[Menu]キー、[デスクトップ]キー、[カメラ]キーなどが周囲にレイアウトされている。また、これらのキーは[Ctrl]キーと組み合わせることで、ボリューム調整や液晶ディスプレイのフロントライトなどを操作することができる。こう書くと、いわゆる機能キーが多いような印象も受けるが、実際に操作してみると、キートップの形状を変更したり、うまく整理してレイアウトしているため、操作感はなかなか良好だ。

 液晶ディスプレイは320×240ドット表示が可能な3.5インチTFT液晶ディスプレイを採用している。フロントライトを装備し、付属のペンでタッチ操作が可能だ。これらのスペックは、最近のPocket PCやザウルスに代表されるPDAとほぼ同レベルであり、ややフロントライト式反射型特有の色の薄さが感じられるものの、快適に利用することが可能だ。


Bluetoothハンドセットは面白いが……

SH01

 『ワイヤレスハンドセット SH01』。サイズ:24×137×14mm、43g。

ハンドセットの液晶

 ハンドセットにはモノクロ液晶ディスプレイを装備。電話帳や発着信履歴、ダイヤルパッド画面などが表示できる。SDカードに記録した音楽ファイルを再生するときのリモコンとしても使える。
 SH2101Vには、今までのケータイに見られない新しい機能が数多く搭載されている。たとえば、Bluetooth対応ハンドセットもそのひとつだ。本体には小型のハンドセットが付属しており、本体とBluetoothで接続する。たとえば、本体をカバンの中に入れておき、ハンドセットは胸ポケットなどに挿した状態にしておけば、電話が掛かってきたときはハンドセットのみで応答することが可能だ。メールも先頭部分のみをプレビューできるようにしているほか、ハンドセット専用電話帳、発着信履歴、ダイヤルボタン画面などを備える。電話帳はSH2101V本体内蔵のものと別に、ハンドセット用(最大50件)が用意されており、SH2101Vでハンドセット用を生成してから転送するしくみになっている。

 ちなみに、Bluetoothでは対応する機器ごとに「プロファイル」と呼ばれる設定項目を搭載しているが、SH2101Vの本体とハンドセットの間は、シャープ独自のプロファイルで通信を行なっている。これは現在のBluetoothで定義されている「ヘッドセットプロファイル」に発信動作が含まれていないため、ヘッドセットプロファイルをベースにしながら、独自に拡張をしたとのことだ。

 Bluetoothハンドセットを実際に使ってみたところ、これがコンパクトでなかなか使い勝手がいいのだ。電話を受けるときも掛けるときも小さなハンドセットのみでほとんどの作業ができるため、非常にスマートに使うことができる。きわめて注目度も高く、最初はやや恥ずかしい気もするのだが、慣れてしまえば、当たり前のように使える。ちょうど、はじめてケータイを使い始めた頃の感覚に近い。ただ、使い始めた当初にいくつか戸惑うシーンも多かったのも事実だ。たとえば、FOMAのデュアルネットワークの切り替えや自宅の留守番電話を聞くとき、電話帳やダイヤルパッドの画面から発信するわけだが、通話中にダイヤルパッドの画面を呼び出す方法がわからなかったため、暗証番号を入力することができなかった。何度もマニュアルを読み返しているうちに、ハンドセットの方向キーを長押しすることで呼び出せることがわかり、事なきを得たのだが、ハンドセットの画面上でもう少しガイダンスを表示して欲しいところだ。


充電台

 Bluetoothハンドセットは充電台に挿して、充電する。予備の本体用バッテリーパックも同時に充電可能だが、ハンドセット用の予備バッテリーパックも充電したいところ。
 また、ハンドセットならではの不自由さを感じるシーンもいくつかあった。たとえば、筆者がカバンにSH2101Vを入れ、編集部を訪ねたとしよう。カバンをスタッフに預け、会議室や他のフロアに移動しようとすると、当然のことながら、Bluetoothの電波は届かなくなり、通話ができなくなってしまう。当たり前のことなのだが、普段から「ケータイは首から下がっている」「ポケットに入っている」という意識で行動しているため、いざというときに手元に本体がなくて焦るという場面によく出くわすのだ。もっともハンドセットも賢くできていて、Bluetooth接続が切れそうになったり、範囲内にSH2101V本体がいなくなると、警告音が鳴る仕様になっており、これを聞き逃さなければ、こうしたミスを未然に防ぐことができる。

 一方、アプリケーションやソフトウェアの使い勝手だが、これはなかなか興味深いものがある。まず、iモードのコンテンツ閲覧はほぼ間違いなく、ぶっちぎりの最速と言って差し支えないだろう(笑)。これはSH2101Vに搭載されているCPUが、通常のFOMAやPDC端末に採用されているCPUよりも数段速く、画面の描画もかなり速いためだ。コンテンツ閲覧については、504iシリーズが「サクサク ショック」というキャッチコピーでアピールされているが、SH2101Vのサクサク感を体験してしまうと、504iシリーズの速さもまったく霞んでしまうほどだ。

 ただ、FOMAのiモード公式コンテンツでSH2101V対応を謳うものがそれほど多くないため、着信メロディやiアプリなどは今ひとつ楽しめる感が薄い。このあたりはメーカー公式サイトの「SH-MODE」あたりで対応コンテンツの一覧などを紹介して欲しいところだ。

