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「SORACOM」がSIGFOXにも対応、新機能やLoRaWANデバイスの追加も
2017年7月5日 11:25
ソラコムは、IoT向け通信プラットフォーム「SORACOM」で、IoT向け通信規格のひとつであるSIGFOXに対応すると発表した。基地局はKCCS(京セラコミュニケーションシステム)が展開し、SORACOMでは対応デバイスと同社のIoT向けソリューションをセットで提供する。
SORACOMのSIGFOXはアプリ利用料もコミコミで
SIGFOXは、フランス生まれのIoT向け通信規格。1カ国につき1事業者がパートナーとなって展開しており、日本ではKCCSがライセンスを得ている。これまでソラコムでは、同じくIoT向け通信規格「LoRaWAN」に対応したデバイスと基地局や、携帯電話網を活用するサービスを提供してきたが、第3の選択肢としてSIGFOXにも対応する。どちらも通信速度は遅いが、バッテリー消費が少なく広いエリアを免許不要でカバーできる規格。
どの通信規格を使っても、同じ体験ができるよう環境を整える形だが、それでもLoRaWANは基地局を導入企業が自社で設置してプライベートネットワークとして利用する場合、あるいは他社とシェアする場合といった形だったのに対して、SIGFOXはKCCSがエリア拡充を図るという違いがある。またSORACOMが提供する各種アプリケーションも、SIGFOX向けプランでは全てが使い放題という違いがある。
対応デバイスとして、7種類のセンサーを搭載するプロトタイプ端末「Sens'it」(8478円、税抜/以下同)、Optexと共同開発したドライコンタクトコンバーター(3万9800円)がラインアップ。デバイスの価格には、1年分のアプリ利用料も含む。1年経った後のアプリ利用料は1台あたり年額1440円。
LoRaWAN対応デバイス
免許不要で低消費電力かつ広範囲に通信できる規格「LoRaWAN」に対応する新たなデバイスや屋外基地局(ゲートウェイ)を発売する。当初はエイビット製のリファレンスデバイスしか選択肢がなかったところに、5月、LoRaWANデバイスのオープン化を発表しており、相互接続試験が済んだ端末が今回、発売されることになった。
7月5日からは、LoRaWAN対応デバイスとして、GISupply製の「LoRa GPSトラッカー LT-100」(1万5800円、税抜/以下同)が発売される。8月にはSTマイクロエレトロニクス製の組込ボード「STM32L0 Discovery Kit LoRa(B-L072Z-LRWAN1)」(価格未定)が登場する。
このほか、これまで屋内用製品しかなかったLoRaWAN用の基地局(ゲートウェイ)のラインアップに、8月下旬からKerlink製の屋外対応基地局「Wirnet iBTS Compact 923(IP66対応)」が登場する。こちらの価格も未定。
新アプリ「Inventory」「Junction」
通信サービスの「SORACOM Air」をはじめ、データの暗号化などをクラウドで処理する「SORACOM Beam」、デバイスからのデータを特定のクラウドサービスへ転送する「SORACOM Funnel」など、IoTサービスを手がける企業に向けたさまざまなアプリを提供するソラコム。7月5日には、新たなアプリとして「Inventory」「Junction」の2つが発表された。
「Inventory(インベントリー)」は、デバイスでのプログラムの遠隔実行やファームウェアの遠隔更新など、デバイス管理のためのフレームワーク。OMAという団体が策定した「LwM2M」という標準規格をベースにしたもので、SIMカードを装着したIoTデバイスに対して、データの読み書きや継続的な監視、コマンド実行を行えるようになる。
管理画面もLwM2Mに沿った形で、デバイスのデータがツリー形式で表示され、デバイスの情報、ソフトウェアのコンポーネント、アナログのデータ入力値などを確認できる。まずは提供先を限定する「リミテッドプレビュー(Limited Preview)」として無料で提供される。
もう一方の「Junction」は、IoTデバイスから送られてくるデータを従来より自由自在に扱えるようにするもので、ソラコムでは「透過型トラフィック処理サービス」と命名。“インスペクション”と呼ばれる機能では、ソラコムのネットワーク上にあるパケット交換機で、利用企業のIoTデバイスのトラフィックをまとめて、統計情報として可視化する。
ミラーリング機能では、本来のデータと全く同じデータをコピーして、ユーザーが指定したサーバーへ送る。これにより、業務上のデータ送信はそのまま、監視用サーバーで同じデータを受け取ることで異常や外部からの侵入を検知する、といった利用が可能になる。
リダイレクション機能では、交換機を通過するデータが全て、ユーザーの指定するサーバーを経由するよう、経路を変更できる。トラフィックを制御するエンジンを経由することで、ファイル転送やファームウェアの転送は遅くしつつ、センサーが検知したデータの送出を優先する、といった使い方ができる。
SORACOMを利用する事例は1年3カ月で2倍以上に
MVNOとして大手キャリアからSIMカードを調達しつつ、クラウド上にバーチャルな交換機を用意し、IoT向け通信事業者として安価な回線を提供、さらにはそこでやり取りされるIoTデバイスからのデータを扱いやすくするためのアプリケーションをどんどん充実させているSORACOM。
サービス開始から2年弱で、SORACOMを利用する企業のユーザーアカウントは7000を超えた。2016年4月の時点では3000だったとのことで、1年3カ月で2倍以上の成長を遂げたことになる。
今回、SIGFOXへの対応のほか、ソニーが4月に発表した独自のIoT向け通信規格(LPWAのひとつ)に対して、7月から実証実験で協力することが明らかにされた。またLoRaWANでは相互接続試験(IOT)をさらに洗練させて、デバイスの拡充を図る構え。
アプリケーションも拡充させており、IoTを取り巻く通信~データ処理環境を全方位で攻める姿勢が、またあらためて示された格好だ。