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「au TOM'S RC F」が富士を走行、ファンと一緒にチャンピオン獲得を

~モバイル通信とモータースポーツの関わり~

富士スピードウェイを走る「au TOM'S RC F」

 KDDIが国内最大のGTレース「SUPER GT」の「LEXUS TEAM TOM'S」の新スポンサーとなることが発表された。auのブランドカラーのオレンジをまとった「au TOM'S RC F」が各地のサーキットを走ることになった。

 携帯電話会社とモータースポーツの組み合わせを奇妙に感じる読者もいるかもしれないが、携帯電話を含む移動体通信の歴史が自動車電話(1979年にNTTが商用化)から始まったという過去を振り返ると、両者の密接な関連性への理解が進むだろう。その後、自動車電話はバッテリーを搭載して持ち運べるショルダーホン(1985年)へと進化し、小型・軽量化が進み、iモード(1999年)や写メール端末(2000年)などの登場により、音声通話の枠を超えて現代の必需品の地位を確立するに至っている。

トヨタの血を受け継ぐKDDI

 企業の生い立ちとしても、KDDIの前身となるIDOはトヨタが設立した会社で、後にKDDIに吸収されるツーカーグループも日産を母体としていた。今回、KDDIがトヨタ系のチームをスポンサードする背景には、こうした資本的なつながりもあってのことだ。

 KDDIは、国内においては、全日本GT選手権で1999年に「cdmaOneセルモスープラ」の形で携帯電話サービスの名称がモータースポーツの場に登場。その後、auブランドの登場に伴って2001年には「auセルモスープラ」にリニューアル。その年に年間チャンピオンを獲得する。2005年に全日本GT選手権がSUPER GTに変わるまで、KDDIは同チームをスポンサードしている。

KDDIのロゴが入ったパナソニック・トヨタ・レーシングのマシン

 海外では、トヨタのF1参戦で2003年からパナソニック・トヨタ・レーシングをスポンサード(関連記事)。2009年の撤退まで同チームをサポートした。

 一方、NTTドコモも国内外でモータースポーツをサポートしている。国内では、スーパーフォーミュラ(旧フォーミュラ・ニッポン)でダンディライアン・レーシングを現在もスポンサード(関連記事)。海外では、iモードの海外展開に伴い2004年からルノーのF1チームをスポンサードしていた(関連記事)。

 ソフトバンクの前身となるボーダフォンは、フェラーリやマクラーレンなどの名門F1チームをスポンサード。Y!mobileの前身となるウィルコムも2005年~2008年にかけてSUPER GTのGT300クラスでR&D SPORTチームをスポンサードしてきた。

技術開発現場としてのサーキット

クアルコムはメルセデスのF1チームをサポート

 携帯電話会社がレーシングチームをサポートする理由の一つはプロモーションということになるが、技術開発という側面も忘れてはならない。参戦する自動車メーカーやタイヤメーカー同様に、さまざまなアイデアを極限状態で戦うレース現場で検証することで実効性を確認するという役割も担っている。

 過去には、らくらくホンがフォーミュラカーに搭載され、ドライバーとピットクルーの間のコミュニケーションに活用することで、厳しい騒音環境下での実用性を確認するという事例(関連記事)があったほか、現在もクアルコムは、F1のメルセデスチームと提携し、リアルタイムのデータ転送やワイヤレス給電といった技術開発に取り組んでいる(関連記事)。

ファンとのつながりを大切に

LEXUS TEAM TOM'S監督の関谷正徳氏

 3月26日、富士スピードウェイで実施されたSUPER GTの公式テストにおいて、LEXUS TEAM TOM'S監督の関谷正徳氏は「今後は通信機能をうまく使えるようにしていきたい。通信しているところをファンに発信できるようにしていきたいと思っている。ファンを獲得する上ではそういうことも必要で、auさんとコラボすることでそれが可能になるのであれば、僕らとしては本望」とKDDIとのコラボレーションの可能性を語った。

 また、昨年に続き36号車のステアリングを握る伊藤大輔選手は、「(チャンピオン獲得は)もちろん狙っていますし、auカラーは強いというイメージもあるので、さらに自分たちがauは強いというイメージをレース界に広げていきたい」と開幕に向けての意気込みを述べた。現在使っている携帯電話について聞いたところ、「それが一番困る質問で、そろそろ変える予定です」と笑顔で答えた。

 昨年、全日本F3選手権でチャンピオンを獲得し、今年から伊藤選手のチームメイトを務めることになったニック・キャシディ選手は、「KDDIとauのロゴが入った車を運転できることを誇りに思うし、見た目も格好いい。もちろんチャンピオン獲得が我々の目標。可能な限りプッシュしていく。去年、日本に来てauの携帯電話を契約してF3でチャンピオンを獲得できたから(auの車は)験が良いんだ」と語った。

 “国内最速”を目指すauとトムスの挑戦は、4月9日、10日に岡山国際サーキットで始まる。

「au TOM'S RC F」のステアリングを握る伊藤大輔選手(左)とニック・キャシディ選手(右)
ピットウォークでのサイン会

湯野 康隆