インテルとUQが説明会、「WiMAX」の現状と今後とは


左からインテル山本氏、インテル宗像氏、UQ野坂氏

 インテルは10日、WiMAXに関する同社の取り組みを紹介する記者説明会を開催した。同社取締役副社長の宗像 義恵氏から説明が行われたほか、ゲストスピーカーとして、UQコミュニケーションズ代表取締役社長の野坂 章雄氏も登壇した。

増加するネット接続、そこを担うインフラ作り

 宗像氏は、今後の主要な動向として、インターネットへ接続するデバイスが飛躍的に増大すると指摘する。パソコンやスマートフォンのほか、組込機器による機器間通信など、現在は15億人が利用し、40億台存在するネットワーク接続機器は、5年後には25億人/150億台、10年後には40億人/310億台に達する。同社では、さまざまな機器を使いながら利用者が共通のユーザーエクスペリエンスを得られることを目指すコンセプト「コンピュート・コンティニュアム」を掲げており、利用者がオフィスでも外出先でも週末でも、便利にネットワークサービスや端末を利用できるようにするためには、今後爆発的に増えるトラフィックをまかなえるインフラが重要となる。

インテルの宗像氏

 そこで現在取り組んでいるのが高速無線通信技術の「WiMAX」で、対応製品としてパソコン向けの「Centrino’Advanced-N+WiMAX6250」を展開する。UQが商用サービスをスタートした昨年夏の段階と比べ、現在提供しているものは、エラー訂正方式の「HARQ」のカテゴリー5に対応して、より通信速度の向上が図られているほか、マルチバンド対応で海外でWiMAX用に用いられている周波数でも通信できるようになっている。またWi-Fi機能とも統合されている。

 これにより、1年前は7メーカー11機種だったWiMAX機能内蔵パソコンは、今年5月に9メーカー33機種となり、今年11月に10メーカー46機種になる予定だ。また宗像氏は今後、パソコンだけではなく、車載端末、デジタルサイネージなどでの利用が進むと指摘。会見後にあらためて質問したところ、パソコンに次いで期待できるジャンルとしてタブレット端末も挙げていた。

 WiMAXの動向としては、今年末までに世界で8億人以上の利用を見込む。固定での利用をあわせると、149カ国、587事業でWiMAXサービスの計画、および導入になるとのこと。技術面でのロードマップとしては、現在、UQが用いている規格がモバイルWiMAX(IEEE 802.16e)となっており、その高度化版「IEEE802.16e Enhancement」のほか、2012年ごろに下り最大300Mbps以上を実現するという「WiMAX2(IEEE802.16m)」の標準化が進められている。WiMAX2では、高速化二加えて時速350kmまでの接続(現在は時速120km)が保証され、今年10月には国際機関のITUにおいて、第4世代移動体通信規格として選定されている。

 宗像氏は、今後展開する販促キャンペーンを紹介し、今後も積極的にWiMAXを推進する姿勢を示した。その一方で、インテルが9月、インフィニオンテクノロジーズの無線事業を買収し、LTEへも取り組んだことを質疑応答で尋ねられると、「市場が(普及する)技術を決めていく。それをサポートするのがインテルのスタンス。現在利用できる高速技術の1つとしてWiMAXをサポートしているが、それ以外のテクノロジーも同じように取り組んでいきたい。複数ある世界標準は、それぞれサポートする」とコメントし、排他的な姿勢で1つの技術に取り組むのではなく、さまざまな技術に対応していくとした。

 

バリュープランで契約率倍増

UQ野坂氏

 今回、記者会見の会場となった施設で25年前に結婚式を挙げた、と私的なエピソードで語り始めたUQの野坂氏は、「インテルとUQは夫婦のようなもの」と説明する。デバイスとインフラは互いの存在が必要であり、それぞれが協力することで、新たなバリューを提供できる、とする。

