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非ザウルスユーザーが見たMI-E21【前編】
山田道夫
1996年に開設したサイト「携帯電脳」を模様替えし、1999年1月スタートしたWeb&メールマガジン「MOBILE NEWS」編集長。モバイルノートPCからデジタルガジェットまで「小さくてデジタルなもの」にこだわった最新情報を提供している


非ザウルスユーザーが見たMI-E21

ザウルス「MI-E21」オープンプライス。高機能で使い勝手の良いPDAだ。店頭価格は5万9800円程度
 今、初めてPDAを購入しようという人に筆者が薦めるとしたら、使い方にもよるわけだけれど、MI-E21を薦める確率が高い。個人的には最強のPDAではないかと思う。

 ザウルスは、日本のPDA界をリードしてきた。PalmやPocket PCの登場によって、一頃は結構ピンチに陥った印象もあったけれど、昨年末に販売開始したキーボード搭載のMI-E1以降、反攻に及んでいる。非常に魅力的な製品だ。しかし半面、PalmやPocket PCに慣れたユーザーからするとちょっとどうかなという「癖」も歴史の長いザウルスゆえに見かけられたりもする。

 MI-E21の一式セットをシャープからお借りして使い始めてから20日間ほど経った。これまで、MI-E1などを購入してはいるが、いまだにメインのPDAとしては使っていない。MI-E21は、非常に魅力的なPDAだと思うし筆者が非常に気に入った点も数多いが、いまだに馴染めない点もある。それらを筆者の主観で紹介していこうと思う。

 前機種などとの比較はすでに本誌に掲載された清水理史氏の「ザウルス MI-E21レビュー」で詳しく紹介されており、すでにザウルスをお使いの方はそちらを参照していただくと非常に参考になるだろう。ここでは、非ザウルスユーザーという視点から、どういった部分が優れているのか、どういった部分に非ザウルスユーザーが戸惑うのかなどをご紹介していきたい。


ザウルスMI-E21を使う

 MI-E21がシャープより到着した時は、小さな箱で届いたので本体だけかと思ったら、ビデオレコードカードCE-VRC1やデジタルカメラカードCE-AG06、リモコン付ステレオヘッドホンCE-RH1、パソコン連携キットCE-PCK1、クレードルCD-ST5などフルセット入っていた。非常に嬉しかったわけだが、これを全部購入するとするとなると12万円を越えてしまうわけで、なかなか複雑な心境になる。まあ、ちょっと前だったら12万円なんてPDAにおいてもよくある金額だったとも思うし、すべてを購入する必要があるわけでもないので、自分で選んでいけばいいのだが。

 ザウルスMI-E21の筆者が感じるメリットは、明るく美しく見やすいフロントライト付きの反射型TFT液晶を搭載していること、親指を使って入力しやすいキーボードが内蔵されていること、メールやWebブラウズが比較的簡単にCFカード型のPHSの追加だけで可能なこと、日本の実状にあったPIMソフトウェアを搭載していることだろう。

 デメリットは、独自のインターフェイスであること、日本だけでの販売のためオリジナルソフトウェアの数が少ないこと(海外で販売されるものは筐体は似ているがLinuxをOSとして採用しているので、ソフトウェアの互換性はない)、バッテリ駆動時間が短いことなどだ。もっとも、メリット、デメリットは人によって異なるし、あくまで筆者はこう感じた、ということで人によって感想はさまざまだと思う。なるべく具体的に書くことで、実際の使用感がお伝えできれば幸いだ。以下では、筆者がどう感じたかを、日記をひもときながら書き記していく。


キーボードによる入力

 MI-E21で新規にテキストを実際に入力してみた。キーボードはなかなか快適だ。キー配列もすぐに慣れることができた。最初、音引き「ー」の位置がわからずに困ったが、これは最下段の左から2個目だった。キーボードを内蔵したザウルスもMI-E1、MI-L1、MI-E21と3台目なので、かなりキーボードは位置や文字などが吟味され、入力しやすくなっている。


MI-E21(左)とMI-E1(右)のキーボード。最大の変更点は、変換とスペースバーが1つのキーにまとめられ、かなり大きく押しやすくなったことだろう

 親指による入力が非常にしやすいキーボードだが、欠点もある。キーの数が30個と機能キーが7個しかないので、どうしても組み合わせ入力が多くなる。それよりも問題なのは、あいかわらずローマ字入力中には途中で文字が表示されない。つまり、「つまり」と入力しようとしても、「t」を入力しただけでは、空白のままなのだ。「tu」と入力して初めて「つ」と表示されることになる。

