「Xperia」速報レビュー
コミュニケーションの形を変える新感覚スマートフォン
コミュニケーション・エンターテインメントを旗印に掲げ、「Timescape」や「Mediascape」といった新感覚の機能を搭載したソニー・エリクソン製の「Xperia」が、4月1日、ドコモから発売された。Xperiaは従来のスマートフォンとどこが違うのか。また、iモードなどが搭載された一般的なケータイユーザーはどのような点に注意すればいいのか。短い期間ではあるが、NTTドコモから事前に端末を借りることができたので、注目の機能や使い勝手などをレビューしてきたい。
Xperia。カラーは写真の「Sensuous Black」のほか、「Luster White」を用意 |
側面のカーブなどはTimescapeのデザインと統一されているとのこと | 「Sensuous Black」はマットな質感で手触りがいい |
■コンセプトが斬新な「Timescape」
Xperiaを語る上で避けて通れないのが、「Timescape」と「Mediascape」だ。これらのソフトは「シグネチャーアプリ」と位置づけられ、Xperiaの大きな特徴となっている。前者は、不在着信、写真、音楽に加え、Twitterやmixiなどの各種履歴を管理するソフトのこと。後者は、音楽、ムービー、写真をシームレスに扱えるツールとなっている。
そこで、まずはTimescapeを使ってみた。実利用に近い環境を試すため、今回のレビューでは、自分の普段利用しているアカウントを登録。Twitter、mixi、メールをそれぞれ読み込むように設定した。登録の際には、普段利用しているIDとパスワードがあればよい。TwitterやメールはTimescapeからダイレクトに設定できる。一方、mixiは一度ブラウザが立ち上がり、設定ツールをダウンロードする仕様となっていた。
準備が終わると、中央の「メインSpline」に、全ての履歴が時系列で表示される。指を横になぞると、それぞれの「Spline」に切り替わる仕組みだ。今までバラバラだった情報がひとまとめになるのは、意外と新鮮。上手く使えば、情報収集が効率的になると感じた。グラフィックの美しさや、滑らかな動きにも注目したい。ただし、1枚1枚のタイル表示エリアはそれほど大きくないため、全文が表示されるわけではない。詳しい内容を見る場合は、各サイトや機能にアクセスする。例えば、デフォルトの状態だと、Twitterやmixiはブラウザが、メールはEメールアプリが起動した。マルチタスクのため、あからじめこれらのアプリが起動していれば、切り替えはスムーズだ。
メインSplineでは、全ての履歴が時系列に並べられる | Splineを写真の表示に切り替えたところ |
また、各タイルの右上にある「∞」(Infiniteボタン)を押すと、電話帳にひも付けた関連情報を引き出せる。事前に設定しておく必要はあるが、逆にTimscape上からの関連付けも可能だ。いきなり全てのアカウントを電話帳に登録するのは、作業量が多くなり、かなり時間がかかるため、しばらくTwitterのタイムラインをながめつつ、電話帳に登録してある人がつぶやいたらInfiniteボタンを押すようにするとよいだろう。この設定をしておけば、例えばTwitterなどの投稿を見て、返事は電話やメールで行うということが可能になる。筆者には、Twitterを見て電話やメールをするという経験が何度もあるが、それをよりスムーズにできると考えれば分かりやすい。初期設定の状態から始めると、それなりに手間が必要なので、気長に育てるつもりで使っていきたい。
パネルの右上に輝くのが「Ininiteボタン」 | ここから情報をひも付けることができる | 情報を紐付けると、アドレス帳からTwitterなどの投稿を参照可能に |
Timescapeでは、Androidの“アプリ間連携”を活かすことも可能だ。筆者はTwitterクライアントの「twicca」を導入していたが、TimescapeからTwitterの投稿(ツイート)を開く際に、ブラウザではなくこのソフトを起動するよう設定できた。Webサイトからだとツイートに対してのリアクションを取りにくいが、これならTimescapeでサッと確認して、twiccaで返事をするという使い方ができ、非常に効率的だ。
「twicca」をインストール済みの状態だと、このようなメニューが現れる | 選択したユーザーのタイムラインが「twicca」で表示された |
