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CF型かPCカード型か? AirH" 128kbps通信対応カード
山田道夫
1996年に開設したサイト「携帯電脳」を模様替えし、1999年1月スタートしたWeb&メールマガジン「MOBILE NEWS」編集長。モバイルノートPCからデジタルガジェットまで「小さくてデジタルなもの」にこだわった最新情報を提供している


SDカード型PHS「AH-S101S」
 DDIポケットが元気だ。PHS退潮の風潮の中でも、8月の契約者数は微増となっており、特にDDIポケット東京に限れば大きく契約数を伸ばしている。8月29日には、本多エレクトロン製AirH" 128パケット方式対応CFカード型PHSも発売された。実売価格は、先に発売されたPCカード型のAH-G10より安いくらいで人気を集めているようだ。

 本誌ニュースでも既報だが、9月5日に開催されたDDIポケットの記者説明会では、NECインフロンティア製CFカード型PHS「AH-N401C」、USB接続タイプの富士通製PHS「AH-F401U」の発表が行なわれた。いずれも今秋発売予定だ。また、一部報道で話題になっているSDカード型のPHS「AH-S101S」が年内発売であることが明らかにされている。

 DDIポケットのAirH"は、最大128kbpsのパケット通信方式を採用しており実際に利用していても切れにくい。ベストエフォート方式のため、実際に128kbps出ることはまずないが、平均して80kbps以上出るような場所も多い。全国的な展開を行なっているため、現在においても人口比率で93%まで128kbps通信をサポートするなど、非常にがんばっている印象を与える。DDIポケットは、若年層の音声通話とメール用途中心だったPHS市場から、データ通信に特化したサービス需要に目を向けた切り替えがうまく進んでいると言えるのかもしれない。

 さらに、128kbpsのパケット通信も10月1日より、月々4930円から利用可能になるサービスも開始される。別途プロバイダー代は必要だが、今はIIJが月300円でモバイルプロバイダーサービスを実施するような時代だ。従来よりもかなり安価で利用可能になるだろう。

 DDIポケットのサービスを利用した日本通信も、各種の興味深いサービスやPHSカードを発売しており、こちらも要チェックだ。法人ユーザーをメインターゲットとして想定しているようだが、個人向けにもさまざまなサービスを提供している。料金が半年または1年分を前払いするタイプの契約ではあるが、この点が気にならないようであれば、個人で利用してみるのも面白いのではないかと思う。CFカードタイプのu100cも発売される。

 なお、従来サーバーを使ったアクセラレーター機能(色数を減らすなどしてより高速な表示を可能にする)は日本通信だけが行なっていたサービスだが、10月以降はDDIポケットのプロバイダーサービスprinを利用すれば、DDIポケットユーザーも高速表示が可能になるようだ。DDIポケットは非常に前向きに、ユーザー視点に立ったサービスを実施しているように思える。


128kbps対応カードへの買い換え

奥からMC-P300、AH-G10、AH-H401C。後になるに従って出っ張りは小さくなっている。CFカードタイプのAH-H401Cの小ささが際立つ
 さて、ややDDIポケットのサービスについての前置きが長くなったが、今回は筆者がようやく128kbpsに対応したデータ通信カードへの買い換えを検討しているため、その使い勝手を調べてみようというのが本題だ。

 筆者は、発売以来MC-P300を愛用している。料金プランは当初ネット25をにしていたが、定額サービス開始後は32Kのパケット通信サービスを利用している。

 32kbpsは高速とは言い難いが、筆者の場合は、ノートPCで外出先や電車の中でメールを読んだりWebブラウズする際に利用する程度なので、さほど不満なく使ってきた。Webブラウズなどの場合は、読んでいる時間も長いため、速度の遅さは逆にそれほど気にならない。そのため、地下鉄でよくWebブラウズすることがある。ほとんど駅でしかデータは更新されないが、駅と駅の間はWebページを読んでいればよく、パケット通信のため、駅と駅の間は通信ができなくても、再度通信可能な駅などへたどりついた時に更新してやればいいだけだ。