 メールについては、iモードメールだけでなく、プロバイダのメールも送受信できる。メールの作成もQWERTY配列のキーボードが利用できるため、テンキーで入力するときよりも快適に入力することができる。ちなみに、SH2101VはFOMAのパケット通信だけでなく、回線交換方式による64kbps接続にも対応しているため、各プロバイダーのISDN対応64kbpsアクセスポイントにダイヤルアップし、メールを確認したり、ホームページを閲覧するといった使い方もできる。ユーザーの使い方にもよるが、SH2101Vの隠れたメリットと言えるかもしれない。

 この64kbps接続はNTTドコモのM-stage visualを閲覧するときにも利用する。FOMAのM-stage visualのサイトはiモード公式メニューから移動する形で閲覧できるが、移動時は自動的に通信モードが切り替わり、iモード公式メニューに戻れば、パケット通信に再び切り替わる仕様になっている。iモード公式メニューとM-stage visualをシームレスに使えるのはなかなか便利と言えそうだ。


電話メニュー

 電話メニューには電話関連の機能を表わすアイコンが並ぶ。テレビ電話もこの画面から発信できる。
 また、SH2101VはFOMAの特長のひとつでもある「テレビ電話」にも対応しているが、過去のテレビ電話対応端末よりも実用性が高いという印象だ。従来のビジュアルタイプの端末は基本的にイヤホンマイクの利用が前提だったが、SH2101Vは常に携帯しているはずのBluetoothハンドセットで通話ができるほか、本体内蔵のスピーカーホンとマイクでも通話ができるため、机の上にSH2101Vを置き、落ち着いてテレビ電話を楽しむことが可能だ。もちろん、従来の端末にもスピーカーホン機能が搭載されているが、SH2101Vの環境の方がはるかに快適に使うことができる。オフィスなどで、外出先から現場の実況中継を見たいときなどにも便利なスタイルと言えるだろう。

 この他にもSH2101Vには、SDメモリカードや31万画素のカメラ機能、ザウルスのアーキテクチャを継承したPIMなど、いろいろな機能が搭載されているが、とても誌面では紹介しきれないため、また機会があれば、改めて紹介しよう。


どうせFOMAにするならコレ

エクストラメニュー

 エクストラメニューの画面には「PCリンク」のアイコンがあるが、今のところ、PCリンクキットに関するアナウンスはない。
 さて、最後にSH2101Vの「買い」を診断してみよう。まず、FOMAそのものについては過去にも紹介しているように、サービスとしての成熟度が低く、まだまだPDC方式によるサービスに太刀打ちできない状況にある。将来的にFOMAに移行する可能性があるにしても正直に言って、サービスとしてのFOMAはまだ「買い」と言える時期にないことはお断りしておく。

 しかし、FOMAにはPDC方式で体験できない魅力的なサービスが提供されていることも事実だ。こうしたサービスをいち早く体験したいユーザーがFOMAの購入を検討するわけだが、現在販売されている端末の多くは503iシリーズ相当の機能しか搭載されておらず、端末としての魅力はかなり薄い。これに対し、SH2101Vは今までの端末にはない「次世代携帯電話らしい魅力」を備えており、かなり「買い」の指数は高いと言える。筆者の身の回りの人たちの言葉を借りれば、「なんか未来っぽい」端末に仕上がっているわけだ。

 ただ、現実的に端末を購入する際、大きな壁になるのが価格だ。現在、FOMA端末は多額のインセンティブ(販売奨励金)が注ぎ込まれているため、かなり実売価格が低下しているが、そんな中でもSH2101Vは11万8000円(2002年9月6日の価格調査より)という価格が付けられている。ちなみに、筆者が購入したいときはそれよりも少し高い金額だったが、これはもう十分にパソコンを買える価格であり、到底、普通のユーザーが手を出せるケータイの金額ではない。仮に、PDAとして見た場合でもPocket PCやザウルスなどが4~7万円程度で購入でき、CFサイズのデータ通信カード一体型PHSが数千円(場合によっては0円)で購入できることを考えれば、SH2101Vも10万円を切らなければ、競争はかなり難しいだろう。

 また、PDAとして見た場合、PIM機能のデータをパソコンと連携することが必須になってくるが、現時点では公式にPCリンクキットの発売がアナウンスされていない。後日発売予定という情報は得られているが、そろそろ何らかのアナウンスが欲しいところだ。

 強烈に高い価格やPDAタイプという特殊性はあるが、SH2101Vは次世代携帯電話を実感できる端末のひとつであり、「どうせFOMA買うならコレしかないっしょ」というのが筆者のホンネだ。また、すでにスタンダードタイプやビジュアルタイプのFOMA端末を購入し、「こんなはずじゃなかったのに……」と考えているユーザーが2台目の端末として購入するときにもかなりオススメできる端末だ。ただし、機能やスペックだけでなく、「値段も次世代」であることはお忘れなく(笑)。


・ ニュースリリース(NTTドコモ)
  http://www.nttdocomo.co.jp/new/contents/02/whatnew0709a.html
・ 製品情報(NTTドコモ)
  http://foma.nttdocomo.co.jp/catalog/term/sh2101v_01.html
・ 製品情報(シャープ)
  http://www.sharp.co.jp/products/sh2101v/index.html

SH2101V
ドコモ、ハンドセットで通話を行なうPDA一体型FOMA「SH2101V」
FOMA SH2101V、WMAをサポート


(法林岳之)
2002/09/06 18:58

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