イー・アクセス四半期決算、純利益などモバイル初の黒字化


Pocket WiFi Dockをアピールするエリック・ガン氏
試算

 イー・アクセスは、2010年度第3四半期まで(2010年4月~12月31日)の連結業績を発表した。

 第3四半期までの連結業績結果は、売上高が1318億円6800万円、営業利益が157億円700万円、経常利益が82億3400万円、四半期純利益は47億円7400万円となった。

 なお、イー・モバイルは、昨年7月1日、それまでの持分法適用関連会社からイー・アクセスの完全子会社となった。株式交換による経営統合は企業結合会計上、イー・モバイルがイー・アクセスを「逆取得」した形となる。

 このため、連結の財務諸表はイー・モバイルの業績が基準となり、業績の累計期間は、イー・モバイルの4月~12月までの9カ月間の業績に、イー・アクセスの第2四半期以降6カ月分の業績が連結したものとなる。会計上、前年同期との増減率比較は開示されており、売上高が対前年同期比108%増、営業利益が対前年同期比0.4%増、経常利益は対前年度比3.3%減、四半期純利益は対前年度48.8%増となっている。

 なお、2011年3月31日までの2010年度通期での連結業績予想に変更はなく、売上高が1900億円(69.4%)、営業利益は250億円(62.8%)、経常利益が126億円(65.3%)、純利益が90億円(53%)となる。()内は第3四半期までの進捗率。

 モバイル事業(イー・モバイル)の売上げは1053億2000万円で、営業利益は73億2400万円、経常利益は8億2000万円、純利益は6億4000万円、設備投資額は194億円5000万円。通期予想では、売上高が1500億円、営業利益が130億円、経常利益と純利益がそれぞれ40億円、設備投資額が390億円。通期の予想を達成するには、商戦期の第4四半期に大幅な増収増益が必要となる。

 12月末までのイー・モバイルの契約数は292万3600件で、1月には300万契約を突破した。第3四半期のイー・モバイルのARPUは、前期の3250円から150円下がって3100円となった。解約率も前期の1.29%から上昇し1.4%となっている。1人あたり顧客獲得費用、いわゆるインセンティブは従来と変わらず2万5000円。



ガン氏、スマートフォンの好調をアピール

 業績を説明した代表取締役社長のエリック・ガン氏は、モバイル事業の好調により「かなり改善した」とアピールした。イー・モバイルは今期、経常利益と当期純利益において初の黒字化を達成している。

 また、イー・モバイルが1月に300万契約を達成し、イー・アクセスのADSLサービスに微減はあるものの、グループ累計の契約件数は第三四半期に500万件にせまった。このほか、連結の設備投資額が2009年度第3四半期の335億7000万円から、37.8%減少して、今期208億9000万円となったことが報告された。

 ガン氏は、業績好調を印象づけるトピックとして、スマートフォンの投入を挙げた。同社はHTC AriaやPocket WiFi SといったAndroid端末を投入しており、滑り出しが好調であると説明した。このほか、理論上のデータ通信速度が下り最大42Mbpsである「EMOBILE G4」や、スマートフォン向けの通話定額キャンペーン、NTT東西とのFMCサービス、法人向けのPocket WIFiとiPad(Wi-Fiモデル)のセット提供などに言及した。

 また、通期目標の達成には、第4四半期の業績が大幅に改善されなければならない点を指摘されたガン氏は、HTC AriaやPocket WiFi Sといった新商品を複数投入したことを説明し、「新商品にかなり期待している。スマートフォンはARPUが高く良い数字が出る。かなりがんばらなければならないが、自信がある」と話した。

 ガン氏が自信を見せる背景には、同社が投入したスマートフォンが好調なセールスを記録している点があるようだ。イー・モバイルはデータ端末を中心にサービス展開しており、これまでデータ通信端末やモバイルWi-Fiルーター(Pocket WiFi)を除く、コンシューマー端末の販売数は5%程度と小さいものだったという。それがHTC Aria投入以降、コンシューマー分野で15%と販売数が上がっており、高いARPUを記録している。

 スマートフォン向けの通話定額キャンペーンでは、他社宛の通話についても定額と対象としているが、現在3人に1人が契約しているペースとのこと。現時点では利用者データを集めており、本サービス化は未定だが、赤字になるような過剰な通話はないとしている。データと音声の利用料が徴収できるため、従来のデータ端末のARPUの2倍となる、6800円のARPUが得られるという。

 なお、ユーザー数の拡大とともに、イー・モバイルでは販売代理店を通じたイー・モバイルショップの面展開も進めている。現在までに40弱のイー・モバイルショップが設置されており、同社ではサポート体制を強化して顧客満足度を上げていきたい考えだ。

 このほか、スマートフォンなどの商品拡充されたことにより、ネットブックとデータ通信端末契約をセット販売していた当時の顧客を新たな端末やサービスに誘導できるようになったという。


 



(津田 啓夢)

2011/2/9 21:02