「AQUOS SHOT SH003」レビュー
第2シーズンを迎えよりカメラらしく進化したAQUOS SHOT
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AQUOS SHOT SH003 |
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2軸ヒンジを採用した |
auの冬モデル第1弾として、10月30日より販売が開始された「AQUOS SHOT SH003」は、約1210万画素のCCDカメラやタッチパネルを搭載したデジカメケータイ。AQUOS SHOTブランドの“第2シーズン”とも呼べる位置づけで、画素数や機能、ユーザーインターフェイスなどに磨きがかかっている。au初のAQUOS SHOTで、期待していたユーザーも多いだろう。そんな注目の1台の実力をチェックした。
■回転2軸ヒンジを採用したデジカメケータイらしいたたずまい
形状は、回転2軸ヒンジを備えたクラムシェルタイプ。同じAQUOS SHOTブランドを冠した、ドコモの「SH-06A」や、ソフトバンクの「933SH」に近く、液晶をグルっと回転させて閉じることが可能だ。ハイエンドモデルらしく、ボディの質感も高い。カラーは「シルキーホワイト」「マットブラウン」「フロスティピンク」の3色で、どの色も液晶側の筐体には、ヘアライン処理が施されている。このシンプルなボディに、時計などが電池残量、電波状況などがLEDで浮かび上がる仕掛けを採用。デザインと実用性が両立している。着信時には電話番号や名前の読み仮名などが表示されるため、サブディスプレイの役割も十分果たせるはずだ。
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ボディにはLEDが埋め込まれている | 文字表示にも対応 |
1210万画素のカメラモジュールはさすがに大きく、裏面にはヒンジ部に向かってなだらかな傾斜が付けられている。他キャリアのSH-06Aや933SHではカメラ部分だけが浮かび上がるようにデザインされていたが、SH003ではボディの処理で上手く筐体との一体感が演出されている。この形状なら、手に持ったときも、あまりカメラ部分を意識する必要はない。
開いたときのボタン周りは、非常にベーシックだ。カーソルキーにもヘアライン処理があり、デザインのアクセントになっている印象を受ける。ボタンはやや浅めながら、1つ1つがしっかり独立しているため、文字入力時などに押し間違えることはあまりなかった。サイズは51×112×16.6mmで、ハイエンド端末としてはコンパクトにまとまっている方だといえる。薄すぎず、厚すぎずの標準的な大きさで、幅広い層に求められそうだ。
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背面のカメラは目立つが全体になじんでいる | 1210万画素のカメラ |
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キーは浅めだが独立しており押しやすい |
■これ1台でOKと思えるほどの高性能なカメラ機能
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フルオート設定で撮った写真。4000×3000ドット。リンク先の画像は無加工 |
まず、機能はこの機種の売りであるカメラからチェックしていく。冒頭述べたように、画素数は1210万。画像素子はCCDで、広角28mm相当の画角で撮影できる。画像処理エンジンは、AQUOS SHOTシリーズでおなじみの「ProPix」だ。これらの要素の組み合わせで、ノイズやひずみの少ない写真を仕上げるというわけだ。また、かなり明るめの「高輝度LEDフラッシュ」を搭載しているのも、ポイントが高い。これだけ光量があれば、暗い場所でもなんとか被写体をとらえることができる。12Mモードで画質をファインに設定し、屋外で撮った写真を以下に掲載したので、このカメラの実力をその目で確かめてみてほしい。ポケットからサッと出し、適当に撮っただけでも、これだけの写真になるというのは驚きだ。
また、最大ISO12800相当の超高感度撮影は、従来のAQUOS SHOTから継承している。試しに、明かりを消して写真を撮ってみたが、以下の作例どおり、なんとか写っているものを判別できる。夜景を撮るなら、感度をもう少し下げても問題はないだろう。
