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KDDI、2013年度第1四半期決算は増収増益

「ARPUが予想を上回る好進捗」

KDDI代表取締役社長の田中孝司氏

 KDDIは、2013年度第1四半期(2013年4月~63月)の連結業績を発表した。

 営業収益は前年同期比16.3%増の1兆24億円、営業利益は89.6%増の1787億円、経常利益は101.7%増の1819億円、当期純利益は32.9%増の682億円となった。

 KDDI代表取締役社長の田中孝司氏は、「第1四半期としては初の1兆円突破。営業利益、経常利益、EBITDAも過去最高を達成した。また、すべてのセグメントで増収増益になった。これは、モバイルと固定通信の通信料増収をベースとした大幅増益によるものであり、auスマートバリューによるモバイルおよびFTTHの純増数の順調な増加、au通信ARPUが予想を上回る好進捗となったことが貢献している」などと総括。「3M戦略の推進によって、好調なオペレーション実績を達成。au通信ARPUは、今年度第4四半期での前年同期比反転に向けて好発進を切ることができた。今後の本格的な利益拡大に向けて順調な滑り出しになった」とコメントした。

 営業利益の増益要因には、J:COMの連結化が大きく影響したほか、前年同期の140億円の周波数再編コストがなくなったこともプラス要因となった。J:COM連結効果は、営業収益では882億円増、営業利益では162億円増、経常利益では163億円増。また、当期純利益ではJ:COM株式追加取得による段階取得にかかわる差損を特別損益として384億円を計上したことから、360億円減の影響となった。

 セグメント別業績では、パーソナルの営業収益が前年比17.8%増の7846億円、営業利益が107.8%増の1352億円。バリューは、営業収益が41.4%増の491億円、営業利益が34.9%増の136億円。ビジネスは、営業収益が0.9%増の1577億円、営業利益が67.9%増の255億円。グローバルは、営業収益が26.8%増の587億円、営業利益が61.0%増の22億円となった。

 auの純増数は66万9000件と、年間計画の230万件に対して29.1%。MNP純増数は前年同期比53.8%増の24万1000件となり、21カ月連続でのナンバーワンとなった。また、au解約率は第1四半期実績で0.56%と業界最低水準を維持。6月には0.51%と過去最低になった。

 田中社長は「正直なところ、解約率がここまで下がるとは思っていなかった」とし、「auスマートバリューの効果が大きい」と自己分析した。

 auスマートバリューは、au契約数が463万契約、ブローバンドの世帯契約数が249万契約となっており、世帯内au契約数は3月の1.82から、1.86へと拡大。「着実に拡大している」と語った。

 スマートフォン新規契約の約36%、auひかり新規契約の60%がauスマートバリューを契約しており、「サービス開始から2年間であり、評価を語るには時期尚早ではあるが、auスマートバリュー契約者の解約率は、そうでない解約率の3分の1に留まっている。解約率低下に寄与している」などと述べた。

 また、auスマートパスは、会員数が682万契約となり、今年度末の1000万加入に向けて進捗率は25.4%と順調であることを強調。「付加価値ARPUは第1四半期に260円、スマートフォン利用者では380円と大きく上昇しており、auスマートパスが付加価値ARPUの底上げに貢献。auスマートパスが利益を生むサービスに育ってきている」と評価した。

 付加価値ARPUの上昇に関しては、「390円のauスマートパスが浸透していくと上昇する要因となるほか、iOSについては、長らく無料だったが、4月末から有料化をスタート。これの残存率が90%を超えている。当初は7割程度と見込んでいたが、これが予想を大きく上回った。これがドライバーになっている」と語った。

 同社では、3M戦略を深化させることを2013年度の重要テーマに掲げており、前年度までの「スマートパスポート構想」を、「スマートリレーションズ構想」へ展開。auスマートパスでは「タイムラインUI」の導入により、O2Oでの成果があがっていること、リアルな生活との連携強化に取り組んでいることを示した。

 さらにスマートフォンの利用拡大をサポートするスマートサポートでは、「スマホ購入者の4分の1が40歳以上だが、auスマートサポート利用者の70%が40歳以上。中高年以上に利用してもらっている。電話対応満足度は、約9割から満足していると回答してもらっており、スマホ拡大に重要なサービス、サポートにおいてうまく発進できた」と語った。

 一方、au通信ARPUは4110円となり、減少幅は3.1%に縮小。第4四半期の反転に向けて進んでいることを示した。また、データARPUは390円上昇したこと、スマートフォン浸透率は39.7%に達したこと、フィーチャーフォンからスマートフォンへ機種変更した場合、データARPU上昇額は2500円に達していること、毎月割の設定単価が前年同期比20%減の1400円となり、着実にコントロールできていることなどを、第1四半期のデータから示してみせた。

 モバイル通信収入は、auの純増およびARPUの上昇で、前年同期比4.6%増の4049億円に達したという。

 なお、固定通信料収入は、J:COMの効果もあり、前年同期比98.9%増の1742億円。FTTHの純増数は12万8000件となり、進捗率は29/2%。モバイルと固定をあわせた通信料収入全体では、22.0%増の5791億円となった。

 質疑応答では、UQコミュニケーションズへの追加周波数の割り当てに関して回答。「私はUQコミュニケーションズの会長も兼務しているので、総務省に出向き、認定証をいただいた。UQがこれまでかけてやってきたことが評価されたと思っている。うれしく思っている。UQコミュニケーションズはモバイルルーターでビジネスを広げ、今後、WiMAX 2+としてスマホなどにも対応していくことになる」としたほか、「UQコミュニケーションズは、周波数がこれ以上なくなるとどんどん速度が遅くなるという問題が発生する状況にあった。新たな周波数を得ることで顧客を増加でき、WiMAX 2+によって、LTEに比べて速度を上げることができる。周波数割り当てがなければ厳しい状況であった。成長のためには必須であった」と語った。

 また、電波が割り当てられなかったソフトバンク側が、KDDIに対しては総務省OBの天下りがあると指摘する件については、「優秀な方を会社の人材としてきていただくということであり、会社としてプラスなる」と回答した。

 消費税への対応については、「現時点では決めたわけではないが、基本的にはそのまま転嫁することになるだろう。「980円」などという、消費増税に対して微妙な通信料金設定などについても、どうするかを検討していかなくてはならない」などと語った。

 通信障害対策の進捗については、「恒久的な対策については、かなり前倒しで進んでおり、より障害時における安全なネットワークコントロールについての増設も前倒しで進んでいる。ある程度終わった段階で説明する。解約への影響はなかったと認識している。お客様にご迷惑をかけたお詫びとして減算した額は10億円を下回った」と述べた。

大河原 克行