インタビュー

「DIGNO DUAL 2 WX10K」開発者インタビュー

「DIGNO DUAL 2 WX10K」開発者インタビュー

PHS/3G/AXGP対応の最強マルチネットワーク端末

DIGNO DUAL 2(WX10K)

 ウィルコムから夏モデルの「DIGNO DUAL 2 WX10K」が発売された。ウィルコムのPHSネットワークとソフトバンクの3Gネットワークに対応した「DIGNO DUAL WX04K」の後継機種で、WX10KではさらにAXGPネットワークにも対応している。ウィルコムの低廉な通話定額とソフトバンク3Gのエリア、AXGPの高速通信と、3つのネットワークの良いところ取りができる端末だ。

 今回はどのようにしてこのようなユニークなマルチネットワーク端末が生まれたか、開発を担当した京セラの通信機器関連事業本部国内第2マーケティング部 川居伸男氏とデザインセンターの三田真由氏にお話を伺った。

京セラの川居氏

――まずDIGNO DUAL 2の開発コンセプトについてお聞かせください。

川居氏
 DIGNO DUAL(WX04K)の後継機種として開発しました。前モデル(WX04K)ではデータ通信を楽しみながら、ウィルコムさんのサービス「だれとでも定額」を切り口にして、気軽に音声通話を使ってもらう2つの要素を入れ込んだスマートフォンをコンセプトにしました。今回はパケット料金も安くして、「だれスマ」というプロモーションで展開するウィルコムさんの戦略があり、DIGNO DUAL 2はそこに合わせて開発しています。ターゲットとしては、30代~40代を中心に、料金がネックでまだスマートフォンを使っていないコスト意識の高い方々を考えております。

 スペックとしては、いわゆる日本仕様と言われているワンセグやおサイフケータイ、防水、赤外線通信にはきちんと対応し、ほかのスマホと比べても遜色のないモデルとして開発しました。前モデルはおサイフケータイ非対応でしたが、WX10Kではしっかりサポートしています。

――前モデルに比べるとどのような部分が強化されたのでしょうか。

川居氏
 ウィルコムさんのラインナップではフラッグシップモデルという位置づけになるので、各種スペックアップをしています。前モデルに比べると、主に液晶サイズやバッテリー、カメラなど、スマホのメインデバイスのスペックなどを強化しています。あと、チップセットは、今回はクアルコム社製を採用し、パフォーマンスが向上しています。

データ通信のモード選択で4G/3G/GSMが選べる。PHSは音声通話専用

――前モデルではPHSと3Gに対応されていましたが、今回はさらにAXGPにも対応しました。こうした複数方式への対応、やはり大変なのでしょうか。

川居氏
 そこがWX10Kでの最大の強化ポイントでもあります。AXGPについては、複数のアンテナを同時に使うMIMOということもあり、さらにアンテナの数が増えています。AXGP、3G、PHSとそれぞれの干渉を抑えつつ内蔵し、安定して使えるようにするというのが構造として難しかったポイントです。

 また、ソフトウェアで言いますと、前モデルは、発売時はAndroid 2.3で、今春にAndroid 4.1のバージョンアップを行いました。今回Android 4.2で作るにあたり、Android 4.1の仕様を踏まえつつ、ユーザーの声を反映し仕様を作りこんでいます。

――今回のラインナップでは、4Gには対応しないもののPHSと3Gのデュアル対応の「AQUOS PHONE es(WX04SH)」というライバルがいます。そちらとの差別化ポイントは?

川居氏
 AXGPに対応しているのが大きな差別化ポイントになっています。最近のスマホの利用状況を見ても、高速通信の必要性が増してきており、データ通信をしっかり使う人には、WX10Kの方が適していると思います。スペック面で見ると、画面の大きさなども差別化ポイントになっています。

「メール」は、SMSとウィルコムのメールが統合されたアプリ

 また、旧来からのウィルコムユーザー様向けのポイントとしては、WX10Kではライトメールにも対応しています。ライトメールについては、UI部分もチャット形式で使いやすくしました。ライトメールは従来のウィルコムユーザーにはなじみ深い機能なので、積極的に使っていただきたいと思っています。

――ライトメールのアプリは京セラが作っているのですか?