 「WiMAX」とは、Worldwide Interoperability for Microwave Access、つまりマイクロウェーブ(高域の電波による、世界的に互換性のあるアクセス方式)という豆知識を披露した同氏は、8月末に全国で1万局、今年度末(2011年3月末)に1万5000局を展開すると説明。質疑応答でエリア展開の方針について、あらためて問われると「当社はデータ通信専用で展開している。電話であれば緊急通報もあり、全国津々浦々のカバーが求められるが、データ通信専用の当社では、都市部や生活圏などをカバーする。八王子に住む学生に利用してもらえるようにするには、八王子周辺、そして学内(のカバレッジの穴)を埋めていく。そうした取り組みは今年、東京で完成したので、今後中部圏や関西圏で進めていく。全国津々浦々のカバレッジの前に濃淡をつけてやっていく」と説明し、データトラフィックが多く発生する場所を優先的にカバーするとした。

 最近の動向として、就職活動中の学生にWiMAX内蔵パソコンが利用されている、とする野坂氏は、面接などへの申込をスピーディに行いたいと考える学生にとって、高速通信で、接続時の手順が簡便なWiMAXはメリットがあるとした。このほか、具体的な利用シーンとして、東京大学と京都大学のボートレースを中継したUstreamのバックボーン回線、あるいは企業内での映像付きSkypeの利用などが紹介された。

 10月からスタートしたキャンペーン「WiMAX PC バリューセット」は、ファストフードのセットメニューをイメージしたもの、とする野坂氏は、質疑応答でその効果を問う質問を受けると「WiMAX内蔵パソコンからのアクティベーション率(契約率)は8%だった」と率直に回答。ユーザーにUQ自身やWiMAXというサービスが認知、あるいは理解されていないことで、契約に繋げるのが難しい状況だったとする。そこへ投入された施策であるバリューセットにより、アクティベーション率は15~16%になったという。10日にインテルが発表した新たなプロモーション施策などにより、さらなるアクティベーション率向上を図り、口コミ効果などを喚起して、最終的には「100台出荷されれば全て、に持って行きたい」と意欲を見せた。

 NTTドコモがLTE方式、ソフトバンクモバイルやイー・モバイルがDC-HSDPA方式によるサービスを近日提供開始とする中、対抗策を問われた野坂氏は「各社揃ってきて、モバイルブロードバンド元年と周囲に言っているが、モバイルWiMAXでは、伝送信号のうち、誤り訂正符号(通信エラーを補正する信号)を除いた通信速度を示している。つまり下り最大40Mbpsは、6bitのうち、誤り訂正符号の1bitを除いた、5/6の数値だが、他社は6/6で表現している」として、他社の掲げる数値はUQよりも低くなるとする。さらに現在の料金プランも、他社より安価であり、現状では最速かつ最安、とアドバンテージがあるとした。その一方で、料金施策は重要なテーマとの認識を示し、今後の競争環境を注視するとした。

 WiMAX2については、10月の展示会「CEATEC JAPAN 2010」で示した内容からさほど変化はなく、2012年に下り最大330Mbpsというサービスを実現すべく取り組むとした。その基地局展開は、「現在のWiMAX基地局に加えて、WiMAX2の基地局を繋がる。WiMAX2のエリアに入れば100Mbps、そうでなければ最大40Mbps、ということになる」として、現在のWiMAXのサービスエリアとハンドオーバーできる形にするとした。

 

いつでもどこでもパソコンプロジェクト

インテル山本氏

 インテルでは、WiMAX内蔵パソコンの認知度向上、理解促進を目指し、「いつでもどこでもパソコンプロジェクト」を11月中旬~12月中旬に実施する。屋外広告やWebサービスを利用したプロモーションとなる予定で、交通広告のほか、有楽町などでノートパソコン風にデザインした弁当箱を使ったランチボックスを1万個販売する。また、有楽町イトシアのショーウィンドウにディスプレイを並べ、遠目に見ると巨大なノートパソコンのように見える屋外広告や、車の後部トランクに大きなディスプレイを載せてノートパソコン風に見せる広告を展開する。

 説明したインテル マーケティング本部長の山本 専氏は、これまでも行ってきたプロモーション活動の一環である一方、さらに注力して今後1カ月集中的にアピールすると説明。ターゲット層を都内に住むビジネス層として、WiMAX内蔵パソコンの便利さなどを伝えたいとした。

 



(関口 聖)

2010/11/10 15:27