 昔、発表会でシャープの人に、これはOSレベルの変更を行なわないといけないと伺ったことがあるので、変更には時間がかかるかもしれない。非常に入力しやすいキーボードではあるが、それでもタッチミスというのは通常のキーボードよりも多いわけで、残念な部分だ。また、「かな」ユーザーにはローマ字入力しかできないということは、最大の欠点となるだろう。一方、手書きはザウルスの優れた点で、手書き入力は非常にやりやすい。しかし筆者の場合、手書き入力そのものをあまり好まないため、申し訳ないのだがほとんど使っていない。

 キーは、「文字」キーを押すことで「ひら」がな、「カナ」、「数字」、「英字」を切り替えることができる。また、「全/半」キーを押すことで全角と半角を切り替えることができる。

 キー配列はよく考えてあり、たとえばurlを入力する場合も、「:」を入力する場合に「機能」キーを、「/」を押す場合に「↑(シフト)」キーを押す必要があるが、これは非常に入力しやすい配置だろう。句読点も位置が分かれており使い勝手がよく考えられていると思う。ただし「、。」混在といった使い方はできないようだ。また、記号なども呼び出しやすく比較的入力しやすいと感じた。


別のプログラム「ユーザー辞書登録」。プログラムから呼び出しができて単語登録ができ、単語登録が終わった後で前のプログラムに戻る方が便利だろう
 そんなわけで狭いスペースでよく考えられたキーボードではあるが、確定した文字の再変換ができないのはつらい。こういったPDAでは、誤入力やひらがななどで入力してしまう場合もあるので、PCやPocket PCのように再変換ができる方が便利だろう。また、英字を入力するとき、設定によって自動的に半角になったりするモードがあった方がいいと思う。

 なお、単語登録は別プログラムとなっているのでメニューなどから呼び出すことはできず、一度インデックスから登録する必要がある。MI-E1では単語登録そのものができなくて、後からプログラムを購入したことを思えば改善されてはいるけれど、せめてメニューからプログラムを起動でき単語登録が終わったら、前のプログラムの使用していた場所へ戻る方が使い勝手がいいと思う。

 MI-E21では、一度コピーした内容は電源を切っても覚えているのは当然あるべき姿とはいえすばらしい。

 キーボードは、最初から長文を入力しようとすると結構つらいかもしれないが、書いていて結構長文になってしまうことは何度もあった。このレポートにも一部、MI-E21で書いた日記などが生かされている。そういった意味では、細かな不満はあるが立ちながらの文字入力に非常に適したPDAであるということが言える。


通信の利用

 MI-E21の記事のために、ほとんど使わなくなっていたパルディオ611sをP-in m@sterに機種変更した。PDAで利用するなら、はっきりいって接続のしやすさ(特に電車の中)においても料金においてもDDIポケットのAirH"系のCFカードとかの方がいいと思うが、音声通話とか自動受信とかをやってみたかったのでP-in m@sterを選んでみた。ちなみに価格は、イヤホン接続用のケーブルを含めて約1万円程度だった。

 機種変更の帰りに設定をささっと終えて、さっそくメールをチェックしたりWebページにアクセスしてみた。設定自体は、通常の通信環境の設定とあまり変わりはない。用語がわかっていれば比較的簡単に設定できると思う。

 ただし、ザウルスを利用しているユーザーで通信を利用する人がどういった環境でどういった使い方をする人が多いのかは知らないけれど、設定ソフト(インターネット接続設定アシスタント Ver2.5)を使ってPHS機を選択した場合には、プロバイダの電話番号もPHS用の電話番号を選択してほしいものだと思う。逆にPHSがメインで、選択で固定電話のアクセスポイントにつなぐ方がいいのではないかと思う。設定ソフトでは、PHS用ではなく一般的なアクセスポイントを選択するという警告が出るだけだ(昔MI-E1でつまずいたところでまたひっかかってしまった)。仕方ないので、iPAQ Pocket PCを使ってプロバイダのWebサイトにアクセスし、電話番号を確認して訂正した。

