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110Mbps時代のモバイルルーター、どちらを選ぶ?

110Mbps時代のモバイルルーター、どちらを選ぶ?

イー・モバイルとUQ WiMAXの違いをチェック!

 ノートパソコンやWi-Fiタブレットを持ち歩くユーザーにとって、出先での通信を可能にするモバイルルーターは、なくてはならない存在だ。都市部であれば公衆無線LANを気軽に使える環境が整ってきているけれど、コンパクトで持ち運びに配慮され、いつでも気軽に通信できるのがモバイルルーターのいいところ。Webブラウジングやメールのやりとり、SNSの利用など、ビジネスかプライベートかを問わずあらゆる用途で活躍するアイテムとして広く浸透している。

モバイルルーターの通信速度は110Mbpsに到達。サービス内容はどうか?

 モバイルルーターの分野では、スマートフォンが一般化する以前から魅力的な端末とサービスを提供してきたイー・モバイルとUQコミュニケーションズ(以下UQ)の2社が代表格と言える。採用している通信規格は両社で異なり、サービス内容もそれぞれに特色があるが、現在、イー・モバイルは「EMOBILE 4G」、UQは「WiMAX 2+」という名称で、どちらも下り最大110Mbpsの高速な通信サービスを実現している。

 クラウドサービスが普及し、扱うデータ容量がますます大きくなっている中、高速に通信できることと対応エリアの広さはモバイルルーターを選ぶ際の重要なポイント。どちらも通信速度が最大110Mbpsと差はないように思えるが、細かく見ていくとやはりいくつかの違いが明らかになってくる。今ならイー・モバイルとUQのどちらを選ぶのが賢いのか、チェックしてみたい。

通信速度、対応エリアの状況は?

 下り最大110Mbpsの通信速度に対応しているのは、イー・モバイルの「Pocket WiFi GL10P」と「GL09P」、UQの「Wi-Fi WALKER WiMAX2+ HWD14」という3機種のモバイルルーターとなる。このうち最新の「Pocket WiFi GL10P」と「Wi-Fi WALKER WiMAX2+ HWD14」はともにファーウェイ製で、スマートフォンを意識したようなタッチパネルタイプの液晶ディスプレイを搭載し、情報表示や各種設定が簡単に行えるようになっている。

「Pocket WiFi GL10P」(右)と「Wi-Fi WALKER WiMAX2+ HWD14」(左)

 スペック上は、「Pocket WiFi GL10P」の大きさが約91×57×14.7mm、重さが約120gで、対する「Wi-Fi WALKER WiMAX2+ HWD14」は約100×62×15.5mm、約140gとなっており、「Pocket WiFi GL10P」の方が、ややコンパクトで軽量。また「Pocket WiFi GL10P」の連続通信時間は約10時間で、「Wi-Fi WALKER WiMAX2+ HWD14」より30分ほど長くなっている。可能な限り、かさばらないようにしたい人、長時間使いたい人にとっては、イー・モバイルの方がわずかではあるがメリットがありそうだ。

「Pocket WiFi GL10P」がわずかにサイズ、重量がコンパクト
タッチパネル搭載でホーム画面や各設定画面などタッチ・フリック操作でスクロールできる
「Wi-Fi WALKER WiMAX2+ HWD14」
こちらもタッチパネルで操作可能。スマートフォン時代にぴったりのインターフェースと言える

 この2機種が対応している通信方式と通信速度に関して詳しく見ていくと、イー・モバイルはAXGP規格による下り最大110Mbps/上り最大10MbpsのEMOBILE 4Gに加え、下り最大75Mbps/上り最大25MbpsのLTEと、下り最大42Mbps/上り最大5.8Mbpsの3Gを利用できる。一方UQは、WiMAX 2+の下り最大110Mbps/上り最大10Mbps、WiMAXの下り最大40Mbps/上り最大15.4Mbps、そしてLTE(au 4G LTE)の下り最大75Mbps/上り最大25Mbpsとなる。

 通信速度はほぼ同等ということになるわけだが、対応エリアについては大きく変わってくる。EMOBILE 4G(AXGP)は全国政令指定都市の人口カバー率100%、LTEは全国政令指定都市および県庁所在地の人口カバー率99%、3Gは全国人口カバー率95%となっている。対するUQは、WiMAX 2+が東京都の環状7号線内から順次拡大している段階、WiMAXが全国人口カバー率94%、LTEが実人口カバー率97%という状況だ。

※EMOBILE 4Gのカバー率は2013年8月9日サービス提供開始時点
※LTEのカバー率は2013年9月末時点
※3Gのカバー率は2013年5月末時点
※WiMAX 2+のカバー率は当初予定の2013年10月末時点
※WiMAXのカバー率は2012年11月末時点
※LTE(au 4G LTE)のカバー率は2013年8月末時点

 最も高速な110Mbps対応エリアは、TD-LTEと互換性のあるソフトバンク/Wireless City PlanningのAXGPの設備、通信網を借り受けて利用していることもあってか、イー・モバイルの方が圧倒的に広い、ということになる。しかも、UQのWiMAX 2+対応エリアは、2013年度末時点でも関東、中部、関西の主要都府県の一部にとどまると見られる。2014年度末に全国主要都市に広げる予定としており、そこでようやく現在のイー・モバイルのAXGPとほぼ同等の範囲となるようだ。サービス開始時期の違いが大きいところだが、高速通信可能なエリアについては、今のところイー・モバイルが2、3歩リードしていると言えるだろう。

月額料金、契約期間の違いは?

