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マンションのエントランスもスマホで解錠「Akerun Entrance」

 フォトシンスは、スマートロック「Akerun」(アケルン)の新製品として、マンションやビルの自動ドアに対応したモジュール「Akerun Entrance」を発表した。

「Akerun Entrance」を手にするフォトシンスCEO 河瀬航大氏

 「Akerun Entrance」は建物の入口ドアのオートロックの機構に設置することで、登録されたスマートフォンを持って近づくだけで解錠できるという製品。マンションの管理業者や企業、店舗の施設管理者が設置することを想定しており、同社では今後、三井不動産グループの物件で実証実験を行っていく。

 マンション管理者向けの提供価格は初期費用として9万5000円~(設置費用込み、設定サポート費は含まず)で、月額費用は50世帯までで3万6000円~、超過分は1戸あたり500円となる見込み。

仕組み、機能は

製品について説明するフォトシンスCTO 本間和弘氏

 「Akerun Entrance」は、サムターン部分に設置するオートロック「Akerun Entrance」の認証の仕組みを活用し、エントランスドアのオートロックで利用可能にしたモジュール。

 ユーザーは「Akerun」アプリをインストールしたスマートフォンを持って近づくだけで、操作をせずにドアを開けることができる。また、エントランスにいなくても、遠隔で自動ドアを開けて来訪者を招いたり、URLを使って仮想的な合鍵を発行したりといった機能を持つ。

 鍵の登録は、「Akerun」アプリで施設管理者から受け取った「招待コード」を入力して行う。自宅の玄関に設置した「Akerun」とまとめてエントランスの鍵も開けられるようになる。

登録のイメージ

 アプリでの自動解錠では、スマートフォンのBluetooth(Bluetooth Low Energy)を活用している。登録したスマートフォンが「Akerun Entrance」を設置したドアに近づくと、アプリを通して管理システムへの認証がバックグラウンドで行われ、ドアが開く仕組み。ドアに近づいてから開くまでには3秒程度の待ち時間があるが、今後時間を短縮できるよう改善していくという。

鍵を取り出す必要がある従来のドアロック
「Akerun」では、待っているだけでスマホが認証して開く

 施設の管理者側は、専用の管理画面「Akerun Maneger」を利用することで、入居者や従業員などのユーザーに対し、鍵権限のコントロールを行うことができる。

 鍵権限を与える方法は、ユーザーごとに異なる12桁の「招待コード」を発行し、メールやポスト投函へのなどでユーザーに伝える。管理者はそれぞれのユーザーに対して鍵を利用できる時間帯、遠隔解錠や合鍵の発行権限を設定できる。

管理者に電話して遠隔解錠を依頼するシーンを想定したデモンストレーション

 「Akerun Entrance」のモジュール機器は、自動ドアのオートロックの機構部に設置する。電源を自動ドアの機構から供給し、自動ドアの制御部と接続することで利用できるようになる。対応する自動ドアはナブコ自動ドア製または寺岡オートドア製のコントローラーを利用したもの。また、遠隔での管理や解錠機能を利用するためには、IoTゲートウェイ「Akerun Remote」もあわせて設置する必要がある。

自動ドアに設置された「Akerun Entrance」(中央)
設置の様子

 セキュリティ面では、暗号化方式にAES256を採用。同社CTOの本間和弘氏によると、Akerun開発時にNTTドコモの、そして今回外部の専門機関によるセキュリティレビューを受けて開発しているという。

目指すのは「リアル物件の権限管理プラットフォーム」

 3日に実施された発表会ではフォトシンス代表取締役社長CEOの河瀬航大氏が「Akerun」の利用シーンやコンセプトを紹介した。

 同社が2014年より提供している「Akerun」は、自宅のドア向けのスマートロック機器。高級住宅などで利用するユーザーも多かったが、「エントランスの鍵を開けるために鍵を持ち歩きたくない」との声もあったという。「Akerun Entrance」では、その不満を解消する製品となる。

「Akerun」シリーズ製品
かざすだけでドアが開く「Akerun Touch」

 商業施設や企業での利用も見込んでいる。河瀬氏が利用例として紹介したのは、不動産管理会社が管理物件に設置し、内覧時に従業員から連絡を受けて解錠する使い方、店舗に設置してアルバイトが鍵を利用できる時間帯をシフトにあわせて設定する使い方や、福祉施設のドアに設置して職員は自由に出入りできるようにしつつ入居者の徘徊を防止するというもの。

 同社は「Akerun Entrance」の市場規模を240億円と想定。河瀬氏は3年で6000ドアという導入目標を示した。今後は、エレベーターや電子ロックなどに対応した製品の提供も検討しているという。

 河瀬氏は「Akerun」の目指す世界観として「リアル物件の権限管理プラットフォーム」を提示。「Akerun」アプリを入れたスマートフォンを持ち歩いているだけで、あらゆる物件で通るだけで通過することができ、決済もその場にいるだけで完了するといったものを想定しているという。「そこではスマートフォンがコミュニケーションツールから“個人を象徴するようなデバイス”になる」と語った。

石井 徹