ただし、全く異なる特性を持つサービスを端末側でひとまとめにしているため、利用状況によっては、コンセプトを生かしきれない恐れもある。例えば、筆者はTwitterで300人以上をフォローしており、mixiのマイミクは100人程度。メールは1日に多くて50~70通ほどが届く。中でも“リアルタイムインターネット”とうたわれるTwitterは、更新頻度が圧倒的に高く、1時間で200以上のツイートがあるのも珍しくない。そのため、メインSplineがツイートだけで埋まってしまうことが多々あった。1日に日記数件程度のmixiや、1時間に3~4通のメールは、完全に埋没してしまうのだ。逆に、メールが多すぎてTwitterが埋もれてしまうユーザーもいるだろう。もちろん、設定でSplineやメインSplineに載せるコンテンツを外すことは可能なため、自分なりの活用方法を模索してみてほしい。
メインSplineのコンテンツや、表示するフィルターン選択が可能 | 使わないものなどのチェックを外しておくとよい |
■楽しくて実用度も高い「Mediascape」
コンセプトやビジュアルが際立っている「Timescape」に対し、「Mediascape」は実用度の高さを評価したい。アプリの下にある「ミュージック」「ムービー」「フォト」のタブでコンテンツを切り替え、目的のファイルをタッチするというのが、Mediascapeの基本的な操作方法だ。音楽を聞きたい、ムービーを観たい、写真を見たいというときは、まずMediascapeを立ち上げればよい。画面にはサムネールが表示されるため、目的のファイルもすぐに見つかる。
フォトに関しては、PicasaやFacebookといったオンライン上のアルバムを、同時にサムネールとして表示できる。通信を介するため表示はワンテンポ遅れるが、オンライン上にあるファイルがまるで端末の中に置かれているように見える。何より、サイトにアクセスして写真を見るというワンアクションの手間を減らせるのがうれしい。ここから、写真を拡大して見ることも可能。ネット上の写真はメールへの添付はできないものの、閲覧用の写真なら、わざわざ端末の中に移す必要性はほとんどなくなったと感じた。
ウェブアルバムのサムネールも同時に表示する | ウェブアルバムの画像が、まるで端末内にあるようだ |
音楽再生中のIniniteボタンも面白い。アーティスト名が気になったら、「ウェブ検索」を押せば、すぐにブラウザが立ち上がり、ネットで情報を調べることが可能。もちろん、音楽を聞きながら。さらに、指を横になぞって「YouTube」にタブを合わせると、関連動画がズラリと並ぶ。楽曲が、関連情報や動画サービスとシームレスにつながっているのだ。単に聞くだけでなく、能動的に音楽を楽しめる。それがMediascapeの本質ではないだろうか。イコライザの設定ができず、プレイリストの作成も「Media Go」でしか行えないなど細かな不満点は残っているが、その欠点を帳消しにできるほど、楽しい機能だと感じた。なお、Media Goから移した曲は、着信音に設定することが可能だ。
音楽再生中の画面。楽曲は着信音に設定可能 | 「Infiniteボタン」を押すと、楽曲関連情報を検索できる | 同じアーティストのYouTube動画がズラッと並ぶ |
一方、ムービーに関しては、あくまで再生に主眼が置かれており、Xperiaならではの特殊な機能は用意されていない。4インチフルワイドVGA液晶で映像が美しく、迫力満点だが、YouTubeとダイレクトにリンクするなどの工夫もほしかったところだ。なお、YouTubeは別のアプリとして用意されており、3G回線でも高画質モードで視聴できる。画質は驚くほど高く、一度体験すると前の圧縮された動画には戻れないと感じた。
「ムービー」のタブを開いたところ |
大画面で映像の迫力は抜群 | YouTubeは3G回線でも高画質モードを利用できる |
■撮った後が楽しいカメラ機能
Cyber-shotケータイなどで実績のあるソニー・エリクソンだけに、約810万画素のカメラの性能は高く、ユーザーインターフェースも分かりやすい。オートに設定しておけば、ピントを合わせてシャッターを切るだけ。多機能ながらシンプルさも兼ね備えている印象だ。写真はバックグラウンドで保存されるため、ファインダー画面で次々と撮影できる。実際、屋外で何枚か写真を撮影してみたが、どれも細部まできっちり描写されており、拡大して見ても十分にきれい。顔検出対応で、人物ごとに写真を整理できる機能も面白い。