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真っ暗な状態でISOを12800に設定。1920×1080ドット。リンク先の画像は無加工 | 同じ状況で高輝度LEDフラッシュを活用。4000×3000ドット。リンク先の画像は無加工 |
先代のAQUOS SHOTであるSH-06Aや933SHになかった機能が、「スマートリサイズズーム」だ。通常のデジタルズームは、画像の一部を切り出して、“ズームしたように”見せている。数字はあくまで仮のものだが、カメラが1210万画素、設定が300万画素だとすると、余った910万画素ぶんだけズームができるというわけだ。内部的にはあらかじめ1210万画素で撮って300万画素のサイズに切り取ることで、被写体に近寄っているように見えているともいえる。こうした仕組み上、多くの端末では、大きなサイズに設定するとズームができなかった。これに対し、SH003に搭載されたスマートリサイズズームは、“ズームしたように”見せる仕組みは従来と同じだが、拡大率に応じて画像サイズを下げていくことで、サイズの設定を気にする必要がない。もちろん、最大サイズで撮っておき、あとで加工すればよいという考えもあるが、やはり少々面倒なことは事実。ケータイで扱うなら、その場で最適な構図を決め、サッとブログやメールに使えた方がいい。デジカメにあまり詳しくないユーザーでも、直感的に使えるズームだといえる。
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ズームしていくたびにサイズが自動で小さくなる。4000×3000ドット。リンク先の画像は無加工 | リンク先の画像は無加工 | リンク先の画像は無加工 |
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連写して好きな写真を保存可能 |
また、SH003は9枚連写が可能な「セレクト撮影」を搭載している。このモードを選択すると、自動的にサイズは1Mになるが(壁紙サイズに変更してもよい)、シャッター1回でまとめて9枚の写真が撮れる。動いている被写体などには最適だ。結果として、ベストな1枚を残せることにもつながるため、撮影の腕に自信がないユーザーにも向いている。連写した写真を重ねて軌跡を表現できる「ストロボフォト」も面白い。
もちろん、AQUOS SHOTでおなじみの「顔検出AF」や「シーン自動検出」「チェイスフォーカス&コンティニュアスAF」は健在だ。これだけ機能が多彩だと、使いづらくなりそうだが、初めてでもそれほど迷わず操作できた。筆者がSH-06Aを所有していたということもあるが、それ以上に、タッチUIの分かりやすさによるところが大きい。標準の状態だと、液晶を表に出して閉じるだけですぐにカメラが起動する。メニューは左右にアイコン上に並んでおり、どれがどの項目を指すのかが一目瞭然だ。フォーカスの指定やシャッターはタッチ一発。サイドキーをシャッターにするより、軽く画面に触れた方が手ブレも少なくなりそうだ。バックグラウンド保存がきき、軽く画面を触れるだけで次々と写真を撮っていけるため、爽快感すらある。
au共通の仕様だが、「フォトモード」と「壁紙モード」を切り替えられるのもうれしい。1210万画素にもなると、撮った写真の用途は、観賞と使用に分かれてくる。フォトビューアーで見るための写真と、人に送ったりブログにアップしたりする写真を、区別している人もいるはずだ。他社の機種では、わざわざサイズを変更しなければならなかったが、auの仕様なら、ボタンを2回押すだけで両方の設定を行き来できる。これが、タッチ操作の分かりやすさも相まって、非常に便利だと感じた。先ほど挙げたISO12800やセレクト撮影利用時にも、自動的にサイズが変更されるが、このような細かな気配りがうれしい。欲をいえば「サイズを変えます」とアラートが出てもいいとは思うが、サイズ変更後にしか設定できないよりは、はるかに使いやすいと感じた。
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アイコン1つ1つが大きく指で操作しやすい | フォトモードと壁紙モードもタッチで簡単に切り替え可能 |
さらに、撮った写真を簡単にブログにアップできたり、雑誌などの情報を一括で認識できる「情報リーダー」が搭載されていたりと、カメラ機能に対するこだわりが、はっきりと分かる。
■カメラ以外にも活きるタッチ操作
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タッチ操作に対応したフォトビューアー |
