損しないためのケータイ料金再入門

第10回:3Gデータ通信のプリペイドプランを検証


 イー・モバイルが開始した3GによるPC向けのデータ定額を皮切りに、各社がこの市場に参入。新規契約に占める、データカードの割合も急上昇している。しかし、その多くはポストペイと呼ばれる後払い型の料金体系を採用しており、「使う時と使わない時の差が激しい」ユーザーが手を出しにくい。継続契約の縛りがあるのも、二の足を踏む要因といえる。では、より気軽に使えるプリペイド型には、どのようなプランがあるのか。今回は3G回線でプリペイド型のデータ通信を提供する、日本通信とイー・モバイルに焦点を絞り、料金やサービスをまとめた。

4種類の定額プランを選べるイー・モバイルの「EMチャージ」

 イー・モバイルは、主力のポストペイ型プランに加え、プリペイド型の「EMチャージ」を提供している。基本となる「スタンダードプラン」は、1MBにつき63円。このほか、315円の「1時間定額」、630円の「1日定額」、2205円の「7日定額」、4410円の「30日定額」という「選択型プラン」がある。基本使用料などは一切かからず、最終チャージ日から450日間利用できるのが特徴だ。30日定額なら、月の日数にもよるが、ポストペイ型の「スーパーライトデータプラン」を2年契約にした「新にねん」の最大金額の4980円より割安。下り最大7.2Mbps/上り最大5.8MbpsまでのHSUPAに対応しており、「Pocket Wi-Fi」などでも利用できる。

プリペイド用のプラン
スタンダードプラン63円/1MB
1時間定額315円
1日定額630円
7日定額2205円
30日定額4410円

 ただし、同社はSIMカードのみの契約は受け付けていない。利用には、ショップでの端末購入が必須となる。例えば、人気モデルのPocket WiFiだと、オンラインストアの価格は3万9580円。ポストペイ型プランに「にねんM」を適用すると1円から5980円になるため、プリペイド型での端末購入はかなり割高だ。1カ月間フルにデータ通信を行うようなユーザーは、ポストペイ型にした方がトータルコストは安くなる。

同じPocket WiFiでも契約種別によって端末代は異なる。なお、販促キャンペーンの端末代金割引については考慮していない

 一方で、データ通信の利用頻度が低く、7日定額や1日定額を活用する機会の多いユーザーなら、ポストペイで契約してしまうよりトータルコストを安く抑えられる。仮に、Pocket WiFiを1カ月に2回だけ1日定額で利用し、24カ月が過ぎたとしよう。プリペイドで契約した場合は、端末と通信費の合計が6万6040円(あらかじめ、90日間有効な1万円分がチャージされているため、1260円×3カ月は無料とした)。スーパーライトデータプランを上限(約14MBで上限に達する)まで使うと、13万5100円になるのでおトク度は高い。1カ月に1回だけ7日定額を利用することを考えても、2年で8万5885円(同様に2205円×3カ月分をあらかじめチャージされた分でまかなった)とポストペイ型より割安だ。


合計の比較グラフ

 この端末購入の初期費用を抑えるため、イー・モバイルは「アシスト840」という契約方法を用意している。2年契約前提で、端末代が2万160円割り引かれる。ただし、基本使用料が月々840円(2年で2万160円)かかるため、トータルコストは変わらない。ポストペイとプリペイドをミックスしたような体系だが、好きな時に使えて、好きな時に支払えるという魅力も半減してしまうため、初期費用を抑えるという明確な目的がある場合にのみ活用したい。端末代を安く抑えたいなら、同社が運営しているオンラインショップで、アウトレット品を購入するという手もある。

自動チャージは金額指定に要注意

 プリペイドの残高が切れたら、チャージを行う。金額は2000円、3000円、3150円、5000円、5250円の5種類だ。1日、15日、25日から日付を選択できる「日付指定」や、残高が1000円以下になった場合に決められた金額をチャージする「金額指定」も選択できる。支払いにはクレジットカードやWebMoneyを使用する。

 自動チャージを設定する場合は、金額指定とスタンダードプランの組み合わせに注意したい。スタンダードプランは、使えば使うほど料金がかかる仕組みで、容量課金のため残高が分かりづらい。1000円を切るたびにチャージされる金額指定と併用すると、実質的に料金は青天井だ。また、選択型プランの有効期限が過ぎると、自動的にスタンダードプランが適用となるため、定額感覚でネットを利用している間にチャージを繰り返し、料金が高額になる可能性も十分考えられる。基本は日付指定で、残高が足りなくなったら手動でチャージするようにした方がよいだろう。


