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株主にも格安SIMユーザー増える、ドコモ株主総会

 「NTTコミュニケーションズ(OCN)を使っている」「格安SIMを使う父がドコモショップを訪れた」――16日、NTTドコモの第25回定時株主総会が開催された。株主から役員に向けた質問で、“格安SIM”“格安スマホ”で知られる、いわゆるMVNOのユーザーが株主として質問する場面があった。

 1年前の総会では、MVNOとの差別化を問う質問が挙がったが、今回は株主がそうしたサービスの利用している立場として問いかけており、市場環境の変化をうかがわせる。

MVNOユーザーの株主からの質問は

 MVNO(Mobile Virtual Network Operator)は、基地局などを自社では保有せず、大手通信会社から回線を調達して、エンドユーザーに提供する企業のこと。最近では、通信品質を一定の品質で制御しつつ、割安な価格で提供するケースが増えており、徐々に拡がってきている。

 今回のドコモの株主総会では「(OCN モバイル ONEの)NTTコミュニケーションズのSIMカード(回線)を使っている。しかし(通話定額の)カケホーダイの料金をドコモが出してくれない」と質問が寄せられる。これはデータ通信を割安な料金で利用しつつ、ドコモのような通話定額サービスを利用したい、といった要望と思われる。

 これに対しては、阿佐見弘恭経営企画部長が、「MVNOが回線を仕入れ、いろいろ考えていただいてサービスを提供している」と説明。質問した株主も「結論としてドコモが邪魔しているんじゃなくて、NTTコミュニケーションズが(通話定額サービスを)作っていないということか」と理解した様子。

ドコモの阿佐美氏

販売現場のトラブル、解消されるのか

 また他の株主からは「格安SIMを使う73歳の父がドコモショップを訪れたら2回線目を契約した。年金生活者でもあり、不要なので解約したが6万円を無駄にした」という声があがる。

 MVNOユーザーが株主の身近にいる、という事例を示すとともに、回線契約とその解除、端末代金の支払いに関しての在り方について問うものだ。この5月からは、法改正により、通信サービスでもクーリング・オフにあたる初期契約解除ルールが導入されているが、この株主の事例は法改正前の出来事のよう。株主の質問の趣旨は、別途、質問状を送付しておりそれへの回答を要望するものだったが、加藤薫社長は、別途対応することを約束してその場を納めた。

加藤薫社長。今回の株主総会をもって社長職を退く

 上記のように、株主が消費者の立場にたって経営陣に質問を投げかける場面は、ドコモの株主総会ではお馴染みの展開。今年は「家族用に2台目を購入したところ、いろんな(オプション)サービスがついてきた。最初は無料とのことだったがいつのまにか有料になっており、解約手続きをした。ああいうことはやめて欲しい」という要望が寄せられた。オプションサービスの販売についても総務省で議論が進められてきたが、株主総会という場でも、ドコモの幹部へ直接そうした事例が突きつけられた今回、ここ数年の携帯電話業界の販売現場を反映したものと言えそうだ。

タスクフォースの影響は

 ここ最近で日本の携帯電話・通信業界を揺るがせた話題のひとつは、総務省が進めたタスクフォースだ。昨秋の安倍晋三総理からの携帯電話値下げに関する発言を契機に、行き過ぎたキャッシュバックの是正、ライトプランユーザー向けの料金プランの導入などが提言された。

 株主への説明で、ドコモとしてそれらの提言にあわせて実施したライトユーザー向けプランなどが紹介される一方、株主からも、そうした影響力の大きな動きへどう対応していくのか、経営陣を問いただす質問が上がる。

 これに阿佐美氏は「過去10年で世帯における通信費が2割増えたという指摘があったが、よく見るとタブレットなど新しいデバイスが登場した。またスマートフォンなどを通じてショッピングするとその代金も弊社を介して請求しており、その額も含まれている」と“通信費増大”と見なされた要因を紐解き、タスクフォースの提言は消費者の声を集約したものと受け止めており、今後も対応していくとした。

 通信料金の在り方については、加藤社長も「通信事業はドコモの中核であり、料金は根幹。2014年度の新料金プランによる減収でご迷惑をおかけしたが、その反省を含めて、できるだけ便利な料金を提供しつつ、事業も発展させたい」とコメントした。

加藤社長退任

 4年間の任期を終えた加藤社長は、今回の株主総会を持って、社長職から退く。

 加藤氏は「4年間を振り返ると、フィーチャーフォンからスマートフォンへの急速なシフトのなかで、ネットワークを維持しながら新しいビジネスの夢に挑戦した」と総括。2013年にiPhoneの販売を開始し、2014年の新料金プラン、2015年のドコモ光など通信事業の実績を踏まえつつ、「+d(プラスディ)」として他社とのコラボレーションによる新領域のサービス提供などを行ってきたことをあらためて紹介。企業業績としても、2017年度としていた営業利益やコスト効率化などの目標を2016年度に前倒しして達成できる見通しとしており、心置きなく後任の吉澤氏へバトンタッチできる、と挨拶した。

 新社長となる吉澤和弘氏は、NTTへの入社以来、携帯電話の開発実用化に携わったと、自身の経歴を披露しつつ、スマートフォンなどテクノロジーの進化を通じて、新たな価値をユーザーへ提供する、スピード感のある経営を進めたいと意欲を見せた。

吉澤氏