「クラウドデバイス」レビュー

NECビッグローブの新市場を見据えたAndroid端末


クラウドデバイス

 ISP(インターネットサービスプロバイダー)であるNECビッグローブが「クラウドデバイス」として新たにインターネット接続端末を投入している。現在はモニターサービスとして限定したユーザーに対してのみに端末を貸し出しているだけだが、今後は本格的な事業として立ち上げようとしている。今回はモニター向けに貸し出されているクラウドデバイスを借りて実際に使い勝手を試してみた。

 NECビッグローブがモニター向けに貸し出しを行っているのは、オリジナル開発ではなくCamangi社が手がける「Webstation」という端末になる。本体サイズは120×200×14.5mm、重さは390g。ディスプレイには7インチのTFT液晶(800×480ドット)を採用し、Android OSのバージョンは1.5で、CPUはMarvell PXA303 625MHzとなる。

 NECビッグローブでは、本サービス開始時には複数の通信回線に対応させていきたいようだが、今回の端末ではWi-Fi(802.11b/g)のみの対応となっている。そのため、モニターに対しては、イー・モバイルの「D25HW」がセットで貸し出されている。


吸盤式スタンド同梱スタイラスが用意されている
側面側面

 本体には4000mAhのバッテリーも内蔵し、スペック上ではスリープモードで4日間、インターネット接続時には4~5時間駆動するとある。端子は、microSDカードスロット(1~16GB対応)、USBコネクタ(Type AとminiB)、マイクとスピーカなども搭載されている。

 操作はタッチパネルとなっている。方式は感圧式で、本体背面にはタッチペンを収納している。画面横にはホームボタン、メニューボタン、クリアボタンという3つのキーを配置する。このあたりのユーザーインターフェースは、他のAndroid端末に近い仕様と言えるだろう。

 バージョンが1.5ということもあり、Webを見ている際のマルチタッチによる拡大縮小には対応していない。画面下部にでてくる「拡大」もしくは「縮小」の虫眼鏡アイコンをタッチすることで大きさを変えられる。ウェブ画面は同時に3画面しか起動できないようだ。

 本体にはモーションセンサーを内蔵しており、本体を縦にすることで画面表示も自動的に切り替わるようになっている。


上部下部
音量調節ボタンもう一方の側面には端子が配される
電源アダプタ端子、USB端子、リセットボタン、miniUSB端子、ヘッドフォン端子ディスプレイの横にホームボタンやサブメニューボタン、戻るボタンなどがある

 ホーム画面上にはブラウザや天気、ニュース、写真管理のフォトポケというメニューのほかに、体調管理や英単語、算数、相性診断などアプリへのショートカットが並ぶ。画面下には検索メニュー、BIGLOBEや同社が提供するAndroid情報サイト「andronavi」へのショートカットなども配置されている。「メール」というメニューもあるが、こちらはGmailへのリンクではなく、BIGLOBEのWebメールへのアクセスとなる。


ホーム画面ホーム画面(縦)

 ほかにも写真を表示するギャラリー機能、音楽再生、さらには青空文庫を閲覧できるビューワーアプリも揃えている。デジタルフォトフレームとして、microSDカード内にある画像を表示させていくことが可能だ。

 設定ではスライドの再生間隔(2秒、3秒、4秒)、スライドの切り替えパターン(フェードイン&アウト、左右にスライド、上下にスライド、ランダムに選択)などが切り替えられる。また製品パッケージには吸盤式のスタンドが付属しているので、デジタルフォトフレームとして据え置けるようにもなっている。


写真のサムネイル表示ウェブリメールに対応

 青空文庫アプリではすでに500本の文芸作品などが閲覧できるようになっている。設定では背景色や文字色を変更することができ、周りが暗いときには背景色を黒、文字を白にするなど、読みやすいように調整が可能だ。ただし、カッコや句読点などの禁則処理がうまくいっていないこともあり、必ずしも「読みやすい」というわけではないので、注意が必要だ。


青空文庫 for Androidラインナップ
テキスト表示画面ニュース画面

 Android端末であるため、Android Marketへアクセスして新しくアプリをダウンロードできるイメージがあるが、残念ながら現在のところ非対応となっている。他のWebからダウンロードするか、andronaviで提供されている無料アプリしか入手できないようだ。

 日本語はOpenWnnのフリック対応版アプリで入力する。ボタンが他のスマートフォンと比べて大きく表示されていて入力しやすいように感じるが、反応が鈍いので素早く打ち込むには慣れが必要そうだ。ちなみに、日本語フォントは一部、中国語と併用となっているのか「直接」などの文字が違和感のあるものとなってしまっている。


日本語入力欧文入力
ケータイ Watchを表示英単語漬けアプリ

 Webstationが便利だと感じたのは意外にも「使っていない時」だ。端末に触れていない時には自動的にスクリーンセイバー状態となり、全国の天気を自動的に表示してくれるようになっているのだ。普段、リビングなどに置いておけば、いつでも天気を確認することができる。


気象情報アプリ地域毎の表示にも対応

 Webstationは、スマートフォンを大きくしたデバイスという位置づけとしてとらえると、やや拍子抜けするかも知れない。持ち歩く端末というよりも、自宅などでちょっとインターネットの情報を検索したり、デジタルフォトフレームとして活用する程度がぴったりと収まるデバイスと言えそうだ。

 実際、BIGLOBEのポータルページは、旅行情報やレストラン検索、株価などの情報を閲覧するには便利に使える。新たにアプリケーションを追加して機能を強化してしていくというよりも、絶えず天気予報やニュースなどを受け取り、表示していくのに最適なツールと言えるだろう。

 全体的に反応速度がやや遅く、快適な操作をしにくいという面があるものの、今後、新たな市場を切り開いてくれそうなデバイスとして注目しておいても良さそうだ。

音楽機能楽曲再生中の画面
Androidの設定画面

 



(石川 温)

2010/3/19 12:20