KDDI、災害時を想定した車載型基地局の運用コンテストを実施


KDDIが実施した「災害時用車載型基地局の公開訓練」

 KDDIは6日、神奈川県川崎市の多摩川河川敷で「災害時用車載型基地局の公開訓練」を実施した。大規模災害発生時に早期にエリアを復旧するために使用される車載型基地局の運用技術の向上を目的として、車載型基地局の設営からサービス開始までを模擬訓練する社内コンテストとして実施され、報道関係者向けにも公開された。


車載型基地局の運用技術向上を目的としたコンテスト

 KDDIでは、全国に13あるテクニカルセンター(TC)を中心として、大規模災害に備えて車載型基地局や移動電源車、可搬基地局などを迅速かつ安全に取り扱うための訓練を日々行っている。今回の運用コンテストには、仙台TC、小山TC、名古屋TC、広島TCという全国から選抜された4事業所のチームが参加。車載型基地局の出動からサービス開始までを模擬訓練し、安全面・技術面・効率面での評価により、優勝チームの座を競った。

 また、優勝を競うとともに、細かい部分ではTCごとに異なる運用方法や工夫などを、コンテストを通じて相互に学び、運用技術の共有によってサービスの品質向上を図ることを目的とした。


選抜チームによる車載型基地局の運用コンテストが行われた

 

東日本大震災では11台の車載型基地局が出動

 車載型基地局は、携帯電話に電波を届けるタワー型アンテナと、KDDIのネットワークにつながる衛星回線を捕捉するパラボラアンテナを搭載している。大きなエリアを確保できる大型の車載型基地局と、小回りのきく小型の車載型基地局の2種類があり、KDDIは全国に計15台の車載型基地局を保有している。

 災害復旧用の設備としては、車載型基地局のほかに、停電している地域の既存基地局などに電源を供給する移動電源車や、小型携帯電話基地局となる衛星フェムトセルなどがあり、既存基地局の破損具合などの被災状況によって使い分けられる。

 東日本大震災では、KDDIは11台の車載型基地局を出動し、のべ17カ所のエリアを早期に復旧した。また、移動電源車31台を出動し、衛星フェムトセルを9カ所に設置したほか、au携帯電話の充電サービスや発信専用携帯電話の無料貸出などを実施(4月7日時点)。3月11日の地震発生後の約1時間後となる16時には車載型基地局と移動電源車に出動指示が出され、50分後に準備を完了して出発。現地に到着した車載型基地局の1台目の立ち上げが完了したのは13日の早朝3時だという。


小型の車載型基地局(左)と、大型の車載型基地局移動電源車
衛星フェムトセル

 

車載型基地局と移動電源車などを増強予定

 KDDIでは東日本大震災を受けて、災害復旧用の設備を増強する予定。移動電源車と非常用発電機の設備を現在の計55台から130台に増やすほか、車載型基地局を15台から20台に増強する。

 また、衛星回線だけでなく無線回線でもネットワークにつながるキット型可搬基地局を新規に27台配備するとしている。そのほか、携帯基地局と交換局をつなげる無線エントランス設備を追加配備したり、約2000の基地局で、24時間以上稼働可能なバッテリーを配備するなどの取り組みを行う予定。

 

車載型基地局運用コンテストの模様

 コンテストは午前の部と午後の部の2回に分けて行われ、午前の部では仙台TCと名古屋TCが競技し、午後の部では広島TCと小山TCが競技した。報道関係者には午後の部が公開された。

 午後の部のコンテストではまず、KDDI 技術統括本部 運用本部 副本部長の難波一孝氏が車載型基地局の出動を指示。各4名の班員で構成された両チームは準備完了後に出動を開始し、先導車とともに車載型基地局を移動して設営場所を決めるなど、実際の出動に即した手順で競技が行われた。

 設営場所に停車し、車両の固定やアースの設置などを行ったあとで、パラボラアンテナを立ち上げて衛星回線を捕捉。並行して、タワー型アンテナを組み立て、無線設備のセットアップを行った。なお、電波法の関係上、この訓練では携帯電話用の電波は発していないとのこと。サービス開始までの手順を完了し、電話で完了の報告を行うまでが競技内容として行われた。

 各チームには2名の審査員が配属され、設営手順や確認作業などを細かくチェックしていた。競技の終了後には、審査員からチームへのフィードバックも行われた。


KDDI 技術統括本部 運用本部 副本部長の難波一孝氏車載型基地局は先導車に続いて走行。先導車は機材を搭載し、安全確認などを担う
車載型基地局からアースを設置設営手順などの声かけ確認を行っていた
タワー型アンテナの組み立て衛星回線を捕捉するパラボラアンテナ
審査員が設営手順や確認作業などをチェック

 

優勝チームは広島TC、特別賞に仙台TC

 競技の終了後、全体審査が行われ、表彰式で優勝チームが発表された。優勝は、設営に要した経過タイムでは全体の2位だった広島TC。また、特別賞に仙台TCが選ばれた。

 総評で、KDDI 技術統括本部 運用本部 運用品質管理部 岡田利幸氏は、広島TCは班員の役割分担が明確だったと評価。さらに、設営完了後に車載型基地局の前で机を設置し、携帯電話の充電サービスを行ったこともアピール度が高くて良かったとした。また、ほかの3チームについても、声かけ確認やダブルチェックがしっかりできていたと評価した。

 会場ではこのほか、コンテストで用いられた大型の車載型基地局のほか、小型の車載型基地局、移動電源車、衛星フェムトセルに加えて、衛星携帯電話や小型のフェムトセルなどの展示も行われていた。


KDDI 技術統括本部 運用本部 運用品質管理部 岡田利幸氏コンテストに参加した4チームの班員
広島TCが設営完了後に行っていた携帯電話の充電サービス会場に展示されていたフェムトセル
小型の衛星携帯電話衛星携帯電話(BGAN)
衛星携帯電話(インマルサット)

 




(鈴木友博)

2011/12/7 11:53