カメラのインターフェイスはシンプルだが分かりやすい | シーン自動認識機能なども備える |
人物の顔を自動で認識 | その人の写真だけを集めることが可能 |
ただし、設定で選べるのはシーンやフォーカスだけで、写真の加工のような機能は見当たらない。一般的な日本のケータイによくある“遊び機能”はあまり期待しない方がいいだろう。Androidでは、アプリからカメラを呼び出したり、カメラアプリと別のアプリを連携させたりできる。面白い写真を撮りたいなら、特殊な加工が施せる「FxCamera」のようなアプリをインストールするというのも手だ。「はてなフォトライフ」のように、自動的に撮った写真をストレージにアップロードするアプリもAndroidらしい。多機能なカメラに慣れたユーザーは面食らうかもしれないが、“機能は後から追加できる”と割り切って考えたい。
撮影サンプル ※リンク先は無加工 (3264×2488ドット) |
■日本のユーザーにも優しい基本機能と注意点
では、ケータイとしての使い勝手はどうか。文字入力に関しては、タッチパネル特有のクセはあるものの、賢い予測変換などのおかげで使いやすいと感じた。「PoBox Touch」では母音のアルファベット表示が大きくなるなど、操作性は、一般的なタッチパネルのQWERTYキー表示より格段に高い。キーのレスポンスは良好で、サクサクと打てるので、慣れればそれなりの長文にも対応できそうだ。「<」「>」でカーソルを移動できるため、間違えた箇所の修正も簡単に行える。ただ、QWERTYキーだと、1つ1つのキーがやや狭く、特に上段端の「W」や「P」などを押しづらいこともあった。一方、テンキー表示ではキーの数が少ない分、1つ1つの面積が広く押しやすい。操作性に関する印象は人によって大きく異なるが、筆者の場合、テンキーをメインにしつつ、アルファベットを入力する際にQWERTYキーを利用するのが最適だと感じた。
母音がハイライトされる機能を用意。予測変換もかなり賢い | ハイライトのほか、ワイドやダイナミックも用意 | テンキーの方が押しやすい人もいるだろう |
iPhoneシリーズや先日発表された「HTC Desire」のようにマルチタッチ機能には非対応だが、ブラウザやマップの操作には特に強い不満はなかった。逆に、片手で使うことが多かったためか、拡大、縮小をアイコンで行うXperiaのユーザーインターフェイスの方が、操作しやすい印象を受けた。正確に回数は把握していないが、リンクの誤クリックなどの操作ミスは確実に減っている印象だ。フルワイドVGAのため、WEBや地図の表示は精細。4インチと画面が大きいこともあり、見やすさは一般的なケータイをゆうに超えている。通信の安定度や速度は上々で、本誌「ケータイ Watch」のトップページなら、無線LANにつなぐ必要は感じなかった。
フルワイドVGA液晶で全体表示も精細 | 全体を確認しながら、一部を拡大することが可能 | マップも見やすい。ただし、テスト機ではGPSの精度にやや安定感がなかった印象だ |
とは言え、スマートフォンは一般的なケータイとは、考え方が大きく異なる。ご存知の読者も多いと思うが、現時点ではiモードメールに対応しておらず、メールはパソコン用のものを使う必要がある。Googleのメールサービス「Gmail」でプッシュ配信機能は代替できるが、端末上では絵文字やデコメールにも対応していない。着信拒否機能は非搭載(アプリでは存在する)。赤外線通信やおサイフケータイは対応しておらず、使う人を選ぶことは間違いない。
ただし、足りない機能を列挙して、“だからXperiaがダメ”というつもりは全くない。例えばiモードメールのように、今後スマートフォンでも利用できるようにするという、ドコモから対応が明言されている機能もあれば、Androidマーケットで配信されているアプリや別の機能で補える機能もある。むしろ、TimescapeやMediascapeなどのシグネチャーアプリに凝縮されている“ワクワク感”や、ソフトとハードの両面に貫かれた“世界観”を積極的に評価したい。Androidマーケットの豊富なアプリで、じっくりカスタマイズする楽しみも、一般的なケータイではなかなか味わえない。「パケ・ホーダイ ダブル」が改定され、端末の“2台持ち”にさまざまな選択肢が生まれたこともあり、スマートフォンを購入するリスクは以前より低くなったといえる。Xperiaを機に、スマートフォンを体験してみるのも、決して悪くはないだろう。
2010/4/1 06:00