ドコモ加藤氏、LTEでの“一日の長”をアピール


 10日、NTTドコモは2012年冬モデルの発表会を開催した。同社代表取締役社長の加藤薫氏から新機種および新サービスが紹介された。

 今回発表された機種は、スマートフォン9機種、タブレット1機種、iモード端末4機種、フォトパネル1機種、モバイルWi-Fiルーター1機種で、計16モデルとなる。

CMキャラの清水くるみ(左)、ドコモ加藤社長、同じくCMキャラの広末涼子

 今年6月に社長職に就いた加藤氏は、就任当時、経営方針として「スピード&チャレンジ」を掲げ、ユーザーにさらなる利便性を提供するという“ドコモの夢”に取り組むと宣言したことを振り返り、今回の冬モデルは、そうしたドコモが目指す“夢”を実現する製品であり、「ユーザーが求めるどんなニーズにも応えられる」と語り、プレゼンテーションをスタートした。

今回のラインナップは全16機種Xiの100Mbps対応、クアッドコアCPU、大容量バッテリー、NOTTV、NFCの5つのポイントを中心に紹介

 

各社出揃ったLTE、これまでの積み重ねをアピール

 2012年後半、国内の携帯電話業界は、従来よりも大幅に高速になった通信方式「LTE方式」のサービスが各社から出揃った。

 一方で、国内初のLTEサービスを約2年前、2010年12月から提供しているのがNTTドコモだ。プレゼンテーションでは、他社との具体的な比較までは行わないまでも、端々に他社への対抗意識が見て取れた。

Xiのロゴのそばに「docomo LTE」。急ごしらえで対応したようだ

 たとえば会場に用意されたフォトセッション用パネルなど、Xiのロゴが示される場所には「docomo LTE」の文字が並ぶ。これまで「Xi」というブランド名を展開してきた同社だが、さらに「docomo LTE」と付け加えたのは、auやソフトバンクがLTEサービスの名称をそのまま「4G LTE」と表現したため。囲み取材で問われた加藤氏は「2社が(LTEという規格名をそのままサービス名に)持ってきた。Xiという名称も浸透してきているが、あわせて表現することで、よりわかりやすくなるのではないか」と説明した。

 エリア整備についても、「人口カバー率」「実人口カバー率」「政令指定都市/全国主要都市でのカバー率」など、バラバラな指標で整備状況をアピールするなかで、加藤氏は「ドコモのLTEエリアは、これまでと同じ指標である人口カバー率で示しているが、他社と同じ実人口カバー率で試算してみたところ、他社と遜色ない数値になった。継続的な指標を用いていることを評価してもらえれば」と述べ、より数値で差がつきやすい人口カバー率という指標を維持する方針を示すことで、他社を牽制。プレゼン中にも「今冬モデルはXiを最大限に活かせるスマートフォン。2年間で着実にノウハウを得て、繋がるエリアと使えるサービスをしっかり提供する」と述べて、国内初のサービスを提供してきた、先行者ならではの立場で競争力があるとアピールした。

 既に600万人ものLTEユーザーを抱えるなかで、通信時の実効速度が上がらないのでは? という質問に対して加藤氏は「混み合った場所ではXiでも不便をかけているのは事実。しかしFOMAの3倍の速度であり、一定のスループットは保っていると思う。また600万ユーザーがXiのネットワーク下で動いているのは私どもの実績、強みではないか。広さと厚さの改善は今後も続ける」とした。

 

Xiが100Mbps対応に、Xiエリアの整備状況

 では、そのXiエリアの整備状況はどうなっていくのか。今回の会見で、2012年度末時点でのLTE基地局数は、全国で約2万1000局というこれまでの予定から、2000局増加して、約2万3000局になることが明らかにされた。これにより人口カバー率は約75%(従前は70%)になる。

 さらに2012年11月より1.5GHz帯および800MHz帯でのLTEのサービス提供がスタートする。これで1.5GHz帯の15MHz幅×2(現在、屋外のほとんどが2.1GHz帯/5MHz幅×2)という電波が利用できる都市では、下り最大100Mbpsでの通信が可能になる。対応機種が発売される11月時点での対象エリアは、新潟県新潟市の一部、富山県富山市の一部、石川県金沢市の一部、福井県福井市の一部、愛媛県松山市および松前町の一部、徳島県徳島市および藍住町の一部、香川県高松市および綾川町の一部、高知県高知市の一部、沖縄県那覇市の一部。なお、今年度内には、岩手県盛岡市の一部、宮城県仙台市の一部、福島県郡山市の一部、石川県小松市の一部でも利用できるようになる。