 10月1日より128kbpsもネット25が対応するため、月25時間までは5800円(1年間契約割引時は4930円)で利用可能となる。筆者の利用方法だとPCカードタイプでも十分だが、CFカードタイプにすればPDAなどでも利用可能なので、どの程度速度や感度が違っているのか調べてみる気になったわけだ。4930円という月額料金は安いとは言い難いが、月25時間使っていることはマレでもあるため、4930円くらいだったらより高速なサービスを使ってみようという気になった。やはり、32kbpsでもWebブラウズとメールのチェックだけだったらあまり困らないと言っても、32kbpsと128kbpsとでは体感スピードはかなり違うからだ。筆者は低速でもあまり気にしない方だがある程度の速度がなければ、実質的に利用できないサービスもあるし、高速な方が嬉しいことも確かなことだ。

 そこでDDIポケットからAH-G10とAH-H401Cを借りて、簡単に速度など比較する気になった。PCカードタイプとCFカードタイプでは感度などに違いがあるのかどうか少し気になったからだ。

 調べてみるとはいっても、同時に接続して調べられるわけではないので(ノートPC2台で同時に試すと、その分、付近のPHS電波をそれぞれが使用することになるわけで、普通に利用する場合よりも速度が遅くなる可能性があると思う)、順番に1つずつ使用しただけなので大雑把な目安程度にしかならないと思う。また、状況や地域による差異も大きいかもしれない。そういったわけで、実際の速度なども場所や状況によって大きく異なってくると思うので参考程度に読んでいただければ幸いだ。


AH-G10とThinkPad s30に装着してみた。それなりに出っ張るが気になるほどではない。データ通信中は、黄緑色のダイオードが発光して状況を知らせてくれる AH-H401CをThinkPad s30に装着したところ。やはりそれなりに出っ張るが、我慢できないほどではない。データ通信中はYとMの文字の形のダイオードがやはり発光する

実際にWebブラウズとダウンロードしてみる

 比較の意味で、AH-G10とAH-H401Cで筆者の事務所でWebブラウズしてみた。スピードテストとしては、定評のあるスピードテストWebサイトであるSPEED TESTを利用する。使用したマシンは、ThinkPad s30、Windows XP Home Editionモデル。PCカードスロットに刺して利用した。AH-H401Cは、CFカードスロットも搭載されているが、比較のためにPCカードアダプタをあえて利用してPCカードスロットで利用している。


iPAQ Pocket PC H3850にデュアルPCカード拡張パックを装備し、CFカードアダプタに入れたAH-H401Cを刺してみた AH-H401CではなんといってもCFカードタイプのPDAなどで威力を発揮するだろう

 SPEED TESTサイトで「160kバイト」を試してみた。ブロードバンドを利用していれば、「2Mバイト」でもあっという間に速度が表示されるが、AirH"などの場合はかなり待たされる。最初の回がもっとも高速な場合が多い印象が個人的にあるので、3度計ることにした。

 まず、AH-H401Cでは、1回目96kbps、2回目87.5kbps、3回目80.5kbpsだった。AH-G10をつなぎ直したら、1回目92.8kbps、2回目84.2kbps、3回目87.8kbps。中心街へ行けば100kbpsを超える場合もあるが、住宅地の中の事務所なため、こんなものだろう。平均で、AH-H401Cは88kbps、AH-G10が88.3kbpsなので、違いは誤差のうちだろう。ほとんど同じくらいの電波の受信能力だと思われる。

 なお、32kbps定額のPCカードタイプのPHS機であるMC-P300の場合は、1回目と2回目が28.1kbpsで3回目が28kbpsだった。筆者が3月に試した時は、事務所は50kbpsくらいの速度だったため、速度自体はかなり改善されている印象を持った。

 また、試みにiPAQ Pocket PC H3850に旧型のデュアルPCカードジャケットを装着して、AH-H401CとAH-G10でどれだけのダウンロードが可能かをはかってみた。Pocket PC用に最適化されたスピードテストサイトが見当たらなかったため、試みに試してみただけのものだ。

 812KBのファイルのダウンロードを3回ずつ行なってみた。AH-G10では、1回目1分29秒、2回目1分47秒、3回目2分7秒、AH-H401Cでは、1回目2分19秒、2回目2分21秒、3回目1分37秒程度かかった。かなりばらつきが大きいが、AH-G10では平均107.7秒(60kbps程度)、AH-H401Cでは、125.7秒(51.7kbps程度)と多少差が出たがこれも誤差の範囲内のような気がする。

