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KDDI田中社長、格安スマホや公取委の報告書の影響を語る

KDDIの田中社長

 2日、KDDIは2016年度の第1四半期決算を発表した。奨励金の減少で販売コストが減少し、増益となったとのことで、代表取締役社長の田中孝司氏は、「大手携帯電話会社の間での流動はほとんどなくなったが、LCCのようなサブブランドやMVNOへの流出が見られる」とコメントした。

決算会見で初めてUQを紹介

 新たに打ち出したライフデザイン戦略、順調に推移するマルチデバイス化、長期契約者向けの施策となる「au STAR」などを紹介する一方、田中社長は、グループ会社であるUQコミュニケーションズのMVNO事業「UQ mobile」を決算会見の席上では、初めて紹介する。

 田中氏は、UQ mobileの取扱店舗が全国で1000店に拡大しつつあり、ユーザーとの接点(タッチポイント)の強化が図られていること、月額1980円のキャンペーン価格での提供やiPhone 5sの提供などに注力していることに触れる。

 その上で質疑応答で、MVNOとの競争状況などについて問われると、auユーザーがMVNOへ乗り換えようとするのであれば、「UQなどauの回線を使うところへ出るほうがまだいい」とコメント。キャンペーン価格の展開や端末ラインアップの拡充がひとつの対策になるとの見方を示す。

 またau STARのような取り組みは、ユーザーの囲い込みに繋げて解約率の低減を目指す取り組みの一環と位置付けられている。

公取委の報告書に

 決算会見の直前、公正取引委員会が携帯電話販売に関する報告書を発表。これについて問われた田中氏は「先ほどWebサイトに載ったようだが、詳細は見ていないため、何とも言えない。ただ販売価格は強制できないし、してはいけない」と一般論としての回答に留まった。後述する囲み取材でもあらためて質問された際には、KDDIとしては指摘されるようなことはないとした。

IoT時代、まずは自動車から

 7月、競合のソフトバンクグループが英ARM社の買収を発表した。これについて質問が挙がると、田中氏は「ARMはローパワー(省電力)のチップセットをデザインする会社。孫正義社長のコメントはよく知らないが、少なくとも我々、通信事業者にとってはマルチデバイス面でIoT(の市場拡大)が見えてきている」と語る。

 グローバルでもIoT市場が成立するとの期待があるなかで、IoT用ネットワークの標準化、あるいはIoTに最適なネットワークの構築など、通信事業者としてやるべきことがある、とする一方で、ネットワークの整備だけではなく、ユーザーに向けて付加価値を提供する必要がある、と説明。IoTの具体的かつ成長が見える市場としては自動車がある、としたほか、電力のスマートメーターも有力な候補であり、KDDIとしてスマートメーター関連事業を長期的に成長させていきたい、と意気込む。

 また、ライフデザイン戦略で新たに取り組み始めた生命保険や住宅ローンといった分野もIoTとの組み合わせで、新たな商品を実現したいとも語る。

 田中氏は「目先のことは具現化している。その次、IoTをどう使うかに着目している」と述べた。

田中社長囲み取材一問一答

――au WALLETカードの発行枚数は?

田中氏
 1890万枚。プリペイドが1730万、クレジットカードが160万枚です。結構よいと思う。新規契約も進んでいる。特に利用額にあわせて、コミッションみたいなものが一緒になっているが、今春はauでんきによって、毎月利用されるようになって、ストック型の消費に回転しはじめている。もうひとつ、au WALLETカードユーザーは解約率が低い。それからauでんきをポイントカードで支払うと、メインカードにしていただける傾向にあり、決済額も大きくなる。

――収支は?

田中氏
 まだ赤字だと思う。

――じぶん銀行のau向け特典がなくなったが。

田中氏
 au STARとのパッケージを予定している(※関連記事)。クレームはほとんどなかった。頑張ります。

――公取委の報告書はMVNOの推進となっているようだが。

田中氏
 そうらしいですね。ではKDDIに対して具体的に何か指摘を受けていることはないと思っている。全体的には、(2015年末の)タスクフォースのフレームワークで結構カバーできたのではないかと思う。キャリア以外の事業者については何とも言えない。

――販売奨励金の減少で利益増とすれば、タスクフォース的には料金値下げにと期待されるのでは?

田中氏
 そうですね。だから長期契約ユーザーに対する施策を強化してとのことですから、そうした施策は初年度、さほど(コスト面に)効かないのですが、2年、3年で(費用が)大きくなります。長くいらっしゃるほど還元しますから(企業業績的には)減益要因になるでしょう。

――毎月割への影響はないのか。

田中氏
 それはないだろう。毎月割がいくらだと強制であれば問題だが、複数から選べますので。
(※編集部注:毎月割は一種類。公取委の指摘は割賦に関するもので田中氏は『販売額が強制であれば問題』と説明するつもりだったとみられる)

――販売現場への影響はないと。

田中氏
 はい。

――中古端末の買い取り額が高すぎれば問題という指摘もある。

田中氏
 それはタスクフォースでも指摘があった。その指導を受け止めます。

――UQ側からは、KDDIと販売協力をしていくという話もあったが。

田中氏
 お互いの販売現場で、たとえばMVNOにしたいという方がいたら紹介するといった程度のことになるのではないか。UQもやっと、端末ラインアップが揃ってきた。iPhone 5sの取扱もはじめた。まだまだこれから。早く立ち上がって欲しいが、これからですね。

――LINEもMVNOサービスを提供する方針だが。

田中氏
 そうですね。いつなんでしょうね。やっぱり脅威ですよね。足元では、ワイモバイルさん、楽天さんがいて、(LINEモバイルが登場すれば)影響を受けると思うが、まだ料金などがわからない。我々の強みはオンラインだけではなく、オフライン側もある。差別化要因をうまく活用して対抗していくしかないというのが本音。とんでもなく安い料金だとまた大騒ぎになるんですけれども。

――そこでUQで対応させるのか。

田中氏
 まぁね、対応してもらわないと。auの料金をMVNO並に下げると会社が傾いちゃいますので。

――1GBのような低利用者向けプランの動向は?

田中氏
 新たにスマートフォンを使い始めると、マジョリティでいうと、1GBでは止まらないんですね。(1GBプランは)今までフィーチャーフォンを使っていた人が、試しにスマートフォンを使ってみようというプラン。そういう方々がMVNOにある程度、乗り換えていたりするんじゃないかなと思います。

――Pokémon GOの影響は?

田中氏
 (KDDIの事業の直接関係ない)Pokémon GOの質問が出たら(囲み取材は)終わりにしようと思っていた(笑)。配信開始日は局地的にトラフィックが増えたが、ネットワーク的にはほとんど影響がない。あえて言えば、モバイルバッテリーがやたら売れたとか、古い機種を持っていた人が機種変更されて、(販売数が)20%ほど増えたとか。本当に短期間、1週間過ぎてみると、なんとなくなんとなく落ち着いてきたかなというところ。