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三崎亜記氏の作品を独占配信、auの「ブックパス」で

 KDDIと幻冬舎は、auの電子書籍配信サービス「ブックパス」(月額590円)で、16日10時よりオリジナル作品の独占配信を開始する。作品は、作家の三崎亜記氏によるもので、全6話のうち第3話以降がブックパス独占配信となる。

 昨年12月スタートの「ブックパス」は、7000冊以上がラインアップされた読み放題サービスと、14万冊以上のタイトルから1冊ずつ購入できる“アラカルト”の2通りで楽しめる。今回は、「ブックパス」の読み放題コンテンツの1つとして、三崎亜記氏の最新小説が配信されることになった。

 ブックパスでの独占配信となり、連載完結後、数カ月してから単行本(紙)が発売される予定。タイトルは「イマジナリー・ライフレポート」で、第1話と第2話は、幻冬舎の文芸誌「パピルス(papyrus)」に掲載され、その後、掲載の場を「ブックパス」に移すことになる。なお、auスマートパス会員向けには、三崎亜記氏の作品「玉磨き」が無料で公開される。

 このほか、別の作家(8名)による恋愛アンソロジーも読み放題向けに配信される予定。作品のテーマは、ユーザーの投票によって決まる仕組みを採用するとのことで、テーマへの投票は10月16日~11月6日に受け付ける。作品自体は2014年1月~8月にかけて連載され、毎月上旬に1話ずつ更新される形になる。

それぞれの“チャレンジ”

 昨年12月にスタートした「ブックパス」は、男女比が50%ずつ、30代~40代が主なユーザーというサービスだ。KDDIのauスマートパス推進部長である繁田光平氏は「ブックパスは“ユーザーの衝動を受け止めるサービス”。街を移動中、隙間時間などにふと読みたいと思ったとき、次のアクションに向けて(コンテンツを)用意できる」とブックパスの利便性をアピール。ユーザーには、auスマートフォン向けの「auスマートパス」にあるタイムライン機能で告知し、利用促進を図る。

ブックパスのユーザー層
作品を提供する三崎氏のプロフィール

 一方、幻冬舎常務執行役員の永島 賞二氏は「僕たちの本を手にしてくれる読者は、書店を訪れる時点で、本を買おう、探そうとしてくれる、いわば“意識の高い人”。一方で、あまり本に親しんでいない方にも本に触れて欲しい。auのブックパス会員に向けてエンターテイメントの1つとして小説があると伝えたい」と意気込みを見せる。また作家として今回、三崎氏に白羽の矢を立てた理由として「デビュー作の『となり町戦争』から全く新しい感覚で、多くのユーザーを獲得するにはそうした新しい感覚の人がいいと考えた。今回のタイトルも日常と非日常が入り交じったもの」と説明する。

 またコンテンツそのものを提供することになる三崎氏は「電子書籍の将来についてはまだわからない。紙の書籍と併存するのではないか」としつつも、スマートフォンの普及でユーザーにとっては一般的なアイテムになってきたことで、次のステップに向けてその一助になれば、とする。作家としては「仕事の仕方が変わるわけではない」と述べていた。

ブックパスの概要

 これまでも、書籍で一定の成功を得た作家、著名作家によるWebサイトでの配信、あるいはモバイル向けでの独占配信は過去に例がないわけではない。また電子書籍は最近興隆しつつある分野でもある。まったく未開のマーケットというわけではないはずだが、KDDIは「ブックパスを一度体験して欲しい」、幻冬舎は「今回の取り組みはマーケティングの部分もある。新しいの読者の開拓に繋がれば」として、それぞれの立場に基づく形ながら、今回の「ブックパス独占配信」は挑戦的な試みと位置付けている。

左から幻冬舎の永島氏、作家の三崎氏、KDDIの繁田氏

関口 聖