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ドコモ2015年度決算は増収増益に回復、16年度は中期目標の前倒し達成目指す

 NTTドコモは、2015年度(2015年4月~2016年3月)の連結業績を発表した。増収増益を達成し、その要因が解説されたほか、2016年度の業績予想も示された。

 決算会見に登壇したNTTドコモ 代表取締役社長の加藤薫氏からは、決算の解説の前に、熊本地震への対応状況が報告された。これは別記事にて掲載している。

NTTドコモ 代表取締役社長の加藤薫氏

 NTTドコモの2015年度連結業績の概要は、営業収益が前年度比3.3%増の4兆5271億円、営業利益が前年度比22.5%の7830億円で、増収増益になった。新料金プランの導入などに関連し減収減益となった2014年度から回復した。

 ドコモでは好調に終わった決算について、新料金プランのユーザーがより容量の多いプランに移行したことなどによる、通信事業の好調、スマートライフ領域での事業の好調、計画を上回るコスト効率化の実現を、大きな要因に挙げている。新料金プランについては4月12日に3000万契約を突破しているほか、Mパック以上の選択率が約9割に上り、1GBの追加データの購入率も約3割になるなど、順調に拡大しているとする。

 前年度に減収減益となる原因になった新料金プランだが、加藤社長によれば、新料金プランに移行するのは、サービス開始から1カ月で50万件程度と見込んでいたという。しかし実際には当初の1カ月で470万件と大規模に移行し、また7割以上のユーザーが最も容量の少ないプランを選択するなど、想定外の状況になり、通期予想を下方修正するなどの対応に追われた。また、単年度での回復が難しいと判断し、2017年度までの中期目標で業績回復を図る方針を示していた。

 一方、2015年度が増収増益に転じたことや、新料金プランでより容量の多いプランに移行が進むなどの成長の方向性から判断して、新料金プランに端を発した業績回復の中期目標は1年前倒しとなり、2016年度に達成できるとの予想が示された。

 加藤氏は質疑応答の時間にも、「この2年間で、スマートフォンやデジタルコンテンツで2GBは足りないということになってきた。(通信量を)家族でまとめてフレキシブルにできることは、ドコモショップでもオススメの基本にしてきた。それらが受け入れられ、結果が集積して、回復に向かっている」と手応えも語っている。

 通信事業以外で注力しているのがスマートライフ領域で、具体的には、コンテンツ、金融・決済、グループ会社の3つからなる「スマートライフ事業」と、法人ソリューション、あんしん系サポートなどからなる「その他の事業」で構成される。

 このスマートライフ領域の2015年度の営業利益は、計画の700億円を上回る787億円。特にコンテンツサービスが好調とし、その代表であるdマーケットは1554万契約、成長も継続しているとし、3月末で「dTV」が499万件、「dアニメストア」が204万件、「dヒッツ」が375万件など、いずれも拡大している様子を紹介した。

 さまざまな企業や自治体などとコラボレーションを図っていく「+d」の取り組みは、2015年度に49件のコラボレーションを実現。4月21日時点では53件にまで拡大している。

「躍動の年にしたい」2016年度は増収増益予想で中期目標も前倒し

 2016年度の業績予想は、営業収益が929億円増の4兆6200億円、営業利益は1270億円増の9100億円で、増収増益を見込む。

 なお、ドコモは2016年度から、減価償却方法を定率法から定額法に変更する。最初の年は減価償却費が従来よりも圧縮される(=利益が増える)ことから、この影響を除いた2016年度予想の営業利益は8600億円としている。

 また、MVNOに対するアクセスチャージや帯域の卸料金も、減価償却方法の変更が影響するため、2016年度は「お安くなるだろう」とした。

 同社は2017年度中期目標として、営業利益8200億円以上、スマートライフ領域で営業利益1000億円以上、4000億円以上のコスト効率化などの目標を掲げており、これらは1年前倒しで2016年度に達成できる見通しとした。

 2016年度は株式の年間配当についても10円増配した80円を予定し、自己株式の取得もTOBで計画通り買い付ける方針。

 加藤氏は、「この数年間でiPhone、新料金プラン、ドコモ光を導入し、競争力が回復、通信事業が回復した。コスト効率化で筋肉質な会社になろうという取り組みも進んでいる。今年度は躍動の年にしたい」と抱負を語っている。

5月11日に新商品発表会を開催

 加藤氏は質疑応答の時間に増収増益の感想を聞かれ、「(加藤氏にとって)初めての増収増益の決算で、嬉しい。コスト効率化も社内に強くお願いした。スマートライフ領域もゼロからはじめたもの。NOTTVの減損処理を除けば900億円近い規模の利益だった。内容的にも嬉しい」と素直に語っている。

 4月初旬に、端末購入補助に関するガイドラインに関連して、総務省から文書による要請を受けた件への対応については、「議論が始まった頃と、認識の違いや温度差があった」と総務省のガイドラインの運用を指摘した上で、「キャッチアップできるよう準備しており、4月中に実施する。(店頭では)今日ぐらいから変わっている」とした。

 スマートフォンの販売台数については、2015年度は前年度比で84万台の増加だったが、2016年度予想では142万台の減少。2015年度は、“0円禁止”などに伴う駆け込み需要があったとしており、2016年度の販売台数は大きく伸びないと予想されている。

 販売台数を回復していく手立てについて聞かれると、2台目需要やタブレットのデータ通信などに伸びしろがあるとしたほか、加藤氏は「誤解を恐れず言えば、スマートフォンの機能・性能は一定のところまできている。音声のクリアさ、操作のしやすさ、サービスなどが差別化要因になるだろう」との考え方を示し、「5月11日に新商品発表会を開催する。あまり大きな期待をされると肩透かしかもしれないが(笑)、すこし期待していただければ」と、例年の夏モデルと思われる新商品を発表することも明らかにした。

太田 亮三