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ドコモのスマートライフ事業は利益3倍、通期業績予想も上方修正

 NTTドコモは、2015年度第2四半期(7~9月)および上期の決算を発表した。上期は対前年同期で営業収益が1.9%増の2兆2150億円、営業利益は15.8%増の4626億円で、増収増益となった。スマートライフ領域の事業が好調なことと、設備投資のコスト削減が進んでいることなどから、通期の業績予想も上方修正した。

 NTTドコモ 代表取締役社長の加藤薫氏は、「2013年度の利益水準へ回復を目指している。順調に回復していると考えている」「上期はとくにスマートライフ領域が好調に推移した。結果にこだわる2015年、通信事業、スマートライフ事業、コスト削減が順調に推移している」「2014年度は大幅な減収で非常に厳しい決算だった。結果にこだわり、取り組んでいく」などと決算会見で語り、2014年度に導入した新料金プランとそれによる減収の影響から脱しつつある様子を示した。

NTTドコモ 代表取締役社長の加藤薫氏

通信事業

 ドコモは2014年度に導入した新料金プランの影響で大幅に減収し、そこから回復基調を続けているのが現在の状況。

 基幹となる通信事業は、「月々サポートの増加で収益は減少したが、コスト効率化で利益は増加した」(加藤氏)とする。

 純増数は上期で190万件。前年同期と比較して1.6倍になった。純増数のうち、約半数がMVNOによる増加としている。

 MNPは大幅に改善し、前年同期が18万件の転出超過だったところが、4万件の転出超過にまで減らした。解約率は前年同期と同じ0.58%になっている。

 上期の端末の販売数は前年同期比10%増の1204万台で、このうち新規契約の販売は41%増の515万台。総販売数のうちスマートフォンの販売数は5%増の707万台、タブレットは41%増の102万台になった。スマートフォンの利用数は3075万契約で、スマートフォンにおけるLTEの比率は95%にまで拡大している。

 新料金プランは10月7日に2400万契約を突破。「順調に推移、進捗している」とし、Mパック以上の選択率は約8割、1GBの追加データ購入率は約4割に拡大していることが紹介された。

 9月25日に、iPhone新モデルの発売と同時に提供を開始した「カケホーダイライト」については、「申込状況は想定の範囲内で推移している。収支に与える影響は限定的だろう」との見方。現在、新規契約では約3割のユーザーが「カケホーダイライト」を選択しているとし、「提供して1カ月ちょっとなので、きっちりと見ていく」と注視していく構えを示している。

 四半期ごとのARPU(新ARPU)については、音声ARPU、パケットARPU、ドコモ光ARPUのいずれもが第2四半期に上昇、合計は4190円で上昇に転じた。

スマートライフ領域

 サービス・コンテンツを提供する「スマートライフ事業」と「その他の事業」を合わせたスマートライフ領域は特に順調とする。

 これらにはdマーケットなどのコンテンツサービス、クレジットや決済代行などの金融・決済サービス、オークローンマーケティングなどのグループ会社の好調な業績が含まれており、営業利益は前年同期比で約3倍になる424億円になった。2015年度通期では200億円の上方修正を行い、同領域で700億円の営業利益を目標とする。

質疑応答

決算について

――通信事業でMNPの大幅な改善の理由は?

加藤氏
 MNPの改善は、端末のラインナップでいいものができた。“不健全なキャッシュバックはしない”という決意、それがユーザーにも理解していただけている。キャンペーンでのお得感も定常的に理解され、(転出が)縮小してきたのではないか。油断することなく、努力していく。

――スマートライフ領域で、Netflixなど他社の月額サービスの影響はどう考えているか。

加藤氏
 NetflixやHuluなど映像系コンテンツ、VOD系サービスは世界的にみても大きな市場だ。Netflixが日本に入ってきたが、我々は「dTV」を頑張っており、500万弱の契約者を抱えている。提携コンテンツ数も“有数”だろう。コンテンツはまだまだ充実させ、契約者数が500万を超えるようにしていく。お互い良いライバルだと思っている。切磋琢磨しながら充実させていく。

――金融・決済サービスの今後の展開は。

加藤氏
 日本生命と提携した。保険はまだまだ素人。整い次第、スモールスタートで着実に進めていきたい。

 決済系では決済代行も、ユーザー・サービス提供者双方に便利に使ってもらっている。このあたりの結果も、利益の底上げに貢献している。

佐藤氏(取締役常務執行役員 財務部長の佐藤啓孝氏)
 スマートライフ領域の増益に対する、決済系サービスの寄与分は、上半期で約3割ぐらいだった。

加藤氏
 11月には発表するが、こうした金融・決済の仕組みをベースにした、プラットフォームとしての「dポイント」をすでにアナウンスしている。これの充実や発展を、コラボレーションする各社と連携しながら、強化していく。

