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ソフトバンク孫氏「5Gの前哨戦はスモールセルで」、5G早期導入合意の背景
国内通信事業には消極姿勢
2017年5月10日 20:42
ソフトバンクグループおよび傘下の米スプリントとクアルコムテクノロジーズは、2.5GHz帯における5G技術の共同開発に合意した。既報の通り、商用サービスとしての展開は2019年後半と、他キャリアに先駆けての提供を予定している。
10日に実施されたソフトバンクグループの決算説明会では、同社代表の孫正義氏がその意図と背景を説明した。
スプリントのネットワーク改善の秘策「マジックボックス」
孫氏はソフトバンクグループの代表という立場にありながらも、スプリントのチーフネットワークオフィサーとして、ネットワーク設備投資の陣頭指揮を行っている。
5Gでは、60GHz帯など、今までより高い周波数帯も通信に利用されることになる。高速通信や低遅延といったメリットがある一方で、「データトラフィックの8割が集中する屋内に、いかに浸透させるかが課題になる」と孫氏は指摘する。
その解決策の1つとして、孫氏は2.5GHz帯を中心としたネットワーク構築を提示。2.5GHz帯のTD-LTEに「HPUE(ハイパワーUE)」という新規格を導入し、カバーエリアの狭さを克服し、1.7GHz帯の99.9%というエリアカバレッジを実現したとする。
加えて、孫氏は「5Gの前哨戦はスモールセルでやる」と話し、5Gに向けたネットワーク設計について、カバーエリアが狭い基地局「スモールセル」を数百万単位で展開し、きめ細やかなエリア展開を図るという構想を披露した。スプリント向けにさまざまな形の小型基地局を開発しており、その1つの「マジックボックス」という、家の中でも設置できる箱形の基地局を紹介した。
これらのネットワーク改善の結果として、米国の主要都市のネットワーク調査で1位となったとアピール。「スプリントが5Gでもっとも優れた電波と最も先進的なネットワークを大規模に作る、誰よりも早く作る、ということをたからかに宣言したい」と表明した。
「ARMを買ったおかげでクアルコムのCEOといつでも会える状況に」
半導体設計のARMについては、「ARMを買ったおかげで、世界でもっとも大きいチップセットメーカー、クアルコムのCEOにいつでも会える状況になった。ARMはクアルコムにとっても、最大の技術パートナーだ」と語り、モバイル端末に搭載されるプロセッサーの設計で圧倒的なシェアを持つARMの重要性を強調した。
IoT向けの需要が増えることから、今後4年で1000億個のARMチップが出荷されるという見通しを示し、新たに開発された人工知能向けのCPUアーキテクチャ「ARM DynamIQ」や、マイクロソフトのデータセンターへの採用などの実績を紹介した。
国内の通信事業は?
2017年度末時点で累計契約数は、SoftBank・Y!mobileの両ブランド合計で3240万回線。前年度から36万回線増と、小幅な純増にとどまった。
スマートフォンでは、通信料金が割安なY!mobileブランドが順調に契約数を伸ばした。その結果として、通信ARPU(契約者1人あたりの通信料収入)は3950円と、前年より200円減少している。
また、2016年9月に提供を開始したスマートフォン向けの大容量プラン「ギガモンスター」の影響で、モバイルデータ通信端末の契約数が減少している。
孫氏は、「シェアを劇的に変えるつもりはあまりない」と、回線数のシェア争いからは距離を置き、「ソフトバンク光」やコンテンツサービスなどのセット販売を伸ばすことで収入を確保する方針を示した。
質疑応答では、「総務省が主導した端末の値引き規制は、コスト削減にどれだけ貢献したのか」という質問がなされた。孫氏は「総務省のお考えですが、“泣く子と国には逆らっちゃいけない”と言いますので」と話し、善し悪しについてはコメントしないと前置きしつつ、「結果として、国内メーカーは全滅しつつある。通信事業者のマーケットシェアも動かなくなっている」と、見解を示した。