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4年ぶり増収増益に、ドコモの2015年度第1四半期決算

通信、サービス、コスト削減が奏功

 NTTドコモは、2015年度第1四半期(2015年4~6月)の決算を発表した。営業収益は前年同期比0.1%増の1兆769億円、営業利益は前年同期比12.3%増の2354億円で、4年ぶりという増収増益になった。決算発表会にはNTTドコモ 代表取締役社長の加藤薫氏が登壇、説明を行った。

 オペレーション状況では、第1四半期の純増数が前年同期比で2倍の94万契約、新料金プランの契約数は前年比で4.5倍の2081万契約、ドコモ光の契約数が41万契約で、累計の申込件数は60万件という数字が公開された。

 端末販売数は、576万6000台で、前年同期比61万台の増加。内訳は、LTE端末が439万3000台で、前年同期比81万9000台の増加。FOMA端末は137万3000台で、前年同期比20万9000台の減少。

 MNPは、前年同期比で3分の1という3万件の転出超過にまで改善。解約率は横ばいで、スマートフォンの販売数、設備投資におけるコスト削減も計画通りとされた。いずれも順調な進捗とし、通期の目標に対して「強めに出ている」(加藤社長)とも語られた。

 新料金プランについては、最新の数字として、7月6日に2100万件を突破、7月28日時点では2167万件になっているとした。「Mパック」の契約が7割以上と、選択される容量は増加傾向にあり、1GBの追加データ購入率も3割超に拡大、「収支の改善傾向が継続している」と自信を見せる。

 「ドコモ光」も、計画に対して順調に推移しているとした上で、「モバイルにもプラスの効果が表れている」とし、約30%がドコモの回線を新規に契約し、55%近いユーザーが家族でシェアパックを利用していることを紹介した。

解約率、ARPUの基準を見直し

 発表では、この第1四半期から、解約率とARPUについて、変化にあわせた新たな基準で算出していくことが明らかにされた。ARPUについては今後1年間、新旧双方の基準を公表していく。

 具体的には、解約率は定義を見直したことで、MVNO向け回線で発生する解約数が、「ドコモの解約率」の算出から除外される。なお、ドコモ回線から、(ドコモ網の)MVNO回線へMNPでポートアウトするケースは、ドコモの解約にカウントされる。

 ARPU(1利用者あたりの月間平均収入)については、新基準における総合ARPUは「音声ARPU+データARPU」になる。

 データARPUの内訳は「パケットARPU+ドコモ光ARPU」で、ドコモ光のサービス収入を加える一方、これまで「スマートARPU」としてきたサービス収入は、新基準のARPUからは除外されることになった。つまり、総合ARPUは「音声ARPU+(パケットARPU+ドコモ光ARPU)」ということになる。

 「スマートARPU」を新基準のARPUから除外にした理由については、対象になるスマートライフ事業のサービスが、ドコモの回線契約が無くても利用でき、またその利用形態が増加傾向にあること、スマートライフ事業自体は、セグメント別として実績が公表されていることが挙げられている。

 ARPU算出時の分母についても見直し、従来は、通信モジュールとMVNOを除外した「契約数」で割っていたが、新基準のARPUではこれに加えて、1人での複数契約(回線)が拡大していることから、2回線目の「データプラン」を除外し、分母を「利用者数」と定義した。これにより、ひとりのユーザーがタブレットなどを2台目として購入し、「データプラン」で利用しているケースは、2契約ではなく「1利用者」という分母になる。なお、「データプラン」を1回線目で契約している単独契約は除外されない。

ARPUは「改善が継続している」

 従来の基準におけるARPUは5250円になり、内訳は音声ARPUが1670円、パケットARPUが2920円、スマートARPUが660円になった。前四半期から減少した音声ARPUも、「ずっと繰り越し」が特殊要因としてマイナス70円の影響と算出しており、「音声ARPUは1740円が実力。前四半期から30円の増加だ」と、改善傾向が継続しているとした。

 新基準でのARPUは5060円で、内訳はデータARPU(パケットARPU+ドコモ光ARPU)が3230円、音声ARPUは1830円。こちらの音声ARPUも「ずっと繰り越し」が特殊要因とし、実質1900円としている。

年間3兆円の取扱高を目指す「スマートライフ領域」

 dマーケットや動画、音楽、ヘルスケアなどは「スマートライフ領域」としており、営業利益は前年同期で3.6倍となる230億円になった。年間目標は500億円で、すでに半分近く達成した形になるが、「dポイントの費用を下期に重めにみている。500億円に向けて努力し、できるだけ上にいけるように」と、順調な推移という見方を崩さない構え。なお、資料では公表されなかったが、スマートライフ領域における取扱高は、2014年度が2.7兆円だったことが明らかにされ、2015年度は12%増の3兆円を目指すとした。