Webサイトなどで提供期間や課金の仕組みは十分確認しておきたい

利用時間で課金され気軽な「b-mobile」シリーズ


「b-mobile 3G hour150」でセットになっているモデム「b-mobile Doccica」にはこのモデムが付属

 ドコモなどからMVNOとして回線を借り、データ通信サービスの提供を行っている日本通信は、時間課金が特徴のプリペイド型プランを用意。「b-mobile 3G hour150」や「b-mobile Doccica」がそれで、端末と通信料、プロバイダ料がセットになっている。前者は日本通信の公式ショップであるbマーケットで3万9900円。その名のとおり150時間分(480日間有効)の利用料も含まれている。利用時間がなくなった場合はチャージも可能で、「更新ライセンス」を購入する形となる。ライセンスは500時間(最大600日)のものが8万1800円、130時間(最大450日)のものが3万1800円、50時間(最大200日)のものが1万2800円だ。1分当たりの単価は以下のグラフのとおり。



 外出先で数時間つなぎっぱなしという使い方だと割高になってしまうが(例えば1日5時間、1カ月に20日間利用したとすると、2カ月経たずに150時間がなくなってしまう)、細切れにネットにつなぎたいというニーズは十分満たせるだろう。仮に、b-mobile 3G hour150に含まれる150時間を1年かけてじっくり使うとすると、1カ月辺りの接続時間は12時間30分。平日が20日だとすると、1日30分以上利用できる計算になる。端末代まで含めた3万9900円を1カ月換算すると3325円で、割安感がある。

 一方、後者のb-mobile Doccicaは、端末と通信料がセットで1万4800円。500分(約8時間33分で90日間有効)の利用時間が含まれ、公衆無線LANへの接続も可能だ。なお、無線LAN利用時には、1回につき30分が減算処理される。チャージは1000円~5000円まで1000円刻みで行えるほか、1万円もコースも用意。1分当たり10円の計算で、1000円なら100分、2000円なら200分利用できる。有効期限は1000~3000円が60日、4000~5000円が90日、1万円が120日。別途300円支払えば、有効期限を延長することもできる。

 先ほどと同様、1日30分、1カ月20日間利用したとすると、1万4800円でb-mobile Doccicaを購入し、1000円チャージすればよい計算になる。合計金額は1万5800円で、b-mobile 3G hour 150より初期費用が安く、手を出しやすい。その反面、チャージの料金は割高。b-mobile 3G hour 150がもっとも割高な50時間ライセンスが1分約4.27円なのに対し、b-mobile Doccicaは1分10円なので、あらかじめデータ通信を頻繁に行うことが分かっているなら、後者を選びたい。逆に、データ通信は月数回程度で接続時間も短いというのであれば、b-mobile Doccicaを選ぶのもありだ。



300KBながらおトクな「b-mobileSIM 300」と「Doccica U300」

 とはいえ、どちらのサービスも、1日中つなぎっぱなしにするような使い方には向かない。ヘビーユースを想定するなら、1カ月、6カ月、1年の使い放題コースが用意された「b-mobileSIM U300」を選択した方が安上がりだ。b-mobileSIM U300は1カ月が2980円、6カ月が1万4900円、1年が2万9800円。長期プランだと単価が下がり、1年利用だと月々約2483円と圧倒的に安い。ただし、b-mobileSIM U300は上り下りともに、通信速度が最大約300KBに制限されており、高解像度な長時間動画などの大容量コンテンツの利用には向かない。メールやWebサイト閲覧のような用途であれば十分だが、速度が必要な使い方をするなら別の手段を検討したい。


1カ月辺りの料金

 ちなみに、b-mobileSIM U300はSIMカード単体で提供されるサービスで、端末は別途自分で調達する必要がある。回線貸し出し元(MNO)のドコモ端末の一部がこのSIMカードに対応しているほか、数は少ないが日本で販売されているSIMフリー端末にも挿すことが可能だ。日本通信のWebサイト上で動作検証済みの端末が公表されているため、事前に参照しておきたい。日本通信自身も、SIMフリーの「b-mobile WiFi ルーター」を販売しているので、これを利用してもよいだろう。なお、Xperiaなどのスマートフォンでも利用は可能だが、データ通信専用SIMカードのため、音声通話には非対応。あくまでPDA的な使い方しかできない。また、データ通信用端末までセットで必要というユーザーには、このSIMカードとZTE製のモデムがセットになった「Doccica U300」という選択肢がある。こちらのbマーケット価格は、10カ月間使い放題で3万2800円。1カ月換算の利用料は3280円となる。

 用途や利用頻度にもよるが、ここまで見てきたように、プリペイド型プランは安価で運用の柔軟性がある。また、今回は通信方式を3Gに限定して比較したが、WiMAXで事業を展開するUQコミュニケーションズも、1日600円の「UQ1Day」を提供中だ。データ通信回線を選ぶ際には、ポストペイだけでなく、これらのプリペイドまで含めて比較検討してみてはいかがだろう?

 



(石野 純也)

2010/6/11 11:00