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「家族まるごとUQへ」野坂社長が語った100万件への戦略

 UQコミュニケーションズは、MVNOの「UQ mobile」でこの夏に発売するスマートフォン2機種と、2回線目からを割り引く「UQ 家族割」などを発表した。発表会にはUQコミュニケーションズ 代表取締役社長の野坂章雄氏が登壇し、大台(≒100万契約)を目指すという今後の戦略が語られた。

UQコミュニケーションズ 代表取締役社長の野坂章雄氏

 MVNOの「UQ mobile」は、「この半年で大きく変わった」と振り返る野坂氏。特に2016年の10月から端末ラインナップを一気に拡大し、同時にテレビCMの「UQ 三姉妹」シリーズを全国で放映開始した。テレビCMは銘柄別のCM好感度ランキングで7カ月連続でトップ10を維持しているとのことで、「UQ mobile」の認知度は1年前の24%から2017年3月で89%と、急上昇しているという。VoLTEへの対応や学割、iPhone SEの取り扱い開始などの重要な施策はこの半年で実現し、新規契約数も急速に伸長しているとする。

 この夏の取り組みは、こうした勢いを加速させるもので、「家族まるごと UQ」というテーマで「UQ 家族割」が提供される。

 野坂氏は、「UQ 家族割」を家族4人で利用した際の価格を、最新のシンプルプランを含めたNTTドコモの料金プランと比較して、年間約10万円もお得などとアピール。キャンペーンで三姉妹の音声入りの目覚まし時計が抽選でプレゼントされることも紹介した。

 このほか端末ラインナップや「UQあんしんパック」などの施策が紹介され、実店舗「UQスポット」は64店舗を展開、2017年度は120店舗にまで拡大させるという目標が示された。

 MVNOではなくMNOとして提供している「UQ WiMAX」については、家庭で固定回線のような感覚で利用できるルーター製品「L01」などを含めて、440Mbps対応のルーターが、春商戦の3月で前年同期比50%増を大幅に伸びたことを紹介。「古典的な(自宅用の)ルーターのニーズが戻ってきているのかもしれない」とした。

 野坂氏は、自宅、移動中、そして家族と、「まるごとUQでできる時代になっている」と語り、同社が取り組む領域を拡大させていく方針が示された。

家族向け料金プランの比較など

「docomo with、インパクトはある」

 質疑応答の時間には、NTTドコモが新たな料金プランの「シンプルプラン」や「docomo with」などで“格安スマホ”への対抗策を強化している点について聞かれ、「長年使っている人を割り引くのは、インパクトはある」とし、「単純な比較はできないが、長期はドコモが有利かなとは思う。お互いが切磋琢磨するのはいいと思う」とした。

 実店舗の展開がさらなる拡大の鍵であり、現在はまだ課題ではないかと問われた野坂氏は、「(スマートフォンは)やっぱりリアルタッチが必要な商品。ただ、仮に(今年度の目標よりもさらに多い)200店舗にしたところで、ドコモショップの数には敵わない。(試用サービスの)Try UQを利用した人は、4~5割が契約している。体験してもらって、口コミで広めてもらうのも重要。知恵の絞りどころだろう」と回答。囲み取材でも同様に、店舗数は限界があり、今回の取り組みのように家族で広め合うといった、口コミのような第三の拡販方法が必要とした。

 MVNO各社があつまる会合などでは、KDDIグループのUQコミュニケーションズが手がける「UQ mobile」は、大手キャリアの“サブブランド”として槍玉に挙げられることも多くなっている。その最大の要因は、実現できている実効速度から鑑みて相当な帯域を調達していると予測され、サービス料金と釣り合わない、つまり、帯域の調達で親会社から優遇されているのではないか? という疑念だ。質疑応答ではこの点について質問されたが、野坂氏は「やせ我慢しながらまずは速度をきちんと守っていくことを頑張りたい。そこに尽きる。いろんな企業努力をしながら実現していく」とコメントし、相応の原価がかかっているという認識を示した。

 今回の発表会で明らかにされたスマートフォンは2機種で、昨年と比べるとかなり絞り込まれている形。UQコミュニケーションズ 企画部門 事業開発部長の前島勲氏は、ラインナップの充実について「機能、スペックについて好評をいただいているAQUOS、DIGNOを出した。ほかのメーカーや上位モデルも検討しており、ラインナップは拡大していく」という方針を示す。野坂氏は「今日のを含めて12機種ぐらいが現行機種。iPhoneも売れているが、シャープや京セラも人気。我々の身の丈にあったもので頑張っていきたい」と補足している。

「社内には大台を目指したいと言っている」

 契約数の目標については、「300万人の市場の30%を目指す」とかつて発言したことから、90万件が当面の目標とされていたが、野坂氏は「(90万件は)射程に入ってきた」と自信を見せる。ただし、MVNO市場自体が400~450万件の規模にまで拡大しているとし、その30%(120~135万件)は「ちょっと違ったレベルになる」(野坂氏)とする。一方、社内には「90万件とかそんなもので満足してはいかん。ひとつ、大台を目指したい、と言っている。まずは90万件を目指したい」と、鼓舞している様子を語っている。

Y!mobileのコピー? 相手は“大関”

 「対Y!mobileという面で、料金プランはコピーで、純増数は倍の差をつけられている、この敗因は何か?」という質問が飛ぶと、野坂氏は「(UQ mobileは)半年前に出てきた“前頭”、(Y!mobileは)ずっと頑張られている“大関”」という若輩者というスタンスを示した上で、「実は我々は、量販店で相当の数を売っており、伸びているが、それでY!mobileの背中が少し見えたという段階。残った要素は、ショップ。800とか900店舗とかの(Y!mobileとの)店舗数との差は依然として大きくあると思う。UQは変化率が大きいので派手に見えるが、絶対量ではまったく違う。ここは我々の課題。さらにブレイクすることをしていかなければならない」と語り、負けたというより、基本的に挑戦している立場であるとする。

 Y!mobileはこの日、家族の2台目以降の端末購入で5000円を還元するキャンペーンを発表。これについて囲み取材で問われた野坂氏は、「5000円というのは、今まで無料だったものが有料化されて、その分を引くとかではないか、と思った。我々は今日発表の内容でまず頑張ってみて、それでも厳しければ(対抗策を)やっていく」とコメントしている。なお、すでにY!mobileでは、「家族割引サービス」として2回線目以降を540円(税込)引きにするサービスを2014年から提供している。

 「UQ mobile」の現在の主力の料金プランは、1年目が安く、2年目以降は少し高くなる設定で、最も安い1年目の料金だけが大々的にアピールされている点について、今後の方針が聞かれると、「体力の面もある。ドコモであれば(docomo withのように)無限割引もできるが、我々は、基本的には今の形でやっていく。UQはそういう立場」とし、体力の少ない挑戦者として次善の策である、というスタンスは崩さなかった。

 1年で認知度が2割から9割に急上昇するほどのテレビCMの大量投下は、一般的なMVNOの姿とはかけ離れたプロモーション費用の掛け方で、“前頭”“大手のような体力がない”といった新参者をアピールする姿とはギャップも大きい。すでに「UQは知っているが、買える店がない」といったタッチポイントの数と認知度の乖離が表面化しており、オンライン販売、店舗販売に続く、新たな拡販の施策が注目される。