100Mbps対応基地局拡大ペースもアップ

 東名阪や福岡、札幌など都市部の多くでは利用できないが、そうしたエリアでは業務用無線(MCA)が1.5GHz帯を用いているため、15MHz幅というまとまった帯域でのLTEサービスが展開できない。2014年初頭には、東名阪および九州で100Mbps化が実施される見込み。またXi対応機種が、LTEの規格の1つである「カテゴリー4」に対応すれば、下り最大100Mbpsとなるエリアでは、下り最大112.5Mbpsで通信できることになるとのこと。カテゴリー4対応機種は、他社(イー・モバイル)では取り扱われているが、ドコモでの登場時期は来春になる見込みという。

新幹線全駅で利用可能に

 なお、ドコモでは、2万3000局(2012年度末時点)のうち、全国の県庁所在地において、屋外にある4000局で下り最大75Mbpsを実現する方針。これはFOMA用の2GHz帯の一部をXiに転用することで、帯域幅を広げて高速化を図るものだという。このほか、2012年度末までに、新幹線8路線104駅全て、そして全国の主要空港28カ所でもXiエリアが整備される。

 さらにauやソフトバンクモバイルの「iPhone 5」で新たに利用できるようになった「テザリング」については、ドコモでは以前より対応しており、Xi対応スマートフォンは追加料金も発生しない。プレゼンテーションでも追加料金がかからないことに触れた加藤氏は「今後どうアピールするか考えていないが、テザリングが重要視されるようになれば、広告などでの訴求を検討しなければならない」と語り、ニーズの高まりにあわせた対応をとる姿勢を示した。

 

3GB制限の「Xiパケ・ホーダイ ライト」の状況

 Xiユーザーのうち、音声通話プランを契約しているのは約440万件。こうした既存のXiユーザーのうち、どの程度が、10月開始の「Xiパケ・ホーダイ ライト」に加入したかについて、加藤氏は明言を避けた。

 ただし、10月以降、新たにXiへ乗り換えたユーザーのうち、「Xiパケ・ホーダイ ライト」を選んだユーザーは40~45%とのこと。1000円ほど高い「Xi パケ・ホーダイ フラット」を選ぶユーザーのほうが現状は多い中で、10月の利用動向を踏まえてユーザーがどういった選択をするのか、11月以降の動向にも注目していくという。

 

iモードへの需要を分析

 1年ぶりにiモード端末を提供することになったが、加藤氏は「2012年度末時点で(ドコモの総契約数のうち)Xi契約数が1000万件、そのXiを含めたスマートフォンのユーザー数が2000万件程度と見ている。つまりフィーチャーフォン(4000万件)とスマートフォンの比率は2:1」と、ドコモユーザーの内訳を披露した。

 そうした状況から、iモード端末をまだまだ求めるユーザーや、iモード端末を持ちながらタブレットを持つようなユーザーが一定数存在し、さらにバッテリーの持ちもiモード端末に一日の長があるとも指摘。そうしたユーザーに向けたiモード端末は今後もニーズがあると分析した。

 

dショッピング導入を受けたキャリア決済の限度額など

 今回の発表会であわせて発表された「dショッピング」では、さまざまな商品が取り扱われる。支払い方法として、携帯電話の利用料と合算できる、いわゆる“キャリア決済”の限度額をどうするのか、検討中とのこと。

 この点について、加藤氏は「他社の通販サービスでは月間3000円~4000円は利用されているようだ。そうした点を踏まえて検討する」とした。

 囲み取材では、ドコモ提供のクレジットブランド「iD」とポイントなどでの連携の検討についても触れられた。

dショッピングしゃべってコンシェルで検索も

 

dゲーム、マルチキャリア対応の狙い

 ソーシャルゲームサービス「dゲーム」も新たに発表されたサービスの1つ。いわゆるブラウザゲームで、iPhoneなど他社の携帯電話・スマートフォンでも利用できる、マルチキャリア対応となっている。

