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CLIE PEG-TG50ファーストインプレッション
[2003/03/28]

事務機のようにシンプルなデザイン
使い勝手のいい「カシオペアE-3000」
[2003/03/07]

ソニー CLIE PEG-SJ33で考える日本人のPDA
[2003/02/14]

「CFGPS2」とPocket PCで実用的ハンディGPS
[2003/01/31]

SL-C700を巡る冒険
[2003/01/17]


2002年

2001年

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事務機のようにシンプルなデザイン
使い勝手のいい「カシオペアE-3000」
山田道夫
1996年に開設したサイト「携帯電脳」を模様替えし、1999年1月スタートしたWeb&メールマガジン「MOBILE NEWS」編集長。モバイルノートPCからデジタルガジェットまで「小さくてデジタルなもの」にこだわった最新情報を提供している


冬の時代? のPocket PC 2002

デザインは非常に実用的である種の機能美を感じさせる。事務機の美といったものだろうか。ただし、Pocket PC 2002マシンはみんな似すぎている気もしないでもない
 Pocket PCに元気があまり感じられない日々が続いていた。シャープのLinuxザウルスが640×480ドットの液晶で華やかさを振りまき、ソニーのCLIEが比較的低価格で多機能を誇るご時世に、いまだに240×320ドットのいわゆるQVGAで、本体に親指キーボードを搭載したモデルはなくPDA世界の中では比較的地味な存在となっている。

 しばらく新製品が出なかったこともあって、一時は撤退の誤報まで出てしまったカシオ計算機(ちょうど大型商談があった頃で大変だったらしい)や、Pocket PC陣営では唯一堅調で3月15日に新製品を2機種(GENIO e550Cとe550GD)を出す東芝、米国ではすでに発売済みでこの春には従来機種とアダプタに互換性のある多機能なhp iPAQ Pocket PC h5450の発売が予告されているhpなど、それなりに話題も豊富になってきた。なお、日本人好みと思われるがビジネス用途では厳しそうなhp iPAQ Pocket PC h1910が出るかどうかはいまだに不明だ。しかし、どうもPocket PC 2002に華がないのは相変わらずだ。それはOSにも言える。なにしろ、いまだに2002などという名称のものを使っているくらいだ。

 登場時には、他OSに比べて先進的だったマルチメディアOSだが、抜本的な変革がないままなため、他機種と同等か見劣りするようになってしまった。また、標準で付属するソフトウェアも、基本的にはPocket PCの時代からあまり変更されていないため、使い勝手はそれなりに好きだが、やや古さを感じさせるようになった。今ではボイスレコーダーも携帯用オーディオプレーヤーも電子辞書も、専用機の方がはるかに高機能で使い勝手がいい。

 Pocket PC 2002の場合、付属しているPIMが別に他機種に劣るわけではないし、フリーウェアやシェアウェアで拡張すれば非常に使い勝手は良くなる。カシオのように独自のPIMソフトウェアをバンドルしているメーカーもある。だが、これといったものがなく特色がいまひとつ目立たない気がする。だが、そんなPocket PCにも得意な分野、Pocket PCでないとだめな分野がある。それが拡張性だ。そして(PDAとしては)さまざまな周辺機器が利用可能なことだ。


カシオペアE-3000の目指す地平

 カシオ計算機は、3月4日、カシオペアE-3000のCPUがインテルの新プロセッサPXA255 400MHzであることを公表した(XScaleテクノロジの400MHz CPUであることは1月22日のE-3000発表時に公表済みなので、改めて発表という印象ではあるが)。また、従来約15時間とされていた標準電池でのバッテリー駆動時間を約18時間と、オプションの大容量バッテリーの駆動時間を約30時間から約36時間と訂正した。

 ここにカシオペアE-3000(以下E-3000)の方向性を見て取ることができる。はっきりいってしまえば、E-3000はバッテリー駆動時間が非常に長いこと、新CPUを搭載したことを除けば目新しさは感じられない。デザインはすっきりしていて筆者の好みだが、だからといって万人受けするデザインかというと微妙なところで、革新的なデザインでもない。言い方を変えれば、優れた事務機が持つようなある種の機能美を持つと形容することもできる。

 CPUは、PXA255というインテルXScaleアーキテクチャ採用の新CPUとなった。E-3000試作機を触った印象では、画面の切り替えやプログラムの起動などもなかなかきびきびした動作で不満はまったく感じないが、Pocket PCの中で特に高速といった印象ではない。


CPUは、PXA255となった。XScaleアーキテクチャの期待の新CPUだ。試作機での印象は、たしかに高速だがiPAQ Pocket PCなどに比べて格段に速いというほどではない CPUは3段階にユーザーが速度を調整することができる。E-3000は元々かなりバッテリー駆動時間は長いので、一般的な利用方法では逆にあまり気にする必要はないかもしれない

 バッテリーこそまた取り外し可能になったし、ディスプレイも半透過型TFT液晶となったが、カシオペアとしては目新しくてもPocket PC全体から見ると他機種で同様なものがすでに登場しており、さほど新味はない。価格も6万円弱と、Pocket PC 2002マシンとしては標準的だが、CLIEなどの価格と比較するとやや割高感がある。

 ディスプレイは半透過型の3.5インチTFT液晶で、太陽光の直射日光下ではやや写り込みがするが、どこでも美しい描画が可能だ。デジタルカメラで撮影した画像も、付属のSDカード/MMCスロットやCFカードスロットから直接見ることができ、美しい描画が可能だ。ただし、画像の色味などは美しいが、解像度が240×320ドットのため、解像度の点では少々物足りなく感じるかもしれない。また、センサによるバックライトのオン・オフといった機能はなく、人が自分の判断で増減する必要がある。筆者が試作機を使った印象だと、輝度は半分くらいにしておけば明るいところでも暗いところでも美しい描画が可能なようだ。

