今週のケータイ Watchの読み方 (2012年5月25日)


VoLTEのデモ公開、WIRELESS JAPANの見どころは


 

 エリクソン・ジャパンは5月21日、横浜に移転・開設したテスト施設を公開した。ネットワーク・インフラで先端技術を提供する同社においても、日本の研究施設は重要な意味を持つとのことで、高度なシミュレーションなど最先端の設備の一旦が披露された。

 公開されたデモンストレーションの中でも注目されるのは、「VoLTE」(Voice over LTE)と呼ばれる音声通話のデモだ。「下り最大75Mbps」などとデータ通信速度が注目されるLTEだが、大きな転換点となるのは、パケット通信を利用した通話サービスも規定されている点だ。高速な3GやLTEなどデータ通信の高度化に反して、音声通話は回線交換方式が維持され、その進化が据え置かれてきた印象だが、LTEではついに、この音声通話サービスについても回線交換に代わる方式として世代交代が見込まれているのである。

 「VoLTE」では、音声トラフィックの大幅な減少や、端末の電池消費の改善のほか、ビデオ通話、会議通話、プレゼンスなど、さまざまな付加サービスも可能。“枯れた”サービスとなっていた音声通話が、ネットと親和性の高いサービスに変貌する可能性もある。

 エリクソンではまた、「VoLTE」と従来の3Gの回線交換の通話をハンドオーバーする技術もクアルコムと共同で進めており、2012年2月にスペインで開催された「Mobile World Congress」では、クアルコムと共同でデモも披露している。この技術は日本のキャリア向けにも開発されており、日本で採用が予定されている「SR-VCC」方式は、2013年にも構築が開始されると見込んでいるようだ。

 こうしたハンドオーバーの技術は、「VoLTE」による通話サービスが、当初は現在の3Gほど広いエリアをカバーできないことが見込まれるために開発されている。LTEのエリアを完全に構築するには長い時間が必要になるため、3Gと「VoLTE」をハンドオーバーする技術が、現実的には必要とされているようだ。

 このような技術開発の分野では、新技術が突然市場に現れてサービスが開始される、といったケースは稀だ。近い将来の通話サービスを考える上でも「VoLTE」の技術は多くのヒントが詰まっていそうだ。

 

 このほか21日には、NTTドコモが「WIRELESS JAPAN 2012」の展示内容を先行して報道陣に公開した。「透過型両面タッチディスプレイ」など試作のハードウェアのほか、翻訳、グループウェアなど、同社の方針に沿ったクラウドサービスなどが幅広く展示される見込み。

 KDDIも23日に「WIRELESS JAPAN 2012」の出展内容をニュースリリースで告知。最新端末のほか、スマートネットワーク構想に基づいた通信サービスや、最先端の無線技術、NFC、M2Mなども紹介される見込みだ。


エリクソンがネットワークのテスト施設を公開、VoLTEをデモ

ケータイ用語の基礎知識 第558回 : VoLTE とは

エリクソン、「Mobile World Congress 2012」展示内容を解説

クアッドコアでも省電力、最新技術を展示するクアルコム

クアルコムとエリクソン、LTEからW-CDMAへ通話切替実験に成功

ドコモ、「WIRELESS JAPAN」の展示内容を一部先行公開

 

(太田 亮三)

2012/5/25 21:24