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mineoファンイベント開催、IIJmioの中の人も登場
2016年8月1日 20:15
MVNOサービスの「mineo」を提供しているケイ・オプティコムは、7月31日に都内でファンイベント「mineoファンの集い」を開催した。
このイベントはmineoユーザーから公募した約100名が参加するもの。mineoではこれまで10名規模でのイベントは開催していたが、100名規模は初めてで、今回は7月30日に大阪で、7月31日に東京で、それぞれ同規模のイベントを連続開催した。
イベントではmineoのスタッフによるセッション、ユーザーとmineoスタッフとの質疑応答ディスカッション、mineoとIIJmioのスタッフによるトークセッション、そしてユーザーとの懇親会が行われた。
「安心感」と「Fun with Fans」でサービスを提供
冒頭でmineo事業の責任者、ケイ・オプティコム モバイル事業戦略グループ グループマネージャーの上田晃穂氏が挨拶した。上田氏は7月に前任の津田和佳氏から引き継いだばかり。今回、ライバルでもあるIIJmioのスタッフを招いたのも、前任の津田氏とIIJmioのスタッフが飲み会で盛り上がったことがきっかけだと明かした。
続いて企画業務を担当するケイ・オプティコム モバイル事業戦略チームマネージャーの森 隆規氏がMVNO市場動向やmineoによる今後の取り組みを解説した。
まず市場として、「安いけど自己責任のMVNO」と「高いけどサポート充実のMNO」があり、MVNO同士で価格競争をする一方、MVNOでもショップ展開などでサポートを手厚くしたり、MNOでも安価なサブブランドを展開したりするなど、MVNOとMNOが近づく傾向もある。mineoはこうした競争軸では戦わないようにするために、「Fun with Fans!」というブランドステートメントを掲げ、ユーザーと一緒に便利で楽しいサービスを作る、ということを目指しているとする。
MVNO市場は順調に成長しており、2019年末には2000万に達すると予想している。そしてこれまではITに詳しい高リテラシー層が中心だったが、一般層の比率も向上していくと予想している。この傾向はすでに表れつつあり、mineoのユーザー層を見ると、全体的に女性と若年層が増え、さらに加入者シェアで言うと昨年までは4割程度だった音声通話付きのデュアル契約は、6割を超えるまでに成長し、メイン端末として使う人が増えているという。
今後の動向としては、MVNOとMNOの中間、第3極を狙う動きが活発化していると指摘する。また、2月のイオンモバイルに続き、夏にはLINEモバイル、IIJmioによる郵便局での販売開始など、ビッグプレーヤーの参入や新たな動きも続く。
こうした背景で、mineoとしては、「安心感の醸成」と「Fun with Fans!を中心とする価値向上」に取り組み、競争力を強めていくという。
安心感としては、通話パックの導入、端末ラインナップの拡充、各種サポートサービスの拡充、店舗の展開を挙げる。とくにmineo旗艦店については、すでにオープンしている大阪に加え、2017年初頭には東京の渋谷にもオープンする予定だという。
渋谷の旗艦店はバスケ通り、いわゆるセンター街のメインストリート沿いで、TSUTAYAと同じ渋谷駅からすぐのブロックという好立地になる。具体的には洋服の青山の隣で、現在建設中の5階建てのビルが丸ごと、mineoのショップになるという。このショップでは1階がカフェスペースとなり、2階と3階が窓口、4階が既存ユーザー向けのスペースとなる予定とのこと。ファン向けサイト「マイネ王」と連携する施策なども検討しているという。
さらにネットワーク増強スケジュールや現在のトラフィック品質の「見える化」を行い、安心感の醸成につなげる。いずれも具体的にどのような情報として公開するかは決まっていないが、今年の9月頃より同社のコミュニティサイト、マイネ王で公開される予定。
Fun with Fans!による価値向上としては、引き続き「アイディアラボ」でユーザーからさまざまなアイディアや意見を募集し、いくつかは実現に向けて検討しているという。
このほかにも専用帯域を確保し、混雑時の速度を安定化させる「プレミアムコース」も現在トライアルサービスを実施中で、9月以降にサービスインする予定となっている。
カウントフリーやプレミアムコースへの質問も
質疑応答では上田氏、森氏に加え、ネットワークや端末を担当する杉野氏が加わり、参加者からの質問に答えた。
「他のMVNOでポケモン GOやApp Storeの通信をカウントしない、カウントフリー系のサービスが登場しつつあり、パケットの中身を覗くことに議論もあるが、そこをmineoではどう考えているか」という質問に対して、杉野氏は「デリケートな問題。お客さまに対して個別かつ明示的な同意を取っていないので、そこまで踏み込んだサービスは考えていない」と回答。さらに上田氏はmineoでもスイッチアプリでカウントをオフにして、200kbpsで(月間容量を消費しない)カウントフリー通信ができることを挙げ、「積極的にカウントフリーはやりたくない」と述べた。
このカウントをオフにしたときの通信速度は200kbpsだが、「この制限時の速度を上げられないか」という要望に対しては、杉野氏は「競争力は上がるが、そこまでの準備はできていないし、200kbpsでもカウントされないというのはすでに競争力になっている」と回答した。
