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クアルコムの「Snapdragon」が1個から購入可能に

IoT時代に向けた新たな取り組み、アロー社が販売代理店に

 これまでメーカーへ直接卸す形だった、クアルコムのチップセット「Snapdragon」が、日本国内でも1個単位で、企業のみならず個人でも購入できるようになった。ラインアップは、「Snapdragon 600E」(APQ8064E)と「Snapdragon 410E」(APQ8016E)の2つ。「E」は今回の商流で扱われる製品を示す型番であり、スペックは従来存在したSnapdragon 600/410と同等だ。

 販売代理店であるアローエレクトロニクス子会社の販売サイトでは、Snapdragon 410Eの価格は1つ2500円。ロットが多いほど単価は安くなる。スマートフォンに使われているチップセットを、1個単位で販売することになった今回、クアルコムはこれまでのビジネス形態だけでは来たるIoT時代に対応できないと判断したのだという。

「IoTにリーチできない」

 スマートフォン時代を先取りするように、1GHz駆動のCPUを内蔵するチップセット「Snapdragon」が2006年11月、発表された。最初にSnapdragonを搭載したのは、2009年に登場した東芝製のWindows Mobile端末。それ以来、スマートフォンやタブレットの多くがSnapdragonを採用し、ITリテラシーの高いユーザーからは、ひとつのブランドとしても認知されている。

 スマートフォンやタブレットでのSnapdragonは、端末メーカーがクアルコムと直接契約して調達する仕組みだ。しかし、今後、さまざまな機器がインターネットに繋がると期待されるIoT時代においては、多種多様な製品が開発される見込み。そうなると、IoT分野に参入するメーカーも格段に多くなるが、そうしたメーカー1社1社と個々にクアルコムが直接契約する、というこれまでのスタイルでは、時代の流れに取り残される可能性がある。

 そこで「これまでのクアルコムでは、無限大といわれるIoTマーケットにはリーチできないことがわかってきた」(クアルコムCDMAテクノロジーズの須永順子副社長)と判断。アロー社と手を組み、Snapdragonをより流通しやすい体制を構築することにした。須永氏は、「非常にエポックメイキングな出来事」と評し、クアルコムがこれまでと大きく異なる手法を採用することを印象付ける。

須永氏

長期のサポート

 それにあわせて、販売代理店を通じて提供するSnapdragonについては、約10年にわたってサポートすることなど、これまでと異なる姿勢で挑む。須永氏は、こうした分野のチップセット企業としては後発であることを認めつつ、高いパフォーマンスを提供するSnapdragonであれば、医療機器や監視カメラ、ホームセキュリティなどの分野で引き合いがあり、「ニーズは全て切り取るつもりで切り開いていきたい」と意気込む。

「1個から購入できる」

 アロー社日本代表の高乗正行氏も「1個から購入できる。翌日届く。これは革命的」と胸を張る。開発ボードの「DragonBoard」も提供しており、試作は開発ボードで行いつつ、本格的な製品開発ではチップを単体購入して、より自由なレイアウトで製品を開発できると紹介する。ソフトウェア面でも、富士ソフトなどと協業して、サポートしていく方針。また個人開発者、あるいは電子工作などでの用途も可能とした高乗氏は「DragonBoard」であれば、Linux、Android、Windows 10が動作し、なおかつHDMI対応であることから、ディスプレイなどに繋がればすぐにスマートデバイスとして、既存アプリの多くを利用できるとアピールした。

高乗氏

 モバイル通信機能については、特許関連の調整などもあり含まれていないが、今後の提供に向けて、検討が進められる。9月下旬のグローバルでの発表以降、日本でも多方面から引き合いがあり、最終的な製品がいつ、どういったものとして登場するかはまだ見えないようだが、すでに開発者向けコミュニティサイトも開設され、アロー社による開発者向けセミナーも今後開催される予定だ。