 「dマーケット」の契約数は第1四半期で累計1235万件になった。6月末時点では、好調という「dグルメ」は開始1カ月で28万件、「dTV」は453万件、「dアニメストア」は192万件、「dヒッツ」が305万件といった数字が公表された。

 「dマーケット」の一人あたりの利用料は、前年同期比で約3割増加し、1200円になった。

基地局は高速化を進展

 ネットワークについてはコスト効率化が主題になっているが、基地局数も増加させる見込み。第1四半期でLTE基地局数は10万6900局になり、2015年度末で13万局になる予定。

 絶対的な数よりも質の向上に取り組む方針で、具体的には、100Mbps以上に対応する基地局が、前年同期比で6倍以上の6万2800局になった。また「PREMIUM 4G」対応の基地局は3500局が稼働している。

 また、設備を含む総合的なコスト効率化についても、年間目標に対して順調に推移しているとした。

質疑応答

 質疑応答の時間には、好調な「スマートライフ領域」の事業を牽引しているサービスが何かと聞かれた。加藤社長は、さまざまなサービスの好調な結果が足しあわされたものとし、通信販売でのヒット商品など、これまでにない要素も増えているとした。

 一方、他業種とのコラボレーションを進めていく「+d」の取り組みについては、「すぐに利益に結びつくかというと、難しい面もある。長い目で見ていただければ」と、時間をかけて成果を探っていくものとした。

 転出超過が続いているMNPは、直近で大幅に改善しており、転入超過も視野に入っている状況。加藤社長は、「無駄なキャッシュバックなど、規律に反するものはしないと宣言しているが、(他社が一部でキャッシュバックを週末に合わせるため)週末にマイナス、平日にプラスになるといった推移を繰り返している。愚直に進めていく」と基本方針を語っている。

 総務省の有識者会合で、いわゆる2年縛りをやめるように方針がまとめられた件については、「2年契約いただけることで、安く使えるというスキームで、随分前に導入したものだ。自動更新の方法や解約金も議論されている状況」とした上で、別記事で掲載したように、2015年度内をゴールとして、年度内に対応していく方針が示されている。

 スマートフォンなど今後の端末の販売数の伸びについては、「いっときほどの伸びがあるといえば、我々はまだ少し伸びているが、スマートフォン全体ではそう伸びないと思っている」との認識を示した。

 タブレットについては、「傾注してきた結果が出てきている」とし、「スマートフォンはなだらかに増えていく。これからの端末販売の伸びは、タブレットがドライブしていく。2014年度に、タブレットの時代が来るということで、社内的にも取り組みを強化し、いい結果がでてきた。その勢いが続いている」と回答。同席したNTTドコモ 取締役常務執行役員 財務部長の佐藤啓孝氏からは、「タブレットは法人、学校、例えば銀行の営業など、法人のニーズがかなり出てきている。個人、法人の双方でニーズが顕在化している」と、法人需要が拡大していることも販売拡大の要因に挙げている。

“怪しいMVNO”は「断ったことがある」

 拡大するMVNO市場については、現在は多くの事業者がドコモ網を利用するとあって、「ドコモの純増を支えている側面があり、MNPで出ていく側面もあり、ないまぜになっている。我々ではできないところにリーチするものもあり、ただ単に競争するのではなく、連携も含めて考えていきたい」というのが基本的なスタンスとする。一方、「ユーザーに届いていいないところは何か。MVNOの意向に役立てられるところがあるなら取り組んでいく」と、法改正もにらんで、仕組みを変化させていく意向も示している。

 MVNO関連では、「胡散臭い会社もMVNOとして参入してくる可能性がある。ドコモとしてどう考えるのか。(接続義務として)諦めて提供するのか」という質問も。加藤社長は「微妙で難しい問題だ」と前置きした上で、「接続義務があり、どんな方にも“申し込み”はしていただけるが、すべてのケースで貸すかというと……2008年以来ずっとやっていることだが、資金力や、過去の信用、別事業で問題を起こしているかといったことは、調べている。お断りした例もある」と明らかにした。

「NOTTV」は「注視しながら、今後の展開を検討」

 mmbiの「NOTTV」については、2014年度の決算で302億円の減損処理を行うなどしたことや、ドコモとして「dTV」に注力していることから、記者の中からは「役目を終えたのではないか。なぜ止められないのか。止めないのか? やめれば(収益面で)改善があるのではないか?」と率直に問う声もあがった。

 加藤社長は「ただの改善や利益だけではみていない。5インチサイズの“スマホへの放送”というトライがある。当初の番組は我々だけだったが、ほかの番組も入ってきた」と回答するものの、「それで大幅に(契約が)増えた訳ではないようだ。これはちょっと注視しながら、今後の展開を検討していく」と語り、決断の時期が迫っている様子を窺わせた。

太田 亮三