 色味は自然で非常に美しい。とはいっても半透過型であるので、透過型と比較するとやや白っぽい感じで少し見劣りはする。Pocket PCの制約のためか、240×320ドットの解像度しかない点は残念だ。他のOSを搭載した製品には、ザウルスSL-C700のように640×480ドットの製品や、CLIE PEGシリーズのように430×480ドットと、大型の液晶を使ったPDA製品も増えている。Palmでさえ320×320ドットの液晶のPDAを出しているご時世だ。正直なところ、240×320ドットの液晶というのは、Pocket PCのポテンシャルを考えると力不足だと思えてきて残念な部分だ。

 CFカードスロットとSDカード/MMCスロットは筐体の上部にあり、CFカードスロットにはカードを押し出すボタンもあってなかなか使いやすい。と言いたいところだが、少々配置が近すぎる感がある。また、CFカードを取り出すためのボタンは、スタイラスなどで押す使い方でスタイラスなどがないとやや使いにくいようだ。CFカードスロットとSD/MMCスロットも近すぎるので、CFカードで出っ張り部分のある機器を使っていると、SDカードを取り外すためには、CFカードも取り外す必要がある。

 そのほか少し気になったのが、試作機なためにボタンが敏感すぎるのか、ポケットに放り込んでおいても起動してしまいがちな点だ。筆者は、「設定」→「ボタン起動設定」→「プログラムによる電源オンを有効にする」チェックボックスをオフにしてしまった。また、電源ボタンも試作機のためか敏感すぎる気がする。ちょっと触っただけでも電源が入ってしまう。筆者としてはもうちょっと渋い方が好みで、製品版でどうなのか気になる部分だ。


半透過型の液晶は外でも屋内でも美しく非常に実用的だ。少しだけ白っぽい気がするのと、多少写り込みするのが残念な点だろうか 付属するソフトウェアは標準的なものだが、オリジナルなスケジュールやアドレス帳もWebサイトから入手可能。Pocket IEだとさすがに少し狭い気がする

周辺機器を使ってみて

 試しにAirH" AH-N401Cを使って音声通話をしてみた。音声通話は、NECインフロンティアのWebサイトから、ソフトウェア「Pocket PC 2002用音声通信専用アプリケーション(一般用)」をダウンロードしてインストールする必要がある。E-3000では残念ながら、Wake On Ring機能には対応していないので、東芝のGENIO e550Gシリーズのようにスリープ状態で待ち受けることはできずに、待ち受けはE-3000が起動した状態でないといけない。

 インストールするとおなじみの画面となるので、普通に音声通話をしたり待ち受けたり可能だ。音質は、受信は悪くはないが、PHSほどではない。PDCよりややましといったところだろうか。相手側は、音声が二重に聞こえてしまうようなのでビジネスでの利用などにはあまり向かないだろう。あくまでも携帯電話を忘れてしまったり、携帯電話が輻輳で使えなかったりした場合の予備といった感じだろうか。

 iPAQ Pocket PC H3950/3970やPocket LOOXのように音が悪すぎて使えないことはないが、GENIO e550Gシリーズのように、待ち受けで100時間近くも使えるわけでもないので、どこまで実用かはなかなか難しいところだ。

 またアイ・オー・データ機器のCFGPS2を利用してあちこち歩いてみた。本体にSDカード/MMCスロットとCFカードスロットを搭載したE-3000の場合、CFカードスロットにCFGPS2を装着して、SDカードスロットに地図を入れればハンディGPSのできあがりとなる。山手線内の詳細図などを入れると20MB程度にはなるので、SDカードにインストールした方がいいだろう。快適に利用が可能だ。やや大振りのCFGPS2のアンテナ部分も、E-3000で利用すると一体感が増す気がするのはひいき目過ぎるかもしれない。  E-3000をハンディGPSがわりに利用するには、半透過型の液晶は太陽光下でもやや写り込みはするがなかなか美しく、非常に適しているといえる。ハンディGPSでの利用がメインだったらE-3000という選択は、長大なバッテリー駆動時間とあいまってなかなか良い選択だと言える。


ハンディGPSとしての利用には非常に適している。CFGPS2はアンテナが結構大きいが、バランス良く利用可能だ CFGPS2に付属するPocket Mapple Digitalで位置情報を表示している。例では国立霞ヶ丘競技場のスタンドで測位している

結論にかえて

 E-3000は非常にオーソドックスなマシンでとても実用的だとは思うが、華がない。PDAというのはもちろん実用でなければ続かないし、売れないとも思うのだが、ある種の華も必要ではないかと思う。遊びということではない。チャームというかちょっとした魅力ということだ。

 E-3000には華はないが、機能的な事務機のような美が感じられる。あくまでも実用で、自分のしたいことがはっきりしているユーザー向けの製品と言える。特にGPS用途とか、Pocket PCでないと難しいといった用途にはなかなかいいだろう。液晶も美しい。実用に徹した1台だと思う。


・ カシオペアE-3000ニュースリリース(カシオ)
  http://www.casio.co.jp/release/2003/e_3000.html
・ カシオペアE-3000製品情報(カシオ)
  http://www.casio.co.jp/pocketpc/e3000/
・ AirH" AH-N401Cユーティリティダウンロード(NECインフロンティア)
  http://www.necinfrontia.co.jp/products/cf/utility03.htm
・ CFGPS2製品情報(アイ・オー・データ機器)
  http://www.iodata.co.jp/products/peripheral/2002/cfgps2/

最長30時間連続駆動が可能な「カシオペア E-3000」
カシオペアを利用したモバイルソリューションの展示会


(山田道夫)
2003/03/07 18:56

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