「SA001」開発者インタビュー

薄さにこだわったスライド型端末


 auからワンセグ対応で世界最薄をうたうスライド型端末「SA001」が登場した。同端末は、京セラが三洋電機の携帯電話事業部門を承継して以来、SAブランドで新規に開発した最初のモデルとなる。SAシリーズの遺伝子を受け継ぎながら、京セラとしてどんなところにこだわって開発されたのか、同社の開発陣に聞いた。

スライドのSAと薄型のKの融合

──久しぶりのSAシリーズですが、まずは開発コンセプトについて教えてください。

田中氏
 SA001は、京セラと一緒になって開発した最初のSAモデルです。従来のSAシリーズの強みである「スライド」と、三洋時代に当時の京セラ端末を見ていて強いなと思っていた「薄型」を融合させたのが、今回のSA001です。

 ターゲットユーザーは、10代~20代の男女、とりわけスライドを好まれる女性をイメージしています。

麻生氏
 まずはスライドで世界最薄を目指すと同時に、単に薄いだけではなくデザイン面では「使いやすさ」と「格好良さ」という2点も大きく意識しました。前者は「Grip it」という造形コンセプトに、後者については、ストイックとモダンを融合させたようなイメージでまとめました。

大澤氏
 今回はカーソルキーの代わりに「ジョグキー」を採用しました。背景には、メールなどの文字入力の使い勝手を向上させようという狙いがありました。

北村氏
 これまでに何台もスライド型端末を開発してきましたが、やってきたなかで持っていた課題があります。例えば、ちょうどよい本体サイズでもスライド使用時のテンキーが小さかったり、スライド機構により本体の厚みが増してしまったり、または使い勝手の面でもファンクションキーとテンキーとの段差があるなど、それぞれ改善したい点がありました。SA001では、そこに京セラのノウハウを融合させたことで、改善を図ることができました。

薄さの秘密

(左から)京セラ 通信機器関連事業本部 国内企画1課の田中宏幸氏、プロジェクト課の大澤宣昭氏、機構設計の森岡憲一氏

──従来のモデルと並べてみるとよく分かりますが、驚くほど薄くなりましたね。

森岡氏
 薄さの秘密は、端末の構造にあります。ディスプレイ側、テンキー側ともに薄くするノウハウがあります。

 まず、ディスプレイ側ですが、表面の強化ガラスパネルと液晶の間にあるスペースを無くしました。これは「ファインパネル」と呼んでいるもので、視認性という面でも反射を抑え、効果を発揮するのですが、薄型化にも大きく貢献しています。

 また、個々のパーツの固定にネジを使うと、ネジの山の分だけ厚みが出てしまいますから、ディスプレイ側の固定にはネジを使わず、熱活性両面接着フィルムでガラスパネルと液晶を固定しました。このフィルムは、ロケットのアフターバーナーなどにも使われています。

 ガラスパネルに液晶パーツをぶら下げることで、液晶背面にスペースができますから、そこに配線を這わせることで、無駄なスペースが一切無くなっているんです。

 テンキー側のボディについても、基板実装を片面だけにすることで薄型化を試みました。両面実装にすると、それだけで1.8mm厚くなってしまいます。かなり頑張ったのですが、一部片面に収まりきらずにはみ出したものがありました。それもスライドという構造上、表に出ない場所に配置することで、無駄なクリアランスが生じないように工夫しました。

北村氏
 従来のモデルでは、強度を保つための構造部品が金属、その外側に樹脂のボディが付くというのが一般的でした。ところが、今回は構造部品=デザイン部品ということになってしまったので、デザイン面での難しさが出てきました。パーツごとの素材や色出し一つとっても、これまで外観のことなど考えたことも無いような部品メーカーさんにお願いして、どうにか製品化できるレベルに持っていきました。

(左から)同 デザインセンターの北村和生氏と麻生弘子氏

麻生氏
 「Grip It」というコンセプトに基づき、フラットなボディにスライドの指がかりとなるグリップが組み合わさった機能的なデザインになっています。ジョグキーまわりからテンキーにつながり、さらに背面にかけて同じ幅でテイストが違う帯があり、全体的にはツートンデザインになっています。この帯の幅は液晶ディスプレイの幅とも同じになっており、これが格好良さにつながっています。

北村氏
 ジョグキーまわりのファンクションキーも、卓上ホルダに置いて横向きで使う場合を想定し、その状態でも違和感の無いように方向性のない円のデザインにしてあります。また、オプションとなる卓上ホルダでは、スライド端末とワンセグの組み合わせを十分活かせるよう、ホルダに置いた時、視聴スタイルに合わせて2段階に角度の調節ができたり、置いたままスライドしてキー操作ができたり、細かい配慮をしています。

W61SA(奥)との比較卓上ホルダにセットしたところ

実用性+遊び心のスライド

──ソフトウェア面の工夫はいかがでしょうか?

田中氏
 スライドならでは、という部分では、電話がかかってきた時にスライドして開くことで通話を始められるオープン通話、閉じて通話を終えられるクローズ終話、閉じた状態で受信したメールを見ている時にスライドさせることで返信入力画面に移行するなどの機能を用意しました。

 そんな実用面の工夫に加え、今回はスライドさせる度に待受画面の写真が変わる「オープンシャッフル」という機能を搭載しました。あらかじめ設定したフォルダにある写真をランダム表示して楽しめます。

大澤氏
 スライド型の端末というと、手持ち無沙汰にカシャカシャと開いたり閉じたりするのですが、そんな時に、ユーザーの皆さんに喜んでもらえるような演出を狙いました。最近はデジタルフォトフレームのようなものもありますし。

──ただ、従来のSAに搭載されていたFMラジオチューナーなど、省略されてしまった機能もありますよね。カメラも3メガピクセルですし。

田中氏
 もちろんコスト面での配慮も無かったわけではないのですが、今回はとにかく世界最薄というところにこだわって開発しました。例えば、これに5メガのモジュールを載せるとなると、背面のフラットなデザインを諦めることになってしまいます。さすがに、それは無いだろう、ということで、世界最薄というコンセプトとデザインを最優先として、現時点で搭載可能な範囲でデバイスを選びました。

──では、最後に読者に向けて一言お願いします。

田中氏
 SA001は、世界最薄のワンセグスライドを目指して開発したモデルです。ターゲットは若い世代に置いていますが、ブラックのモデルなどはスーツ姿の男性にも似合います。幅広いユーザーの皆さんにスライドならではの良さを味わっていただきたいと思いますので、ぜひ店頭で一度手に取っていただきたいですね。薄いスライドは癖になると思いますよ。

 また、SA001デビューキャンペーンということで、SA001をご購入いただいた方を対象にしたプレゼントキャンペーンも実施しておりますので、SA001をご購入していただいた方は、ぜひ応募してください。

──本日はお忙しい中、ありがとうございました。




(湯野 康隆)

2009/11/24 11:00