 これは「ゲームなので、友だち同士で遊ぶことが多いのではないか、という点から他社ユーザーも利用できるようにした。そのほうが輪が広がる。しかしこうしたマルチキャリア対応サービスは、初めてのケースであり、今後どうなるのか注視する」とした。一方、ドコモクラウドで実現する各種サービスは、現時点では同社の囲い込み施策の1つと位置付けられ、「将来的に、技術の進展などで環境の変化にあわせて、どういった形がいいか検討していく。自分たちのお客様が増えれば一番いいよね、というのはどこかにある」と弁明しつつ、今後の取り組みに含みを持たせた。

dゲームドコモポイントなどが利用できる

 

nanoSIM提供へ

 iPhone 5で採用された「nanoSIM」について、囲み取材で問われた加藤氏は「基本的に提供したいなと思っている。SIMロックフリー端末で利用したい方もいらっしゃるでしょうから」と述べ、時期は未定ながら、意欲を示した。

 一方で、Androidスマートフォンなど同社製品でnanoSIMを採用する時期については、具体的なスケジュールは未定とのこと。

 

ソフトバンクのイー・モバイル買収の影響について

 10月に入って、ソフトバンクのイー・モバイル買収が発表されている。質疑応答で問われた加藤氏は「急な話だったというのが正直な印象。噂は半年ほど前にあったと思うが、注意を払っていなかった」とする。

 イー・モバイルに割り当てられた周波数については「今後もイー・モバイルが存続することから、そのまま割り当てられるのだろう。しかしトータルでソフトバンクグループ全体で活用できる周波数は潤沢になり、競争上、(ソフトバンクが)強力になったなと思う。ドコモは、周波数あたりの加入者数は、実は最も多い状況となっている。今後、新しい周波数の割当という話があれば、特にそうした点を強調して割当を希望していく」と、周波数の逼迫度合いをアピールしていくとした。なお、1.7GHz帯で、新たな帯域が近く割り当てられる見通しとなっており、囲み取材で加藤氏は「できるだけ、そういったものが出てくれば」とコメントし、割当を求めることを示唆した。

 ソフトバンク社長の孫正義氏が「ドコモを抜いて業界1位になる」としたことに対しては「それは(孫氏が示した)意気込みですから、他社さんのことにはあまりコメントはできないんですが、我々も頑張ります」とコメント。

 さらにドコモの総合力と、ソフトバンクの総合力はどういった違いが? と問われると「あちらさんのことは、まだ勉強していないのでよくわからず何とも申しあげようがないのですが、ドコモの総合力は、クラウドを中心としたサービス、Xiを中心としたネットワーク、品揃えといったところ。品揃えのほうが多いかなと思いますし、クラウドサービスにも一日の長、ネットワークも“2年の長”があると思う」と、記者の質問に対して謙遜を交えながら自負をのぞかせた。

 

auの「スマートバリュー」対抗について

 競合他社のauが、携帯電話と固定通信をまとめて契約することで割り引きする「auスマートバリュー」を今春より提供し、主に関西での契約数に影響が出ていることを指摘されると、加藤氏は「私も関西人ですが、(関西は)コスト重視な傾向が根付いている。一方で、固定通信と手を組めないので、たとえばコンテンツなどで固定系、映像系とNTTグループの連携ができないか考えている」とした。

 

社長就任後初の新機種発表会、広末涼子も登場

 前任の山田隆持氏から、社長自ら、新商品の紹介を行うスタイルを導入したNTTドコモだが、今年6月に社長へ就任した加藤氏も、そのスタイルを踏襲。今回が初めての製品発表会となり、その感想と問われると「(心臓が)バクバクだった。スポットライトが暑かった」と報道陣の笑いを誘った。1時間近くのプレゼンテーションで、「(台本を)全て覚えられませんから、(台本を映すスクリーンが設置されている舞台下ばかり見て)視線が下に行っていたとは思います」と述べつつも、楽しい体験だったと語る。

新機種を手に説明する加藤氏「N-02E ONE PIECE」と充電台を紹介

 プレゼンテーションの後半は、CMキャラクターの広末涼子、清水くるみが登場。両人とも過去にドコモのCMで起用されたことや、今回の新機種の魅力を語った。特に広末涼子は「デビューがドコモだったと言っても過言ではないくらい。私の名前を覚えてもらったのも、ドコモのポケベルのCMだったと思う。育ててもらったというか、一緒に大きくなってきたような思いがある。今回、出演させてもらうことが本当に嬉しい」とコメント。

 こうした広末涼子のコメントを受け、加藤氏は会見後「あれ、実は、アドリブが豊富で、自分の言葉で喋っていただけたので、(台本に縛られず)私も楽でした。私も台本通りではなかった」と舞台裏を明らかにするとともに、今後も加藤氏自身が新機種発表会で登壇し、積極的に説明していくとした。

広末涼子清水くるみ

 




(関口 聖)

2012/10/11 18:53