――上方修正300億円分のうち、スマートライフ領域で200億、コスト削減で100億だ。通信事業などは好調というが、どうみているのか。

加藤氏
 いろんな増減要因がある。例えば通信事業は良くなってきているがどうなのか。端末の卸しの数が減ったり、その粗利が減ったりして相殺しており、スマートライフ領域とコスト削減に収斂させた。

――通期予想の上振れ、下振れはどうみているか。

加藤氏
 修正後の通期予想は、絶対達成するぞ、これが下限である、という数字のコミットメントだ。

――設備投資が通期で300億円の減少になる。この影響はどのようなものか。実施しないものがあるのか。

加藤氏
 去年の今ごろからコスト効率化を強力に進めてきた。費用もそうだが、投資関係もそう。大変な努力と知恵を結集している。その努力が定着し、6300億円の投資で得る効果と同じものを、6000億円でできる、という担当部局の自信がここに表れている。当初の基地局数、エリア構成などは変えていない。いろんな努力が結集しているということと理解してもらいたい。研究開発費にも影響は出ない。

――総販売数の伸びで、スマートフォン以外はフィーチャーフォンなのか。

佐藤氏
 データ通信カードやMVNOも含まれている。

――端末原価が変わらず、総販売額が下がり、総販売数が伸びている。1台あたりの価格が下がっているということか。

佐藤氏
 指摘のように、端末を代理店に卸す卸価格は、昨年と比較して減っている。これは、安い端末、例えばdtabなどの端末の占める割合が大きくなっていることなどから、卸単価が減少している。

――スマートフォンの買い替えまでの期間はどうなっているのか。伸びているのか。

加藤氏
 少し伸びている。

佐藤氏
 データでは、29カ月から30カ月くらい。(一般的な契約期間である)24カ月から、5カ月ほど伸びている。

――スマートフォンの利用者数は3000万件を超えているが、6000万件の契約者数をかかえるドコモとして、今後スマートフォンの割合はどうなっていくと予想しているのか。

加藤氏
 販売の瞬間、現場では、75%がスマートフォンを選んでいる。全体では6割程度にまでなる。少しずつ、これからもスマートフォンの比率は上がっていく。高齢な人でも使ってみようという人はいる。ただ、急激にスマートフォンばかりになることはないだろう。

MVNO

――純増数が好調だが、MVNOの影響は? またその比率はどうしていくのか。

加藤氏
 MVNOの数は、(純増数の)だいたい半分ぐらい。サービスの多様化にはとっても寄与していただいている。どのような多様性があるのか、要望を聞きながら、選択肢の広がりで、協調・競争をしていきたい。

――MVNOからは、加入者の情報を登録するHLSなどの設備を解放してほしいと要望がある。取り組みの実施状況や進捗は。

加藤氏
 MVNOからのその要望は、随分前から聞いている。実現には課題もあり、ずっと議論をしている。では近々結論が出るかといえば、なかなか難しい面もあり、協議を進めながらになる。自ら持つのか、使ってもらうのか、ファイアーウォールはどうするのか。基本的にはお客さま情報であり、安全性が一番問題になる。そのあたりも考慮しながら結論を出していく。

総務省 タスクフォース

――総務省のタスクフォースで料金の引き下げが議論されている。仮に実施した場合の影響はどうみているのか。

加藤氏
 今、どうするという考えは持っていない。検討する必要はあると思うが、(考えを持っていないので)影響は答えられない。

 ユーザーからは、(料金プランなどが)分かりにくいといった声も聞いている。是正も含めて、総合的に検討していく。

――タスクフォースでは、月間容量がより少ないプランも指摘されている。仮にこれを実施する場合の影響はどうみているのか。

加藤氏
 議論の行方や、私どもからの話もしながら考えていく。どんなプラン、というのも考えていない。

 新料金プランを導入し、不健全な競争を是正しながら、長期利用のユーザーにも喜んでもらえるもの、家族の中でシェアし有効にパケットを使ってもらえる仕組み、時間を気にすることなく通話できる仕組みを導入してきた。そんな中で何が足らなくて、多様化という面で何が必要なのか、タスクフォースに関係なく考えてきたところだ。

 タスクフォースでどのようなことが議論のポイントになるのか見極めながら、検討していきたい。

――2年契約に対して、やめるといった方向性がアナウンスされていたが、進捗や具体的な時期は。

加藤氏
 いろんなことを考えている。そう遠くない時期にお話できるだろう。タスクフォースの影響もあるかもしれないので、見極めながら、再度詰めながら、タイミングをみてお話できるだろう。

――ソフトバンク、KDDIは電力サービスの取り扱いを表明している。ドコモはどうするのか。ドコモショップなどで取り扱うのか。

加藤氏
 具体的に話せることはない。提携が必要ならするし、あらゆる可能性をずっと考えながらきている。

太田 亮三