タッチパネルは、撮影時だけでなく写真を見るときにも活躍する。SH003は、データフォルダとは別に「フォトビューアー」を搭載しており、通常のメニューやカメラ起動時に呼び出すことが可能。あえて、リスト表示のデータフォルダに写真を置かないことで、指だけでも快適に操作できる。フォトビューアーでは、写真をフリック(指を払う操作)で次々と表示でき、動作のもたつきもない。写真切り替えのエフェクトは、「なし」も含めると6種類だ。さらに、写真の拡大・縮小には、ピンチイン&ピンチアウト(2本の指でつまむ/広げる動作)で行える。ただし、この操作に関しては、扱っている写真のサイズが大きいためか、指の動きに追従しないこともあった。
面白い試みだと感じたのは、写真の「カレンダー表示」。その名のとおり、フォトビューアー上のカレンダーに写真のサムネールを配置していく機能で、年表示、月表示、日表示に切り替えられる。過去の想い出を、美しい写真とともに振り返れるというわけだ。もちろん、カレンダー表示時も、指で触れるだけでスムーズに写真を呼び出せる。ややキーが小さく押しづらいところもあったが、全般的に直感的だ。
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年表示 | 月表示 | 日表示 |
カメラ撮影やフォトビューアーに加え、縦開きでのタッチ操作にも対応している。待受画面には1画面に5つのショートカットを置けるため、これらを指で触って起動するといった使い方に対応。よく使う機能を設定しておけば、使い勝手が格段に上がる。メインのメニューもタッチ対応だ。ただし、第2階層以下のリストなどは、「Sportio water beat」と同様、フリックで上下に移動する仕様で、やや操作しづらい。呼び出した機能によっては、タッチに非対応なこともある。全ての操作をタッチで行わず、カメラやショートカットなどに限定した方がスムーズだ。キーとタッチの使い分けは、端末を使いながら、少しずつ慣れていく必要がありそうだ。
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待受画面にタッチしやすいショートカットを置ける | 横画面専用のメニューも用意する | フリック操作が必要となるシーンも |
■カメラだけで終わらない充実の基本機能
auの冬モデルではハイエンドに属する端末だけに、基本機能にも抜かりがない。ディスプレイはケータイ最大級の3.4インチフルワイドVGA。「色温度コントロールを採用しており、色がくっきりと出ている。特に写真を見る際に、歴然とした違いが出る。逆にここまで発色がいいと、「PCに写真を転送してみたら、思ったよりきれいに見えないかった」ということがあるかもしれない。
このほか、SH003には「クイックアクセスメニュー」や「GPSゴルフナビ」「歩数計」といった多彩な機能が搭載されている。通話時の音声を補正する「ボイスクリア」や「スロートーク」があり、電話としての使い勝手もいい。もちろん、auのサービスはほぼ網羅。比較的新しいところでは、電子書籍を統合した「LISMO」や「EZニュースEX」「au Smart Sports」などに対応している。Bluetoothやワンセグ搭載で、microSDHCも利用可能だ。
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電子書籍もLISMOに統合された | ネットに接続して様々な辞書を利用できるスマートリンク辞書 |
KCP+の導入によって、“中身”が画一化したように思えるauの端末だが、1つ1つの機能を見ていくと、そのメーカーならではの“個性”が健在であることが分かる。SH003でいえば、「スマートリンク辞書」がそれだ。内蔵の国語・英和・和英辞書と日英翻訳に加え、ネットに接続して様々な辞書を追加できるのが特徴だ(有料で追加できるものもある)。ケータイShoinで、文字入力中にそのまま辞書を呼び出せるのも、この機種ならでは。今回のレビューでは使用できなかったが、「AQUOSブルーレイ連携」も便利そうだ。
残念ながら「EZ Wi-Fi」は非対応だが、そのほかに関しては、「AQUOS SHOT SH006」と比べても遜色ない。ハイエンドだが、カーソルの移動や文字入力もサクサクで、デザインもそれを感じさせない仕上がりだ。その意味では、機能で二の足を踏む必要はないだろう。また、ここまでカメラが高性能なことを考えると、撮影に多くを求めないユーザーのデジカメ需要も取り込めそうだ。
2009/11/24 12:00