 どんなに便利に使えるとしても、ユーザーにとって一番気になるのは、「実際にどれくらいお金がかかるのか」。その点、イー・モバイルもUQも、毎月の利用料金は一般的なスマートフォンのパケット定額プランの上限に比べれば安価に抑えられており、安心できる。

 具体的には、イー・モバイルで「Pocket WiFi GL10P」を利用する場合、契約期間2年の「4Gデータプラン(にねん)」では、「ずっとおトク割」適用で、月額3880円。当初の契約期間である2年間を経過して3年目以降も使い続ける場合であっても3880円から変わることはない、比較的シンプルな料金設定だ。

 UQは、かつては契約期間の“縛り”がないのがメリットの1つだったものの、その後、1年契約のプランが登場し、さらにWiMAX 2+開始にあわせて基本的に2年契約となった。「UQ Flatツープラス」のプランにした場合、イー・モバイルと同額の月額3880円だ。ただし、「UQ Flatツープラス おトク割」による525円割引(最大25カ月間)が適用された後の料金のため、3年目以降は4405円に増額されることになっている。

 現在、UQのWiMAX 2+では、キャンペーンでauのLTEサービス(下り最大75Mbps)の利用が無料となっている。本来、これは「LTEオプション」として追加料金1055円で提供されるもの。キャンペーン期間は2014年1月~5月31日までとなっており、2014年6月以降もLTEエリアで高速通信を使うなら、月額利用料は計4935円かかる。そして先述の通り、3年目以降は「UQ Flatツープラス おトク割」がなくなり、LTEオプションを加えれば月額5460円となり、イー・モバイルとの料金と比べて、さらに差は広がる。将来的には、年間1万8960円も多く支払う結果となるわけだ。

イー・モバイルとUQの契約プラン例と月額料金
イー・モバイルとUQの月額料金推移グラフ

 ちなみに、イー・モバイルでは3月31日までいくつかのキャンペーンを実施している。そのうち「もう一台無料キャンペーン(EM)」は、「Pocket WiFi」などイー・モバイルの端末を契約したユーザーが、2台目もイー・モバイルのスマートフォンを選んだ場合に、スマートフォンの月額基本料金を永年無料とするもの。

 さらに「Wi-Fiセット割」は、「Pocket WiFi GL10P」か「GL09P」のモバイルルーターいずれかと、イー・モバイルもしくはソフトバンクのスマートフォンを契約した場合に、スマートフォンのデータ通信料から月々最大980円(2年間)を割り引くというキャンペーン。家族が持つ最大5台までのスマートフォンについて割引を適用でき、計4900円も割安になるケースがある。ぜひとも有効活用したいところだ。

 UQの方は、「Wi-Fi WALKER WiMAX2+ HWD14」で「UQ Flatツープラス auスマホ割」を契約し、さらにauスマートフォンで「au スマートバリュー mine」を契約した場合、同一名義のauスマートフォン1回線の利用料金を月々980円(2年間)割り引く。

 4年契約することで割引期間が延長されるというようなキャンペーンもあるが、年を追うごとに通信技術が進化し、端末自体の性能も向上していくことを考えると、せめて2年というスパンで一区切りつけてアップグレードを図るかどうか見極めたいところ。そういう意味では、2年契約時の利用料金を比較検討するのが妥当だろう。

その他の制限、注意事項は?

 イー・モバイルでは、月間の通信量が7GBを超えた際に当月の送受信速度を128kbpsにする制限を実施するとしている。この点については、現在のところ、WiMAXとWiMAX 2+で制限を実施していないUQに分があると言えるかもしれないが、7GBという基準は、よほど大きなファイルのダウンロード・アップロードを繰り返したり、動画コンテンツを見続けたりしない限り、簡単に到達するレベルではない。

 UQも、一部では通信量に応じた速度制限を実施している。WiMAX 2+とLTEを組み合わせた「ハイスピードプラスエリアモード」については、月間7GB(または3日間1GB)の通信量を超えると通信速度制限が行われる。現在、通信量制限がない、WiMAXとWiMAX 2+の「ハイスピードモード」は、2年後に制限が導入される方針が掲げられており、2年後、実際に通信速度制限をするかどうかは検討課題とされている。高速通信が当たり前になるにつれ、何らかの通信制限が施されるのは避けられない流れとして受け入れるしかないのかもしれない。

 まとめると、高速通信可能なエリアが広大で、ずっと安価に使い続けられるイー・モバイル。費用負担が若干上がる場合があるものの、当面の間はヘビーに使えるUQ、という分け方になる。自身の使い方に合うサービスがどちらなのか考えて契約しよう。

日沼諭史