ニュース

元巨人の宮本和知氏が9軸センサー内蔵IoTボールを投げる、アクロディアの新製品

 9軸センサーを内蔵したボールを元巨人の宮本和知氏が投げると、キャッチャーのミットに吸い込まれたあと、画面には球速73km/h、1分あたり1000回転、ボールの回転の向きが表示される――野球のピッチングをデータ化できる、アルプス電気製の9軸センサーを内蔵したボール「Technical Pitch(テクニカルピッチ)」がアクロディアから提供される。

 スマートフォンと組み合わせてピッチングに関する情報を数値化してくれるもので、まずはプロ野球、大学、高校といった団体での利用を目指す。投球専用でバッティングには使えない。ボール1つあたりの価格は1万9500円程度とのことだが、日常的にピッチングする場合は、ボールの販売ではなく年間でのリース契約といった形態で提供する。コンシューマー向けにも販売していく。

宮本氏がピッチングを披露

 25日の記者説明会会場は、物まねタレントのコロッケが手がけるライブ会場「コロッケ ミミックトーキョー」。司会者とともに女優の夏樹陽子が進行を務め、ショーアップされた演出という一風変わった会見。

堤氏

 アクロディア代表取締役社長の堤純也氏は、IoT時代が叫ばれる中、身近なところからという視点で野球のボールにフォーカスを当て、2年ほど前から開発を進めてきたと説明。アルプス電気では投球という衝撃が発生する中で、ケース内にセンサー、通信モジュール、電池を収めることに苦労したという。一般的な硬球は、中心にコルクなどの小さな球が用いられているが、それと同じサイズにセンサー類をまとめた。表面は硬球と同じく牛革で、一般的な硬球と見た目で違いを出すため牛革を縫い付ける糸は青色になっている。

 堤氏は「よく言われるボールのキレとは何なのか、データ化できれば育成方法も代わるのではないかと思って開発した」と説明。何度も試作を重ねて、プロ野球向けの練習球を製作する企業とともに、表面の素材や重さ、大きさが公認野球規則に準じたものになるよう仕上げられた。投げるとカーブやストレートなどの球種、球速、回転数、回転の向きといったデータを収集でき、クラウドで投手ごとにデータを蓄積できる。

 センサー内蔵で、ピッチングの練習に活かせるボールは、先んじてスポーツ用品メーカーのミズノから発表され、来春の発売を目指すとされている。堤氏は同社製品のTechnical Pitchは9月25日から提供するというスピーディな展開になっていること、9軸センサーでより多くのデータを得られることが特徴と説明。さらに一部の球場で導入されている弾道測定システム「トラックマン」と比べて、遜色ないデータ精度になるよう仕上げたことも大きな特徴と説明。トラックマンは一度に1人分しか測定できず、その導入費用も高価とされる一方、「Technical Pitch」はよりリーズナブルで、多くのピッチャーで同時に測定できる。

Technical Pitch
アプリ
中村氏

 巨人やロッテでコーチを務め今回はアドバイザーとして開発に携わった中村稔氏は、現在、千葉にある大学の野球部で指導しているとのことで、同部の選手が投げた様子を紹介。巨人でのコーチ時代、江川卓や西本聖、槙原寛己など、名だたる選手を指導してきたという中村氏は「いいピッチャーは回転数が多く、初速と終速の差が少ない。たとえば江川は、守備練習の際、江川が投げた球をバントしようとしても必ずフライになり、絶対転がせないほど回転数が高かった。ピッチングでは、よく『腕を振れ』と言われるが、頭から先をしっかり振ることが課題になる。とにかくピッチャーはリリースポイントにどれだけ力が入るか。ボールを背負い投げする、あるいは手をぱっとふると言うが、『Technical Pitch』があればコツが掴める」と説明する。

片岡氏(左)と宮本氏(右)

 元巨人の宮本和知氏は、「普段通り、ルーティン(同じ行動)をしているのに、なぜか今日はボールがいかない(調子が悪い)ということがある。今までは漠然としていたが、Technical Pitchを使えば弱点が明確になる。ボールの回転数などでキレの良し悪しがデータで見え、選手のコンディションがわかる」と期待するコメント。茨城ゴールデンゴールズの選手兼監督である片岡安祐美氏も「野手上がりの監督として、Technical Pitchで選手の調子がわかるのはすごく助かる」と選手自身のコンディションの把握だけではなく、チームを率いる立場にとっても役立つのでは? と語っていた。