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石川温がGoogle I/Oで見た近未来のスマホ関連技術

Project Soli、Project Jacquard、Project Ara

ATAPを率いるレジーナ・デューガン氏。国防高等研究計画局(DARPA)のトップだった人物だ

 5月28日と29日の2日間、米国・サンフランシスコでグーグルの開発者向けイベント「Google I/O 2015」が開催された。開発者向けの技術セッションが多数行われていたが、中でも大きな注目を浴びていたのが、グーグル内のATAPという研究開発チームによるセッションだ。

 ATAPはAdvanced Technology and Projectsの略で、グーグルが2011年に買収したモトローラ・モビリティにあった研究開発チームだ。グーグルはモトローラ・モビリティを2012年にレノボに売却してしまったが、その際、ATAPはグーグルに残しておいた。グーグルとしても研究開発の分野において、ATAPを高く評価しているのだ。

 今回、ATAPが発表したいくつかの新たなプロジェクトのなかでも、今後、スマホのユーザーインターフェイスを変えそうな2つの技術が特に開発者からの反響が大きかった。

Project Soli

Project Soliの初期開発時のデバイス。実用にはかけ離れた大きさであった
Project Soliは会場でも試すことができた。指の動きに合わせて、画面に表示されたCGが変化する

 「Project Soli」は手の動きを読み取るという技術だ。身体の動きを読み取る技術としては、マイクロソフトのKinectなどがあるが、Project Soliでは、レーダーを用いて、手の動きを感知する仕組みを採用する。

 例えば、親指と人差し指で札束を数えるような仕草をすれば、レーダーがそれらの動きを読み取り、スマホの画面をスクロールさせるといったことが可能だ。プレゼンテーションのデモでは、実際にスマートウォッチの時刻を合わせる作業を行っていた。レーダーに近いところで指を動かすと時間が動き、レーダーから離れたところで指を動かすと分単位が動くといった具合だ。

 レーダーのサイズも開発当初は重箱ぐらいあったが、いまでは小さなチップまでに小型化されており、すぐにでも製品化されそうなサイズとなっていた。

10カ月後にはチップサイズまで小型化を実現した
レーダーにより指の動きを感知して、入力インターフェイスとして活用できる
親指と人差し指でつまみを回す動きをすれば、それもしっかりと認識する
タッチパネルを触らなくても、時刻の変更なども思いのままとなる

Project Jacquard

Project Jacquardは服をタッチしてスマートデバイスを操作することを目指す

 もうひとつ「Project Jacquard」は、タッチで反応する導電の糸を布に縫い込み、布の表面を触ったりこすったりすることで、スマホを操作してしまうというプロジェクトだ。つまり、タッチで操作できる服を作ることができるのだ。

 プレゼンテーションでは、すでにProject Jacquardを縫い込んだジャケットを装着。Google I/Oの会場では、すでに糸が縫い込まれた布地が展示されており、実際に触って操作することが可能だった。センサーが縫い込まれている場所は、センサーの糸が格子状に盛り上がって縫われている。実際に布をタッチしたり、スワイプすることで、Nexus 6の音楽プレーヤーを操作することができた。

 グーグルでは、今回のプロジェクトを推進する上で、リーバイスと提携。将来的にはProject Jacquardを縫い込んだジーンズが誕生するかも知れない。

センサーとなる糸を布に縫い込むことで、タッチ操作を実現する
どこを触ったか、強さはどれくらいかだけでなく、マルチタッチも可能とする
プレゼンテーションにはリーバイスの担当者も登壇。将来的にタッチセンサーを備えたジーンズが出てくることもあり得る
Project Jacquardも試すことができた。センサーが埋め込まれた布を触ると、音楽再生やボリューム調整が可能となっていた

Project Ara

Project Araでは、ブロック状のモジュールを組み合わせて、自分の好きな仕様のスマホを作ることができる

 ATAPがモバイル業界で特に注目を浴びたのは「Project Ara」を発表したことが大きい。Project Araはスマートフォンの部品をブロック状にしてしまい、それらを自由に組み合わせて、自分の欲しい機能だけを搭載したスマートフォンを作れてしまうというプロジェクトだ。

 セッションでは、実際にディスプレイの板にチップセット、バッテリー、2枚にスピーカーというブロックをはめ込み起動。Androidが無事に使える様子がアピールされた。電源が入った状態で、カメラのブロックを挿入すると、再起動することなくカメラ機能も使えるようになった。

 技術的な背景や、今後の計画が発表されるかと思いきや「Project AraのTwitterアカウントをフォローして欲しい。詳細は、今度のデベロッパーカンファレンスで明らかにする」と宣言して、デモは終わってしまった。

 今年1月には、2015年後半を目指して、プエルトリコでテスト販売をするとアナウンスしており、今後、開催されるデベロッパーカンファレンスでテスト販売の詳細が発表される可能性が高そうだ。

プレゼンテーションでは、実際にモジュールを組み合わせてスマホを作り、写真撮影まで行った
Project Araは実物の展示などはなし。紙を使って「いろんなモジュールを組み合わせることができると楽しいですよね」ということをアピール

石川 温