現在準備中の「プレミアムコース」の料金がどのくらいになるかという質問に対しては、上田氏が「まさに検討中」と回答。また、プレミアムコースに人が増えすぎると専用帯域の効果が薄れるという指摘に対しては、森氏が「まさにその通りで、人数を限定することで贅沢に使ってもらえるという原理。まだ検討中だが、抽選になるか、どうしようか、という感じ」と答えた。
ちなみにプレミアムコースとは、NTTドコモ網やau網からmineoに接続する部分に専用帯域を設けるというもの。専用帯域はプレミアムコースのユーザーしか使わないが、プレミアムコースのユーザーは混雑していなければ通常帯域も含めて利用できるようになるという。
1つのパケット契約を複数の回線(SIMカード)で共有したい、という要望に対しては、上田氏は「そのようなサービスを提供している事業者もいる。IIJmioもやっている。我々が選ばれないのは心苦しいが、我々は複数SIMは考えておらず、仮にやるなら、それぞれを小容量で契約し、パケットをやりとりすることになる」と回答した。
コミュニティサイトなどで多く寄せられた質問からは、「mineoの収支は、儲かっているのか」というものをピックアップ。上田氏は「大きな声で言えないけど、赤字です」と回答。かかっているコストとしては、回線接続料と広告宣伝費が大きいという。
「長兄」IIJを招いたトークセッション
第2部ではIIJから、IIJmioのTwitterアカウント(@iijmio)も担当するIIJmioの技術・企画担当の佐々木太志氏と。IIJ公式エンジニアブログ「てくろぐ」も担当する技術広報担当の堂前清隆氏が登場し、mineoの上田氏と森氏を交えてのトークセッションが行われた。
ライバルとなる同業他社が集うトークセッションは、講演会など第三者が主催する場では珍しくないが、今回のようにmineoが自社のイベントにライバルでもあるIIJmioを招くというのは珍しいパターンだ。
mineoの森氏はIIJmioとの関係について、「長男のような存在。我々は末っ子として勉強を教えてもらいつつ、密かに抜かしたろうかな、と思っている感じ」と表現する。
一方、IIJの佐々木氏は、「2年前にmineoをやられると聞いたときは、びっくりした。格安スマホは何社か参入していたが、初めてau回線を使ってやるよ、と。よくそんなビジネスが成立したな、と心の底からびっくりした」と感想を述べつつ、「独自性は重要なパートを占める。mineoにauのネットワークでビジネスを成功させ、伸びているということについては、mineoさんはすごいな、と。手強いライバルになるとも思っている」とコメントした。
mineoとIIJmioが関わったエピソードとして有名なのが、iPhone向けにiOS 8が提供された時、au網のMVNOでiPhoneが動作しなくなったときのことだ。法人向けの「IIJモバイル」でau網のMVNOサービスを提供していたIIJはもちろん、コンシューマー向けにau網のMVNOサービスを提供していたmineoはとくに大きな影響を受けた。
mineoの上田氏は「実は私自身も、mineoのAプランを使っていて問題にぶち当たった。どうしようもない、というときに、IIJから『できるんちゃう』という神の手というか、技術的なサジェスチョンをもらい、mineoのAプランでも提供できるようになった」と当時のことを振り返る。
一方のIIJの佐々木氏は「MVNOの業界団体でも、ケイ・オプティコムの影響は大きい。格安スマホ事業では競合しているが、広く業界を正す方向に行く上で、mineoの取り組みや存在感は大きい」と指摘する。
今後のMVNO市場の動向について、IIJの佐々木氏は、市場が成長しているものの、「いわゆる格安スマホのセグメントに200社がいる。非常に競争が厳しく、差別化が難しいのがひとつの状況」と指摘する。
さらに「伸びているのは事実で、すぐに止まることなく、このあと数年は順調に伸びると思っている。海外を見ると、シェアが15%くらいになると、そこで息切れしたり、MVNOがMNOに買収されたりして頭打ちになる。いまは全体の5%なので、当面は伸びる余地があって、これからは新しい成長ビジネスを考えないといけない苦しい時代になっていく」と語った。
今後の市場で生き残るためにやるべきこととして、IIJの佐々木氏は「まだまだやらないといけないことはあるけど、重要なのは、お客さんのもっと近くにいたいということ。支持してもらわないと、安くてもニッチな存在からは抜け出せない。規模が大きくなると、お客さんとの距離が広がりがちだけど、ここは歯を食いしばって、なんとか続けられる限りは続けたい。今回のようにmineoさんに呼ばれたら、こういったところでお話ししたいし、お客さんの視線やニーズと僕らの目線を合わせ続けたい。そういったところで進む方向を補正しつつ、そこにエンジニアリングパワーを注ぎ込んで、新しいサービスを作っていけたらいいな、と思っている」とコメントした。
mineoの森氏も、「プレゼンテーションで安心感について説明したが、安心は不安をゼロにして、ゼロからプラスにすること。信頼されるMVNOが残ると思う。それをどうやってやるかは、まさに我々がやっていることで、お客さまの声を受け止め、言えることは言って、一緒にサービスをやっていければと思う。信頼されるMVNOになることは、まさにIIJと通じるところがある」とコメントした。