 また、試しにiPAQ Pocket PC H3870でAH-G10を利用して「ケータイWatch」のフロントページをリロードしてみたところ、NetFrontで45.86秒かかった。ThinkPad s30の場合は28.9秒程度だった。


SPEED TESTの結果の例。筆者の事務所の環境も前は50kbpsくらいしか出なかったのが、現在はかなり改善されている NetFront V3のベータ版でも残念ながらSPEED TESTは利用できない。そのため、812KBのファイルのダウンロード時間を計ってみた

結局、何を買うか

 100kbps以上出る場所は非常に限られている。しかし、普通に80kbpsを超える場所も多いようだ。3月の128kbpsサービス開始時には、筆者の事務所では50kbpsくらいしか出なかった速度が現在は80kbpsを超える速度に改善されている。そういった意味では、着実にサービスは向上していると感じる。

 また、たとえば、32kbpsの定額では、インターネットラジオはぶつぶつ切れて聞き苦しく実用的ではなかった。しかし、128kであれば60kbpsを越えている時点で、まったく実用上は問題なく利用可能だ。現在のノートPCは、バッテリー駆動時間が長い機種も増えているので、インターネットラジオも普通に聞くことが可能だ。

 現在はホットスポットがブームの予兆を見せ、話題になることも多い。しかし、いちいち決まった場所に行ってデータ通信なんてするものだろうか。どこでもしたいときにするのがデータ通信だと思う。そういった意味では、新幹線を含んだ鉄道以外は有料のホットスポットというのはあまり実際的ではないし、在来線では利用者が限られていて商売としてはきびしい気もする。

 もちろん、AirH"ならばいつでも必ず快適なデータ通信が可能なわけでもないし、場所によってはとぎれてしまう場合もあるが、非常に広範囲で使用可能だ。地下鉄の中でさえ利用可能だ。地下鉄の場合は、駅でしか更新できない場合がほとんどだが、駅に着いたときにリロードしたり新しいページへジャンプしたりして、駅と駅の間は、表示されているページを読んでいればいい。筆者は地下鉄の中でWebページを見ている場合が多い。

 さて、データ通信PHSカードをどちらにするかだが、筆者は使ってみた感じがほとんどAH-G10と差がないため、AH-H401Cにしようかなという気になっている。もっとも、128kbpsの準定額が始まるのが10月からなので、それに合わせて決めようかという気もしている。実際の通信速度は現在発売されている2機種を調べた結果あまり変わりはないだろうと思われるが、NEC製のCFカードタイプのPHS「AH-N401C」は音声通話が可能なようなので、音声通話は筆者の場合あまり使う機会がないだろうが、一方で筆者は多機能なモノが好みでもあるため、楽しみにしている。

 また筆者の場合、実際にはノートPCでの利用がメインになると思われるが、PDAでは利用できないため富士通製USB型端末「AH-F401U」は候補には入っていない。年内に発売されるSII製SDカード型端末「AH-S101S」も個人的に非常に楽しみにしているが、32kbpsまでの速度らしいこと、CFカードスロットを持つPDAであればCFカードを利用した方が汎用性が高いことから、実際に購入するユーザーの数はある程度限られるような気もする。Palm社のPalmデバイスかiPAQ Pocket PC、SD IOにソフトウェア的にアップグレードするだろうと噂され期待されているTreo 90であれば、利用価値は大きいだろう。


DDIポケット、USBタイプなどの各種AirH"端末を今秋投入
SII、AirH"対応のSDカード型端末を年内発売

・ AirH"128kが準定額料金コース対応のニュースリリース(DDIポケット)
  http://www.ddipocket.co.jp/news/i_h140902.html
・ AH-H401C製品情報
  http://www.ddipocket.co.jp/syohin/i_ah-h401c.html
・ AH-G10製品情報
  http://www.ddipocket.co.jp/syohin/ah-g10.html
・ DDIポケット
  http://www.ddipocket.co.jp/
・ 日本通信
  http://www.j-com.co.jp/prepaid/


(山田道夫)
2002/09/12 18:55

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