川居氏
 京セラで作っています。前モデルでは非対応でしたが、要望も多かったため、新たに開発し対応しました。実は京セラ社内でも使っている人が多く、社内からも要望が多かった機能です。

――ほかにもキャリアのメールアプリが搭載されていますね。

川居氏
 EメールとのSMSのアプリは、ウィルコムさんからご提供いただいたものをそのまま搭載しています。

――アプリとしては、DTCP-IP対応のDLNAアプリ「DiXiM」がプリインストールされています。

川居氏
 最近ではこういった使い方も増えてきていますので、対応させていただきました。今後はこういった分野もスマホの楽しみ方として広げていきたいと考えています。

――スペック面で言うと、システムメモリ容量が1.5GBというのは、京セラ以外にはあまり見ない、珍しい容量に思えます。

川居氏
 特に特殊なメモリを搭載しているとかいうわけではありません。今のシステム構成ですと、2GBまでは必要ないかな、と考えています。使用状況にもよりますが、一般的には1.5GBあれば十分お使いいただけるかと思います。

――ターゲットユーザーは「初スマホ」の人なのでしょうか。あるいはすでにスマホを使っているけど、「より安く」と思っている人なのでしょうか。

川居氏
 ほかのキャリアでスマホを使っていて、「料金が高い」と感じている方もターゲットです。あとは旧来のPHSユーザーの方で、「そろそろスマホに」と思っている人もターゲットです。どちらもターゲットとして想定していますね。

京セラの三田氏

――デザイン面では、前モデルからデザインテイストが変わったかな、と感じました。

三田氏
 DIGNO DUALシリーズは、名前の通り「2つのものを組み合わせる」というデザインコンセプトを持っています。そこで2つの要素が組み合わさるような構成は前モデルから引き継ぎました。前モデルの発売から1年が経ちましたが少しユニークな端末という位置づけだったところを広げるため、形状は2号機らしい進化感とのバランスを取っています。

――フロントキーがなくなり、ソフトウェアキーになりましたね。

三田氏
 最近のAndroid端末ですと、キーがなくなり、フロント側は画面だけですっきりしている、というのがスマホらしいという声があったりますので、今回はこのようなトレンドも受けて、キーなしのデザインとし、洗練された「新しさ」を表現しています。

川居氏
 キーがあるとスマホらしくない、というイメージをもたれている方もいます。そういったトレンドというか、ユーザーの声を踏まえ、ソフトウェアキーにしています。

裏表でツートンになっているデザイン
4色のカラーバリエーションが用意されている

――カラーにはブルーがあるのは、流行っているのかな、という印象を受けました。

三田氏
 スマホ自体、「かっこいい」というイメージがあるので、よりシャープに見えるカラーとしてブルーを用意しました。あとは男性ユーザーが多いので、選択肢を増やす、という意味もあります。

 端末のデザインディテールとしては、シンプルに、直線的にまとめていますが、ブルーをデザインするに当たってはキャッチカラーになるように、かなり目立つ色合いにしました。手にしているとき、存在感を全面に出せる色になっています。また、マテリアル(質感)も艶とマットでツートーンの「デュアル」を意識しています。

川居氏
 ブルーはよく売れていると聞いていますね。時間が経つと変わる可能性もありますが、予約のお客様にはブルーが人気と聞いています。

PHSは通話専用。発信時にはPHSか3Gかを選べる

――そういえば今回は「デュアル」とはいってますが、PHSと3GとAXGPということで、本当は「トリプル」なのではないでしょうか。

川居氏
 大きくわけますとPHSというシステムと従来の携帯電話のシステムを組み合わせているという意味と電話番号を2つ持っているということもあり、「デュアル」にしています。

――他キャリア向けの京セララインナップに比べると、「だれとでも定額」もありますし、ウィルコム向けモデルでは通話を重視していたりするのでしょうか?

川居氏
 今回のWX10Kでは、まず廉価なパケット定額を手軽に使ってもらいたいということがありますが、これまで同様、PHSの高音質をしっかり使っていただきたいということもテーマになっています。画面を大きくして、スマホを楽しんでもらおう、と。一方で、やはりウィルコムさんは音声通話がポイントのキャリアですので、そこには力を抜かず、スマートソニックレシーバーを搭載しました。WX10K向けに専用のチューニングも行っています。また、サイズ感が大きくなると通話がしにくくなりますが、WX10Kでは背面形状なども配慮し、持ちやすいサイズ・デザインとしました。

――デュアルの待受をする形になると、バッテリーのもちにどう影響するかが気になります

川居氏
 PHSが追加されたことで特にバッテリーのもちが悪くなることはありません。PHSは非常に低消費電力です。バッテリーはサイズ感とターゲットユーザーの使い方を考えて選定しています。

――PHSのデータ通信には対応していないのですね。

川居氏
 検討はさせていただいているのですが、PHS専用のデータ料金プランがあるわけではないため、現時点では非対応としています。

――PHSは非常に低消費電力なので、たとえばスリープ中のバックグラウンド通信はPHSを使う、といったことは技術的に難しいのでしょうか。

川居氏
 ある通信だけを切り分けてPHSの通信を使うというのは、仕様上難しいですね。我々もテレメトリング端末などで経験がありますが、ちょっとしたデータ通信であれば、PHSは非常に効率的であると思います。

――本日はお忙しいところ、ありがとうございました。

白根 雅彦