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ドローンが飛び交う2020年代の運航管理システムを開発へ、NECやドコモなど5社が参画

 NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)は、無人航空機(ドローン)の運航管理システムを開発する研究開発プロジェクトを開始した。NEC、NTTデータ、日立製作所、NTTドコモ、楽天の5社が参画し、多数のドローンが都市部を飛行する2020年代の社会を想定し、同じ空域で複数のドローンが安全に飛行できるような運行管理システムの開発を目指す。あわせてJAXA(宇宙航空研究開発機構)が担当する運航管理システムの全体設計に関する研究開発プロジェクトも発表された。

左から、JAXA 理事 伊藤文和氏、楽天 執行役員 虎石貴氏、NTTドコモ 執行役員 中村寛氏、NEDO 理事長 古川一夫氏、経済産業省 製造産業局長 糟谷敏秀氏、NEC 執行役員副社長 木下学氏、NTTデータ 執行役員 臼井伸一氏、日立製作所 理事 南邦明氏

 政府は2020年代に無人航空機(ドローン)を使った荷物配送サービスの実現を目指している。現在のドローンは目視できる範囲内で単体での飛行にとどまっているが、将来的には目視の範囲外で飛行するドローンが、同じ空域に複数飛行する状況が想定される。そうした状況に備えて、安全で効率的に飛行するための航空管制システムが必要とされている。

 ドローンの航空管制システムは国内・海外を含め多くの事業者が研究開発を行っている分野だが、NEDOは、2020年までにさまざまなメーカーのドローンを、物流、災害対応、警備といった分野横断的に管制するシステムの開発を目指す。日本特有の事情にあわせたシステムとするほか、将来の国際標準化も見据えているという。

システム構成

 NEDOが想定する運航管理システムは、3つの機能が連携して動作する。1つは各ドローンや管制センターに地図や気象、電波状態の情報を配信する「情報提供機能」。2つ目は、複数のドローンをその用途別に集中管理する「運航管理機能」。そして3つ目が、用途別の運行管理システムを統括し、他のドローンや障害物にぶつからないように飛行するための「運航管理統合機能」だ。今回のプロジェクトでは、ドコモと楽天が物流サービス向けの「運航管理機能」を開発する。NEC、NTTデータ、日立は「運航管理統合機能」の開発を担当する。

 NEC、NTTデータ、日立の3社が取り組む「運航管理統合機能」では、複数のドローンを安全に飛行させるための航空管制を行う。ビルなどにぶつからず飛ぶ、飛行禁止区域を避けて飛ぶ、他のドローンや有人飛行機を回避して飛ぶといった機能が求められる。フライトプランを策定し、飛行中の各ドローンの位置を把握。衝突を回避するためのフライトプランの変更や中止といった指示を必要に応じて発信する。

 「運航管理機能」は、ドローンを利用した具体的なサービスを実現するため、各分野ごとに必要な機能を搭載する。用途別に開発されるが、ドコモと楽天は物流分野向けの運航管理システムを開発する。このうちドコモは、ドローンに通信端末を搭載。空撮カメラ映像を配信するドローンや、通信機能を通じて各ドローンに飛行情報を提供する「ドローンの管制塔」のような役割のドローンの開発を目指す。楽天はドローンを使った宅配サービスの実証実験をすでに行っているが、今回のプロジェクトでは、この宅配ドローンシステムを管制システムに連携させる。

プロジェクトで使用される楽天のドローン

2019年度には福島県で飛行実験

 同プロジェクトは3年計画で、2019年には実環境下での飛行実験を想定している。飛行実験では福島県の浜通りエリアに整備された「福島ロボットテストフィールド」を活用。南相馬市から浪江町にかけての全長約13kmの飛行ルート上で、多数のドローンを衝突させずに運航させる実証実験を行う計画だ。

ドローンの標準技術に、「IOT」も検討

 NEDO ロボット・AI部 プロジェクトマネージャーの宮本和彦氏は、「日本における唯一の統合管理機能を目指す」と宣言。ドローン管制システムを将来的には民生品を含めたすべてのドローンが対応するようなプラットフォームへと発展させていく考えを示した。プロジェクトではJAXAが運航管理システムの全体設計を担当するが、その中でドローンで管制システムに対応するために必要なインターフェースや通信プロトコルを検討する。

 プロジェクトのスタート時点ではドローンのハードウェアには制約はなく、必要に応じてドローンのハードウェア上の制約も検討していくという。その中でドローンの要件策定や、相互接続試験(IOT:インターオペラビリティテスト)や認証制度なども検討される。