 パスワードなどはきちんと表示されるので入力しやすく、設定を終えた後は****になるので人に見られる心配はない。細かなところだが嬉しい配慮だ。さらに、サーバーにメールを残す設定にしてあっても、一度MI-E21で読み込んだメールは再度読み込むことがないので安心だ。


簡単に利用でき自動での受信も可能など使い勝手はいいが、機能的にはかなり見劣りする。マルチアカウントやツリー構造などには対応していない メールのブラウザ自体は使い勝手がいい部分もある。リターンキーで折り返された文章も、自動的にかなり適切につなげて表示してくれたりする 一覧表示ではメールの内容を一部表示することもできる

 MI-E21のメールで不満な点は、なんといってもマルチアカウントに対応していない点だろう。今の時代、プロバイダ代も安くなったこともあって複数のプロバイダを利用したり、会社と私用を分けている人も多いと思う。もちろん、複数のメールアドレスを登録できるのだが、受信をする場合には、一々「メール」から「接続先」を変更しないといけない。一度にメールをチェックできないのはちょっと面倒に感じる。今後、マルチアカウントに対応してくれることを期待したい。

 また、スパムメールが山のように届く現在においては、メールはもっと簡単に削除できる方がいい。メニューから削除するだけでなく、ボタンによる一括削除などもそろそろ必要だろう。また、残したいメールのために保護機能なども必要だと思う。一方、メールのタイマー受信は便利な機能だ。筆者は平日は1時間ごとにダウンロードする設定にしている。ただし、これをやるとバッテリーの持ち時間はだいぶ短くなるようだ。


AirH" card petitで通信してみる

 DDIポケットのAirH" card petit RH2000PをWebサイトの情報をもとに使ってみた(NECインフロンティア製のCFE-02用はすでにシャープのサイトでザウルス対応ドライバが公開されているが、RH2000Pは11月19日公開予定となっている)。いまのところ問題なく使えているが、56kbps用のモデムドライバを使っているので、それほど高速とはいかない。しかし、まずまずの速度での利用は可能だ。色々考えた結果、AirH" card petit RH2000Pは、定額ではなく準定額にした。64kbpsにしなかったのは電車の中でも使いたいからだ。パケットにより、AirH"は電車の中程度であればかなり不自由なく使える。ただし、さすがに新幹線内での利用は、筆者が試した限りでは、何度か切断されたりしてあまり実用的ではないようだ。


AirH" card petit RH2000Pではかなり出っ張る。出っ張りがいやな人はP-in m@sterやCFE-02の方がいいかもしれない AirH" card petit RH2000PとP-in m@sterの大きさの比較。アンテナは似ているが長さは違う。MI-E21はCF Type IIスロットなのでどんなCFカードでも利用可能

 自動メール受信設定を利用して1時間ごとにメールを受けたりしてみた。AirH" card petit RH2000Pを使えば定額で利用できるため、P-in m@sterよりはこうした用途にずっとむいていると思う。もっとも、定額だからといって、ひんぱんに使っていると、バッテリー切れの問題が出てくるが、これは外付けのバッテリーを使うことで解決できる。少々気になるのが、AirH" card petit RH2000Pはかなり出っ張るので、ぶつけたりした時に、CFカードスロットを壊してしまいそうな気がする点だが、実は実際の使い勝手は、思ったほどというか見た目ほど悪くはなく、とくにAirH" card petit RH2000Pだから問題になったというとはなかったと思う。すでに消費電力が小さいCFE-02も発売されているので、定額で利用するならそちらを選ぶ人が多いだろう(筆者の場合は、準定額を使いたいのでCFE-02というわけにはいかないのだが)。

 AirH" card petit RH2000の利点は、料金だけではない。電車の中でも接続が切れにくい点も重宝する。筆者が利用してみた範囲では、新幹線内ではさすがにかなり切断されてしまうが、それ以外の電車では遅くなることはあってもほとんど切断されるということはなかった。


(明日の後編に続く)


・ ザウルスMI-E21製品情報
  http://www.sharp.co.jp/products/mie21/
・ ザウルス情報ページ
  http://www.ezaurus.com/mie1/product/index.html

細かな改良を受けて使いやすくなった新型ザウルス

・ Air H" Card petit対応予定(シャープ)
  http://zaurus.spacetown.ne.jp/about_airh.asp


(山田道夫)
2001/11/08 18:51

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