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前後左右も楽々移動、ドコモが次世代電動車椅子の法人向けシェアリング
足踏みタイプの自転車や電動歩行サポート機の実証実験も
(2015/3/25 20:22)
NTTドコモとWHILLは、自治体や法人向けにWHILLが開発した電動車椅子「WHILL Model A」を貸し出し、一般ユーザーにシェアリングの形で利用してもらうソリューションを提供することで合意した。車椅子には、ドコモがこれまで自転車シェアリングで用いていたシステムが導入される。
次世代車椅子「WHILL Model A」
「WHILL Model A」は、24の小さなタイヤで1つの前輪が構成され、その場で回転したり、方向転換したりできる電動車椅子。左手のレバーで速度をコントロールし、右手のマウスで前後左右へ進行方向を操作する。最大7.5cmの段差を乗り越えられるようになっており、砂利道や坂道も走行できる。電源スイッチは左手側にあり、あわせて添えられたLEDでバッテリー残量もわかるようになっている。
自動車メーカーや電機メーカーの出身者によって設立されたWHILLには、NTTドコモの子会社をふくめ、ベンチャーキャピタルなどから15億円が出資されており、研究拠点は日本、生産拠点は台湾、セールスとマーケティングの拠点は日米という体制で、正式な製品として「WHILL Model A」の販売が行われてきた。
ドコモでは、WHILLとの協業を通じて、自治体、あるいはテーマパークを運営する法人などに向けて「WHILL Model A」を1台あたり月額3万9000円(税抜、4年契約)で貸し出す。WHILL Model Aには、通信機能とGPSなどが搭載され、導入すれば電動車椅子のシェアリングサービスを提供できる。
電動の歩行サポート機、足踏み型の自転車の実験も
ドコモでは、電動自転車、電動車椅子に続く、新たな乗り物をシェアリング事業で取り扱う方針で、4月1日から東京都中央区の晴海エリアにおいて、RT.ワークス製の電動歩行サポート機「ロボットアシストウォーカー RT.1」と、片山工業製の足踏み型自転車「ウォーキングバイシクル」の実証実験を行う。どちらも、通信モジュールやGPSを搭載し、これまで自転車シェアリングで活用されてきた、ドコモのモビリティシェアシステムをサポートする。
ロボットアシストウォーカー RT.1は、赤外線の人感センサーをハンドル部に備えた歩行サポート機。ハンドルに手を掛けると、センサーが検知してロックを解除し歩行可能にする。前カゴもあり、足腰に支障が出てきた高齢者にとっても買い物に出かけやすい機器。
もう一方の「ウォーキングバイシクル」は、足踏みで前に進む3輪タイプの自転車。体重をかける足を右から左、左から右と切り替えていけば、電動によるパワーアシストも加わって最高25km/h程度までスピードを出せる。片山工業では、デザイン性も追求し、グラフィックデザイナーの原研哉氏、プロダクトデザイナーとして鄭秀和氏らが関わった。
晴海4丁目周辺で行われる実証実験では、一般ユーザーが利用できるようにして、走行性能や利用意向などを調査する。
高齢化社会、そしてアミューズメントとして
通信会社であるNTTドコモでは、通信を活かして生活に役立つ新領域の開拓をここ数年続けている。モビリティシェアリングもそうした事業の1つであり、環境・エコにまつわる事業の1つという位置づけだ。たとえば同じように環境・エコに関わる事業として、全国の基地局に気象センサーを設置して、花粉や気温などを測定する「環境センサー事業」がある。そうした取り組みとしてモビリティシェアリングも手がける。
2020年には人口の29.1%が60歳以上と今後、高齢化がさらに進み、足腰に支障が出て快適な生活のためには何らかのサポートが必要な人が増えることに対して、電動の乗り物として、自転車に加えて、車椅子を取り扱う。さらに将来的な導入に向けて電動の歩行アシスト機、歩くようにこげるウォーキングバイシクルの実証実験を行うことになった。
「なぜドコモが野菜を、と同じように、なぜドコモが自転車をと言われるが、IoTそのもの。2020年の東京オリンピック・パラリンピックでは自動車を自由に乗り入れるスペースがなく、これまでの手法では歩行者やバスが中心になる。しかし電動自転車などを活用することで、誰もが自由に行き来できる環境を実現できれば」(NTTドコモ取締役常務執行役員スマートライフビジネス本部長の中山俊樹氏)